強豪アウェイ2戦を含んで3戦連続で1−1ドロー。草津は何を変えたのか。

SH772007-08-20

ご無沙汰してしまいました。調度良いと云ってはなんですが、この中断の間に草津は、福岡戦と札幌戦の大敗を受けて、やや戦い方を変えました。この辺りを考えつつ、仙台戦をエントリーしたいと思います。
戦い方を変えた草津は、強豪相手のアウェイ2戦を含む3戦連続で1−1のドロー。勝ちきれないまでも得点を挙げながら勝ち点を積んでいます。得点どころかシュートも撃てないまま失点を重ねた、閉塞感漂う最悪の時期と比べれば、状況は上向いていると考えます。最悪の状態のままならアウェイ京都、ホーム山形、アウェイ仙台の全てで敗れてもおかしくない状態でした。それがいづれの試合も「勝てたかも」まで引き上げた植木さんとイレブンの頑張りは頼もしいものですが、同時に順位を上げていくには「状態が良くなったのに一つも勝てなかった」面も見なくてはならないと思います。何が良くなって、何をこれから取り組まねばならないのか。このドロー3戦を直近の仙台戦を中心に振り返ります。まず結果をJ’s GOALより。
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030220070819_detail.html

●2007 J2第35節(8月19日/ユアテックスタジアム仙台/13,420人)
ベガルタ仙台 1−1 ザスパ草津
得点 38分:チカ(草津) 67分:田村直也(仙台)
警告 48分:チカ(草津) 58分:ジョニウソン(仙台) 86分:田ノ上信也(仙台)→退場
交代 53分:中原貴之永井篤志(仙台) 59分:山崎渡松浦宏治草津) 67分:富田晋伍関口訓充(仙台)
   78分:中島裕希ファビーニョ(仙台) 85分:高田保則→カレカ(草津

再三触れているとおり引き分けでした。過去2シーズン度々虐殺されていたアウェイ仙台戦でしたが、J3年目の今季は2試合とも1−1のドローで乗り切りました。ささやかですが、ここでも過去シーズンと比べてのチームとしての実力アップが見えると思います。これで対仙台の通算成績は11試合で3分8敗。今季残り1試合、ホームでの対戦でそろそろ勝ちたいですねえ。第2クールの敷島ではボロ負けでしたが。続いて、この試合の草津のスターティングメンバーは。ここ3試合を振り返るのでフォーメーション図のみで。
●J2第35節ベガルタ仙台戦スターティングフォーメーション(4−5−1・ドイスボランチ

基本布陣である4−4−2・ドイスボランチから4−5−1・ドイスボランチに。これは第33節京都戦から用いられ、第34節の山形戦でも継続されました。山形戦は櫻田の累積出場停止、仙台戦は氏原の負傷欠場の影響で、どの試合も先発メンバーが若干入れ替わっていますが、ほぼ同じメンバーでほぼ同じ戦い方をしていると云えます。
●J2第34節モンテディオ山形戦スターティングフォーメーション(4−5−1・ドイスボランチ

●J2第33節京都サンガ戦スターティングフォーメーション(4−5−1・ドイスボランチ

4−5−1隊形ですと、いわゆるトップ下の司令塔が置かれた形に見えますが、ここ3試合を見た限りでは従来のコンセプト(全体をコンパクトに&ドイスボランチがゲームを組み立て、FW・SHの4人が動き回る)を継続しています。大胆な戦術・布陣変更ではなく4−4−2隊形でも生まれていた一局面を固定し、従来の弱点のフォローを意図が形になった布陣だと考えられます。
具体的に云えば、最近の拙攻の背景には、「SHの縦コースを切り攻撃を前進させない」「じれたFWがバイタルエリアに下がってボールを受ける所で潰す」といった草津の早いパス回しを封じる相手守備陣の対応策があると思います。また草津の4−4−2隊形で攻撃を担う4名に対し、同じく4−4−2を採用しつつ守勢をとるチームは4バックとドイスボランチの合わせて6名が対応に当たっています。速攻が出来ないとなかなかパスの出しどころがなく、パスは回れどもシュートまでいけない攻撃に。ここで草津ではSBが攻撃参加してサイド局面で数的同数以上を構築して崩していくわけですが、例えクロスを上げることが出来てもゴール前に詰める人数が数的同数とまでいきません。4−4−2で空いているバイタルエリア中央をボランチのどちらかが駆け上がっていければ面白いのですが、なかなかそこまでうまく行きませんし、パス回しの最中にボールを奪われた時の守備のリスクを心配したほうが良いのが現状です。
こういった状況を打破するのが4−5−1、トップ下を配置してバイタルエリアに最初からヒトを配置してしまう形だと思います。ボランチ1名で守れる力は今の草津にありませんし攻撃の組み立てが基礎から変わってしまうので、中盤が機能しなければ有効に働けない2トップから1枚削っています。これでバイタルエリアで相手ボランチ2名に対してこちらは3名と局面で数的優位を確保しやすくなりましたし、サイドからのクロスに中央から詰める人数も増やせます。中盤全体でも相手の4名に対して5名。パス回しもボランチ2名と両SHで行っていたものに、中央に1名加わることで距離が短いパストライアングルを構築しやすくなっています。また数的優位と今季傾注して成長させたダイレクトなパス回しで中盤を制圧出来れば、SBも駆け上がりやすくなります。
先に触れましたが、布陣を変えても全体の意図はそのままで、4−5−1だからといってトップ下も中央固定の司令塔ではなく、FWが1枚減らされた1トップもCB2人を向こうにまわした空中戦の連続を要求されていません。どちらかと云えば2列目の3人と協力して流動的にポジションを移動させて互いのスペースを補完しあうことが要求されています。そして中盤のパス回しで全体をコンパクトなままビルドアップし、相手バイタルエリアより前に迫る攻撃時には、4−5−1から4−3−3に変化した厚みで敵ゴールに向かう形になります。この状態こそが植木さんの狙う意図が現れた隊形なのではないかと考えられます。相手のサイド攻撃時や相手ゴールキックではこの態勢で守備を敷いて全体のスペースをケアしていることからも、4−3−3ブロック構築をチームに浸透させつつあるのではないでしょうか。
●J2第33節京都戦と第35節仙台戦での4−3−3へ移行状態
 
氏原が中央に入った3トップで、バイタルエリア中央は櫻田が進入する。どちらかのサイドからのクロスに2名ないし3名がゴール前に詰められます。肝心のクロスの精度の話はとりあえず置いておいて。
上記の布陣の京都戦では、前線の選手が流動的にポジションを入れ替え次々とDFライン裏に飛び出し好機を演出しました。そして先の仙台戦では1トップに高田が入り、中盤も務まる選手ですからいよいよポジションチェンジが活発になり、4人が当初の位置を完全に入れ替わるような形でも前進出来ました。また比較的高い位置でプレーするため、サイド攻撃時には理想どおりに3トップでゴール前に詰めていくシーンも度々作れました。
先の仙台戦の前半は、かなり理想的な試合運びでした。前掛かりの仙台が不調な中、草津がまず数的優位でボールを奪い、中盤をダイレクトパスで前進しながら再三シュートまでつなぐ。なかなかサイドを突破できず、中央からのシュートが多くなってしまいましたが。しかし攻勢を続けた「草津の時間帯」の間に得点することが出来ました。これはJ's GOALレポートと選手インタビューから。
http://www.jsgoal.jp/news/00053000/00053261.html

【J2:第35節 仙台 vs 草津 レポート】成長中の草津を前に、反撃が遅すぎた仙台はドロー。しかし停滞した状況を打開するための「何か」には気がついたのでは。
(前略)草津は熟成が進む4−5−1の布陣で、しっかりパスをつなぎ仙台を攻め立てる。ボランチの富田が「前でボールを取りに行けなかったことが悔やまれる」と試合後に語っていたが、それが失点に結びついてしまったのが38分だった。草津は中盤で仙台のお株を奪うようなダイレクトパスをつなぎ素早く進撃すると、正面30メートル以上の距離から鳥居塚がロングシュート。強烈に枠を捉えていたこのシュートは林がパンチングで防ぐが、それによって得たCKを、チカが岡山、そして飛び出した林に競り勝ってヘディングで決めた。

http://www.jsgoal.jp/news/00053000/00053229.html

鳥居塚伸人選手(草津
Q:ゴールに結びついたCKを得た鳥居塚選手のミドルまでの流れが示すように、しっかりと中盤を作れることを見せられたと思うが?
「今年は中盤のところでしっかり作って、3人目のところで突破していこうというのがテーマだった。その辺はある程度、前節、前々節くらいからできてきているし、中盤とDFのギャップを突くことで、ボールを回せるようにはなってきている。ポゼッションは出来てきたかな。そこからああいうようにシュートで終われる形が出てくると、得点チャンスに繋がるのかなと思います」

バイタルエリアで数的優位を確保できたからこそ、鳥居塚の落ちついたミドルシュートを放つ時間が作れ、CKからの得点につながったと思います。またこの3戦で松下をキッカーにしたセットプレーからの得点はこの1点だけでしたが、京都戦でも惜しい先制チャンスがありました。これから益々出場時間が増えてキッカーの機会も増えた松下に期待したいですね。
話を試合に戻して。仙台戦前半が草津優位だった裏面には、仙台の攻撃の不調がありましたが、これが後半に響いてきました。レポートから仙台の攻撃についての箇所を。

(前略)今節、スタメンで起用された富田、田村らが、試合開始からボールに対して激しく行き、前節に欠けていた球際の強さを見せるなど、停滞していたムードを変えようとする意図は仙台のチームに確かに見えた。
しかし彼らの奮闘とは別に、前節のまま変えられない部分も。相変わらずミス(特にこの日はトラップでのミスが目立った)が続き、チャンスになりかけた場面も結局は草津のボールに。さらにロペスがとにかく動けない。体が重く、守備の場面では頭数にすら入れられないような状況だった。
(中略)
一方で仙台はというと、とにかくボールが収まらない。前線の選手に当てるべく何度も放たれた浮き球のくさびは、尾本、チカの二人のCBにことごとく跳ね返され、平面での展開も打開には至らない。

ロペスは負傷をおしての出場だったようで、かなり精彩を欠く前半でした。また全体的にボールを奪ったら早めに前に当てる攻撃が繰り返され、これが逆に早すぎてロングパスがタッチラインゴールラインを割ってくれるので、草津としては助かる場面が多かったですね。また高さ勝負ではチカと尾本でほぼ完封。今季、草津が勝ち点をとった試合には度々この空中戦での優位が貢献しています。
ただ無論、強豪仙台ですから、サイドに起点を作って攻めあがったり、ロペスにボールが納まれば恐ろしいもの。そして第2クールの反省からか、無理にラインデイフェンスを敷かずにDFラインがリトリート主体で下がりつつ対応したため、前線の選手が自陣バイタルエリアにまで駆け戻るシーンも目立ち、これがただでさえ流動的なポジションチェンジを繰り返す前線の選手の疲労を加速させてしまいました。山形戦でも後半ガクンと運動量が落ちましたが、より攻勢を強めた布陣と、守備への奔走が厳しいのだと思われます。ただでさえシーズン中盤で連日の暑さで疲労を蓄積させているでしょうし。この3戦すべてに云えることですが(山形戦は特に)、前半優位の時間帯に得られたチャンスをより得点に結びつけなければ、勝つのは難しくなってしまいます。シュートすら撃てなかった時期に比べれば1点とれるだけマシなんですけど。

(前略)仙台は左サイドからのFKを得ると、そこからエリア内に入れられたボールに対し、草津の守備陣はクリアにもたつく。何とかペナルティーエリア右45度の方角に跳ね返すことが出来たが、ボールの落下点には田村がいた。
その田村、決して万全な体勢ではなかったものの、ボールの落ち際を利き足でもない左足で叩く。するとボールは、ゴール前の密集を抜け、本田が反応すら許されないまま、ゴール左隅に吸い込まれていった。サポーターの待つバックスタンドに向けて歓喜ダッシュを見せる田村はこれがプロ初ゴール。

ゴール前の混戦から佐田が落ちついてクリアしていれば(結果的に)よかったのですが、カウンターにつなげる意思があったのでしょう、ボールはペナルティエリアを出るか出ないかの位置に飛び、フリーの田村に拾われシュートを許してしまいました。京都戦と山形戦もそれぞれ形は違えど、ミスからの失点でした。ノーミスで進めてもらいたいですが、やはり1失点くらいは覚悟しなければならない状況なので、2得点は欲しいのも現状からの要求です。

そしてこのゴールが、仙台の選手たちになにやら大切なことを気付かせたようだ。シュートへの積極性が俄然増し、それに伴って、足元でのパスを回し続けていた攻撃が嘘のように、シュートへ辿り着くという意図が強く感じられる素早い攻めへと変貌した。前節同様、草津が明らかにチャンスとなるカウンターの場面以外、植木監督が悔やむように安易なクリアから防戦一方になってしまったこと、そしてベンチから永井、関口、ファビーニョと、流れを変える選手を仙台が続々投入したこともあって、残り時間は仙台の一方的な展開となった。

DF陣の奮起もあったのですが、仙台の不調にも助けられてなんとか逆転ゴールは許しませんでした。防戦一方になった背景には前半の果敢な攻勢による運動量の低下と、同点になったことで前線はパス回しを省略して上がり気味に、DF陣はサイドからの攻勢を警戒して下がり気味になり、中盤が間延びして秋葉と松下でフォローしきれない部分が大きかったと思います。両SBもなかなか上がらず、前線に大きく蹴るサッカーになってしまいました。こういう状況でのポジションごとの意見が割れているのでしょう。どの意見も正解だと思いますが、統一していない意見はいづれも不正解でもあります。

鳥居塚伸人選手(草津
Q:今節、比較的早い時間に先制点を得たことで、リードを守りきれなかった前節のことは頭をよぎった?
「前半は45分間うまく流せたんですけど、後半に入ると自信の部分だとは思うんですけど、つなげる部分もクリアにして相手ボールにしてしまったり。ボールを失わなければ失点しないということを、選手も分かるように経験を積んでくれば、もうちょっと楽なゲーム運びができるようになると思います。その辺、1点をなんとか守りきるのではなく、点を取れなくてもいいからボールを失わないことを考えて90分間過ごせたら1−0でも勝てるし、上手く行けば2点3点と追加点も取れるようになります。そういう形でチームを落ち着かせて、90分を戦っていかないといけないのかなと思います」
Q:ハーフタイムには植木監督から「この雰囲気を楽しもう」という指示があったそうだが?
「そうですね。仙台は本当にアウェイという独特の雰囲気なので、それに飲み込まれちゃうと、うちの選手は若いしパニックになっちゃう。逆にこういう雰囲気を楽しんでやることが、サッカーの楽しみなんで。
前半はリードできましたし、いい流れでいけましたけど、サッカーは45分45分の戦いではなく90分の戦い。前半いい流れで上手く進めて、後半で決着をつけるという形でも構わないので、90分の戦いをしていかないといけないのかなと思っています」

また後半攻め手を失いただただ守るだけになって結局失点した山形戦後の植木さんと選手の感想は。
http://www.jsgoal.jp/news/00053000/00053057.html
http://www.jsgoal.jp/news/00053000/00053061.html

植木繁晴監督(草津):
「ゲームの最後のところで、全体で守ってカウンターをケアするのか、逆にうちがカウンターを仕掛けるのか、チームの意思統一が中途半端になってしまった。そうなる前に、前半で2、3点取っておかなければいけないゲームで、結果としては非常に不満足だ。
ただ、引き分けという結果に終わったが、前半ではチームが少しずつ立ち直ってきているということは見せることはできたと思う。あとは、もう少し自信を持ってゲームをコントロールしていかなければいけない」
Q:後半は1点を守りにいったのか?
「いえ。前回の対戦でも1点を追いつかれているので、2、3点目を取りにいった。その分、カウンターを喰らってしまって、ラインの上げ下げで疲れてしまって、最終的に残り20分くらいでラインを上げることができなかった。引いて守る選手と、ラインを上げたい選手が中途半端になってしまい、統一感がなかった」
鳥居塚伸人選手(草津):
「チームの経験の差なのか、チームの統一感がないのか。前半で2点、3点目が取れればベストだったが、追加点が取れず、終盤はクリアしてもまたボールを拾われてしまって受身になってしまっていた。前半と同じような戦いにもっていかなければいけなかったと思う」
本田征治選手(草津):
「決めるところを決めれば、簡単に終わっていた試合。ゲーム運びに関しては、もっと勉強をしていかないと、いつまでもこういう失点は続く。2点目を取られなかっただけ、マシです。今日は勝って、サポーターと喜びたかった」
高田保則選手(草津):
「(2試合連続ゴール?)前節は同点に追いつくゴールだったが、今日はちょっと気持ちが違います。前半の戦い方としては完璧だったので、絶対に勝ちたかった。今までこういう試合を何試合してきているのか。ゲームの流し方を覚えないといけない」
松下裕樹選手(草津):
「2点目を取れなかったことで苦しくはなったが、それでも1対0で終わりにしなければいけなかった。相手が点を取りにくることは分かっているので、きっちりと守ってカウンターという形にしたかった。最後の時間帯は、絶対に守りきらなければいけなかった」

2点目がとれれば問題なかったわけですが、現実は1点しかとれずに運動量が落ちて防戦一方。カウンターに切り替えるにしても、どの時間帯から、どうやって。これからはそこでしょうね。
山形戦は守備ブロックをキチンと形成して跳ね返していたのですが、山形のスピードある両サイド攻撃をケアするために、左右のSHだったカレカと鳥居塚を2トップに変えて、右SHに松浦、左SHに高田を配置しました。守備としては成功したのですが、跳ね返すボールの収まりどころがなくなり、ひたすら守備練習のような形になってしまいました。本来はカウンターの切り札であるスピードスター松浦も飛び出しどころをつかみかねていたゲームになってしまいましたね。
●J2第34節モンテディオ山形戦終盤・4−4−2

90分ひたすら運動量で圧倒することは不可能ですし、運動量が落ちて相手の攻勢が続く時間帯はこれからの試合でも必ずきます。その時間帯を点差もにらんでどう対応していくのか。チームとして。仙台戦のレポートは草津について、こう締めています。

(前略)
まず先制点を得た草津。チームの誰もが胸を張るように、攻めの組み立てはどこを相手にしてもそこそこやれるレベルになってきた。とはいえ90分継続することはまだ難しく、ここは鳥居塚が語っていたように「90分全体を考えた試合運び」が重要になってくるのでは。その壁を越えられれば、自ずと久しぶりの勝利は近づいてくるはずである。

仙台戦後の植木さんはこうコメントされています。

植木繁晴監督(草津):
(前略)
今日も、押されている時間帯を何とかしのげば、またうちに流れが来ることを選手もよくわかっているが、どうしてもクリアミスといったところで相手に点を入れられてしまう。ここはまだ足りないところかなと思うし、前半のような攻撃の勢いを、後半には出せなくなってしまうのも気になるところだ。
ただ、ちょっとずつチームは立ち直りつつあるので、これを次に活かしていきたい」
Q:前節同様、後半に押し込まれる展開になってしまったのは、疲れが影響しているのか?
「どうしても相手が前がかりになる時間帯があるので、そこでセカンドボールを拾ってシュートまで持っていければいいのだが、ミスになって相手に取られてしまう。すると向こうの攻撃の勢いが増してしまう。あの時間帯で奪ったボールを、上手くDFの裏側へ持っていくことが出来ると、相手の勢いを止めることも出来ると思う。その辺も少し、選手と一緒に考えなくてはいけないところと思っている」

植木さんは試合中のイレブンの流れ重視で、あまり佳境での選手交代を好まないとNHK-FMでコメントされていましたが、選手の意思統一のためにも交代を通じてイレブンにメッセージを送る必要があるかもしれませんね。まあ仙台まで連れて行った里見を使ってくださいよと云いたいんですけど、個人的には。山形戦の選手試合後コメントも目的はみな同じことをいいながらも、その方法論は少しづつ違いますし。
山形戦、仙台戦のいづれも、守備一辺倒に追い込まれる時間帯の前には、必ず相手の効果的なサイド攻撃があり(それも左右から)、そこを凌いでも佐田と寺田の両SBがその後は守備を意識してなかなか攻めあがらず、攻撃を跳ね返しても左右の高い位置でボールを収められず、FWめがけて蹴るだけの状態になってしまっています。植木さんがコメントされている「セカンドボールを拾う」「DFの裏側へ持っていく」をどう組み立てるのか。押し込まれた状態から効果的なカウンターにつなげる方法がこれから必要ですね。
そして試合後半でも替えが不在の鳥居塚、秋葉の問題もあります。特に秋葉は布陣を変えても戦い方は一緒なので、やはり今季の攻撃の起点です。これまでの試合で秋葉が抜けると途端に「攻めの縦パス」の配球が止まってしまい、サイド攻撃一辺倒になってしまっていました。櫻田が2列目に上がってしまうと更に代役がいなくなってしまいます。櫻田はどちらかと云えば、リスクもあるチャレンジの攻めパスより安全かつ確実な配球をする選手ですからね。秋葉と鳥居塚の両ベテランにはまだまだ働いてもらわないといけないチーム状況ですし、二人に安定したパフォーマンスを発揮してもらうためにも、代役が務まる選手の台頭が望まれます。もしかしたら、今季これからのテーマかもしれませんね。*1
そして最後に。この3戦は、いづれ草津相手に攻勢に出てきてくれたチームなので、ある程度のスペースが中盤に出来てパスを回すことができました。加えてこの3戦のいづれでも、相手が引いた状態でパスを回してもピンチにこそなれ、チャンスにはほとんどなりませんでした。次節の相手は、素早い攻守の切り替えを基調とする愛媛FCです。そして今節お休みでした。望月監督によって4−5−1システムの弱点も見えてしまうのではないのかな、とも考えてしまいます。この3戦は、相手が対応しきれないから通じた部分もあったと思うので、やっぱりどこかで勝ちたかったですかねえ。

●参考リンク YOUTUBE:2007‐J2第35節ベガルタ仙台vsザスパ草津

前半ハイライトでも草津がビルドアップしながら全体的に攻めあがっているのが分かります。後半82分のカウンターからの高田のループシュートは惜しかったですが、ああいう攻撃が組み立てられたのも山形戦から得た教訓が活かされたと思いたいですね。
●参考リンク YOUTUBE:2007‐J2第34節ザスパ草津vsモンテディオ山形

3点、いやせめて2点とれていればなあ、というダイジェスト。高田は映像だと戻りオフサイドにしか見えないのですが、画面手前で歩いていたDFがオフサイドラインを形成できなかったんでしょうか。また前半終盤の好機を逸した山崎渡ですが、この試合と次の仙台戦では精力的に動き回り、今季ベストのパフォーマンスを見せてくれました。さすが山崎会会長です。櫻田や目下山崎会では下っ端構成員の鳥さんが頑張っているので、この辺りで会長の実力を見せたのかもしれません。出来れば今季はずっとこんな感じでお願いします。
●参考リンク YOUTUBE:2007‐J2第33節京都サンガvsザスパ草津

何で2度3度とクロスバーやポストに当たるかなあ、という印象。それはそれとしてやはりキッカー松下とチカのホットラインが段々と良くなってきている気がしますね。得点シーンはどちらにも運と不運があったように見えます。
この3戦の動画は全て「kurokishi932」さんがアップしてくれたモノ。やはりアウェイ(時としてホームも)のゲームの映像が見られないサポの方も少なくないと思います。映像で見られるのが一番いいですからね。そしてこうやって拙ブログでも利用させていただけるので本当にありがたいです。

*1:ただ心配なのは、現状のレギュラーはなんだかんだといいながら草津ではパス回しのうまいメンバーで構成されていますし、それを流動的に動く中で展開します。そして攻撃的な2列目だろうが守備には自陣深くまで駆け戻ることが要求されています。いまのサブメンバーでそんな中盤に違和感なく加われそうなのは、桑原と吉岡、FWカレカの3人くらいではないかと思われます。里見や後藤は運動量を加える局面での限定仕様、山本拓や金生谷は投入するにしてもまず実戦でフィットさせるところからだと思います。また氏原の状態も気がかりな現状、我らがキャプテンマッスルにも期待したいのですが、カレカ初登場の練習試合と、前半で中止になってしまったサテライト戦でプレーを見た限りでは、ベンチ入りすら困難と思わせられるフェイタルなパフォーマンスに終始していました。どうも今季の前向きな姿勢が逆にサッカーを難しく考えすぎてしまっている気がします。まずは持ち味のマッスルドリブルからマッスルシュートにつなげるところからなんじゃないでしょうか。

サポーターソングに最適? エレファントカシマシPV4曲。

中井が佐川印刷に移籍してしまったり、福岡戦はアレなうえにナニだったりと、草津サポは3度3度のメシまでマズイ日々が続いていますが、落ち込んでいても仕方ないので、気分転換にサポーターソングにしてもいいいんじゃないかなあ、という曲を紹介。敷島に向かう車中でよく聴いています。

●戦う男/エレファントカシマシ

チームにはいつもこう戦ってほしい、と思う曲です。歌詞どおり「いつか いつか 炎のように燃え尽きちまえ」くらいの完全燃焼の試合が出来れば、結果のほうが後からついてくると思えます。
●はじまりは今/エレファントカシマシ

こういう気持ちの応援がいつでも出来ればなあ、と思う曲です。1番の出だし「はじまりは今 僕らの目の前にある 迎えに行こう明日ある限り」と同じく、2番の出だし「許されるなら バカらしくも鮮やかな夢を 追いかけて行こう明日ある限り」が良いですね。
●明日に向かって走れ/エレファントカシマシ

これは選手にこうあって欲しい、と思う曲です。「突っ走るぜ明日も たぶんあさっても 男はいつだって 突っ走るだけさ」がいい感じ。今の気分は「崩れちまいそうなココロに 勇気をなげてくれよ」でもありますが。
●普通の日々/エレファントカシマシ

これは少し番外編。草津に限らず、試合に負けたチームのサポーターへのエールのような歌に聴こえます。「今は沈んでいても、それぞれがそれぞれの日常をおくって、また試合の日にはスタジアムに駆けつけよう」みたいな感じです。敗戦の帰宅の車中で聴いては、また敷島に通うエネルギーを得るためのとっかかりにしています。だから最近聴きっぱなしだったり。orz 勝った帰り道は「戦う男」とか良い感じなんですけど、水戸戦はこれがヘビーローテになる試合にしたいですねえ。

ザスパ草津MF中井義樹選手、JFL佐川印刷SCにレンタル移籍。

SH772007-07-27

アビスパ福岡戦の当日に発表されました。J's GOALより。
http://www.jsgoal.jp/club/kusatsu/00051827.html

中井義樹選手佐川印刷SC期限付き移籍のおしらせ [ 草津 ]
この度、幣クラブ所属の中井義樹選手が、佐川印刷SC(日本フットボールリーグ)へ期限付き移籍することとなりましたので、お知らせいたします。 
移籍期間は2007年7月26日から2008年1月31日までとなります。
●中井 義樹(なかい よしき)選手プロフィール
■ポジション:MF        
■出 身 地:大阪府高槻市
■生年月日:1983年1月4日(24歳)
■身長/体重:181cm /69kg
■血 液 型:A型
■経  歴:高槻フットボールクラブ⇒セレッソ大阪ユースセレッソ大阪ザスパ草津
■出場歴:
・J1.2リーグ通算(49試合出場/3得点)
カップ戦通算(5試合出場/0得点)
天皇杯通算(4試合出場/0得点)
【中井選手コメント】
「シーズン途中での移籍となり結果を残すことが出来なくて残念ですが、初心に戻り1から頑張ります。絶対に結果を残して帰ってきます」

中盤の底でのゲームメイクが中井義樹の本領ですが、今季は秋葉や松下、櫻田とポジションが競合してしまい、主に左SHとして起用されました。しかし出場2試合の中で思うようなパフォーマンスが出せずに、その後はベンチ入りも難しい日々が続いていました。
今季の中井は、実力云々よりもチーム構成と戦術の変化で割をくってしまった形だと思えますね。昨季のように4−4−2トレスボランチを敷いていれば、その一角でもう少し出番があり、持ち味も出せたのではないかと考えます。昨季はチームで一番、島田とのテクニカルなパス回しをしていた選手ですし、そのパフォーマンスで佐川印刷で活躍してもらいたいです。そしてコメントどおり来季は帰ってこいよ。(;´Д⊂)

J2第30節アビスパ福岡戦。前半だけで5失点の大敗。

SH772007-07-26

やあ (´・ω・`)
ようこそ、獅子乃湯本館へ。
このバラ売り温泉饅頭は1個70円なんだけど、まず食べて落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、ピッチアップ前にバクスタ手前までアイサツに来てくれたイレブンと、松下のPKゴールを見た瞬間、
君はきっと言葉では言い表せない「トキメキ草津」みたいなものを感じてくれたと思う。
失望感漂う敷島のスタンドであっても、そういう気持ちを忘れないで欲しい。
そう思って、この書き出しを作ったんだ。
じゃあ、感想を書こうか。
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030220070725_detail.html

●2007 J2第30節(7月25日/群馬県陸/2,078人)
ザスパ草津 1−5 アビスパ福岡
得点 11分:アレックス(福岡) 31分:アレックス(福岡) 34分:アレックス(福岡) 
   37分:チェッコリ(福岡) 38分:山形恭平(福岡) 70分:松下裕樹草津)
警告 1分:氏原良二草津) 48分:布部陽功(福岡) 51分:柳楽智和(福岡)
    54分:山崎渡草津) 70分:布部陽功(福岡)→退場
交代 HT:久藤清一柳楽智和(福岡)/アレックス→宇野沢祐次(福岡)
   52分:後藤涼松浦宏治草津)/秋葉忠宏吉岡聡草津) 64分:鳥居塚伸人→奥山卓廊(草津)
   65分:チェッコリ→宮崎光平(福岡) 
●J2第30節vsアビスパ福岡 ザスパ草津スターティングメンバー
GK:1本田征治 
DF:6鳥居塚伸人 23藤井大輔尾本敬 7佐田聡太郎 
MF:8山崎渡 17秋葉忠宏 30松下裕樹 18櫻田和樹(C) 
FW:11氏原良二 19後藤涼 
リザーブメンバー
GK:22北一真 DF:4田中淳 
MF:24吉岡聡 FW:20松浦宏治 32奥山卓廊
●キックオフフォーメーション(4−4−2・ドイスボランチ
−−後藤−−氏原−−:松浦・奥山
櫻田−−−−−−山崎:
−−秋葉−−松下−−:
佐田−−−−−鳥居塚:吉岡
−−尾本−−藤井−−:田中
−−−−本田−−−−:北

はい、ボロ負けです。でも45分×2本なら2本目は勝ちなんだけど。この試合の最終スコアが示しているとおり、拙攻ゆえのハイリスク&ノーリターンなサッカーで連敗している、とても悪い状況が続いています。
試合の流れはJ's GOALの伊藤さんのレポートから。
http://www.jsgoal.jp/news/00051000/00051897.html

【J2:第30節 草津 vs 福岡 レポート】アレックス前半34分でハットトリック草津は福岡の攻撃サッカーに為す術なし 
(前略)
キックオフと同時に襲い掛かってくる福岡の攻撃陣に対して、草津の守備陣はいきなり受身に回る。ワイドに大きく張り出す田中と久永への対応で、草津の両サイドバックは釘付け。アレックスのマンマークについた松下も最終ラインに吸収されバイタルエリアが空白となる中、草津が耐えられたのは前半の11分までだった。久永とのコンビネーションでバイタルに飛び込んだアレックスが裏へと抜け出し先制点を決める。草津はボールを奪う位置がどうしても低くなり、効果的な攻撃が生まれない。そして悪夢の30分代を迎えることになる。
31分、リンコンからのクロスをアレックスに決められ追加点を許すと、草津の堤防は完全に崩壊していく。34分にはアレックスがハットトリックとなる3点目。気落ちした草津は、37分にセットプレーからチェッコリ、続く38分には久藤からのスルーパスを受けた山形恭にファインゴールを決められ万事休す。スタンドからは大きなため息とともに、失笑も聞こえてきた。前半でゲームが決したのは、誰の目から見ても明らかだった。草津の守備陣は、2列目から飛び込んでくる福岡の選手に対してマークの受け渡しが全くできず、すべてフリーでシュートを打たせた。「センターバックがなぜマークを受け取らないのか。そんな基本的なことができなければ話にならない。戦術以前の問題だ」と植木監督。(後略)

2失点目は完全にオフサイドだとスタジアムにいた時は見えましたが、録画で確認すると、CB尾本敬がDFラインからズレて残っていたんですよね。誤審ではない精緻なジャッジだったと。ただ副審はこの時、プレーエリアのはるか後方をまだ走っていましたから、この微妙な判定を正確に判断したとは思いませんが。
伊藤さんが書かれているとおり、福岡の攻撃姿勢に完敗でした。両サイドのスピードある攻撃にSB鳥居塚、佐田共に押し込まれ、DMF秋葉忠宏もサイドへと守備に引っ張られます。もう一人のDMF松下裕樹はアレックスにマンマークでついているので、バイタルエリアはがら空き。セカンドボールもほとんど福岡に拾われました。バイタルエリアの支配権を渡し、そこを良い様に使われてDFラインの裏を突かれまくりました。藤井、尾本のCBコンビも途中から明らかに集中が欠けており、連続失点の要因となってしまいました。前半で5点もとられてはサッカーになりません。
この試合は、前半の5失点がどうしても目立ちますが、敗因は今の草津のサッカー、攻め方が行き詰まっているところにあると考えます。DFラインを押し上げ、コンパクトな陣形でポゼッションを高めて主導権をとるサッカーが悪いとは思いません。ただラインを押し上げている分、相手には攻撃のスペースを多く与えるのでカウンターの危険性が生まれます。しかしそのリスクを呑んでその分攻撃を強化しているわけですが、中盤でパスを回しているうちに前線が交通渋滞し、FW陣に満足なパスもクロスも送れず、決定機はおろかシュートすら満足に撃てないのが現状です。1〜2失点は止むを得ないようなリスクを承知で戦っている以上、相手を上回る2〜3得点が見込める攻撃力がなければ勝てるはずがありません。挙句に前半だけで5失点しているようでは11試合未勝利も当然だと云えるでしょう。

(前略)
草津は後半、ゴールへの気迫を見せPKで1点を返したが、5点差をつけられてから必死になるのではあまりにも遅い。選手たちは、福岡以上に走り、福岡以上に闘ったと言えるだろうか。答えはNOだ。チームは選手たちのためだけに存在しているのではない。この大敗で屈辱を味わったのは選手だけではなく、サポーターも同じだ。だが 屈辱を晴らすためにサポーターができることはスタンドで声を出すことしかない。サポーターは、愛する選手に自分たちの夢を託しているのだ。草津のバックスタンドには「KUSATSU KINGDOM」の大横断幕が掲げられている。選手たちは、草津の代表であることを1秒たりとも忘れてはいけない。

伊藤さんの書かれていることはもっともですが、選手達も頑張る力もどこに向ければいいのか、という状態ではないかと思います。先ほど触れましたが、今の戦い方の「行き詰まり感」をピッチの選手達も感じているように思えます。前掛かりの拙攻を繰り返しては失点を重ね、毎度お決まりのパワープレーで試合終了。うまくいかないことをひたすら繰り返すというのは相当に心理的な負担です。
また、こんな試合の後でもバクスタからは大きなブーイングはほとんどなく、まばらながら拍手のほうが多かったと思います。それは「怒ったところでどうなるものでもない&どうにもならない」という印象がスタンド全体にあったからではないでしょうか。今のサッカーのままなら今のまんま。選手は層の問題もあるのでは大きく変えられませんから、一度拙攻自滅の戦い方を変える時期だと思います。植木さんも頭が痛いと思いますが、何かを変えない限り、選手もサポも試合に希望が見い出せないのではないでしょうか。
かといって志低い引き篭もりカウンターに逃げなくても、まずはキチンと守り、セカンドボールを中盤が確保して相手陣内に作られた前方やサイドのスペースを突いて攻撃できると思うんですよね、今季のメンバーなら。高田保則松浦宏治後藤涼オレの里見仁義(←先の練習試合でキレ良し)といったスピード系の攻撃メンバーが活かせますし。そして速攻がうまくいかなければ一度戻してカウンターを防ぎつつポゼッション。相手を前に釣り出して、もう一度スピード系の面々が勝負する。第1クールの仙台戦がこういう戦い方で一番良い内容の試合だったと思います。結果は引き分けでしたが。季のザスパ草津とメンバーには、まだまだやり様も可能性もあると思います。サポが沈む以上に植木さんも選手も苦しいと思いますが、まだ白旗を揚げるほどやり尽くしていないはずです。とにかく敷島で「トキメキ草津」の回数を増やしてもらわないと。

J2第26節サガン鳥栖戦。チーム状況がもたらすリスク承知の戦い。

SH772007-07-08

ふがいない愛媛戦に続いての無得点での敗北。結局、第2クールは1勝どまりの苦闘の時期となってしまいましたね。ただこの試合、内容については久々に先発した吉岡聡と負傷復帰した佐田聡太郎で組んだ「ダブル聡サイドバック」(安直な名前だなあ)の攻撃力、本来の位置である右SHに戻れた鳥居塚伸人のパフォーマンスの復調など好材料もあり、佐田の復帰でようやく今季スタンダードの戦い方が出来た試合でした。具体的には、DFはラインを押し上げて全体をコンパクトに保ち、DMFが左右に配球してゲームを組み立て、そこに両SHとSBが早いパス回しからゴール前にクロスを上げる。そのクロスにFWと逆サイドのSHやDMFも詰めて走るというものです。そしてクロス攻撃のフィニッシャーとして必要なFW氏原良二を負傷で欠いたものの、両サイドからのクロス攻撃をシュートにつなげる工夫も見えました(詳しくは後述)。どうしようもない愛媛戦はもちろん、勝ち点をとれたものの内容の悪い試合に比べれば、攻めの意図もキチンと見える試合になっていましたし、やはり今季やってきたことはそれなりに貯金になっていることを感じました。
しかし、草津本来の戦い方は、早いパス回しと縦に速い攻撃が特徴である鳥栖相手には相性が悪いんですよね。事実そういう展開になってしまいました。鳥栖の攻撃を渋滞させる、スペースを潰していく守勢の組み立てのほうが勝ち点ゲットには近かったのかもしれませんが、前節の敗戦を受けて植木さんは選手たちに勝つ姿勢を要求し、そういう組み立てを講じたのだと思われます。守勢で勝ち点を狙うのではなく、サポの心情を汲むような戦い方を要求してくれたことはうれしかったですね。
ただ、だらしのない愛媛戦(日本語はダメ表現も豊富だなあ)に続く敗戦であり、このクールの戦績には不満も多くあり、選手達や試合結果には憤りも感じます。が、その気持ちに任せて叩いているだけではチームは強くならないとも考えます。苦しみながらもなんとかしていこうと、もがいている選手もいますし、そういう選手の出来ている部分には拍手と声援をしていかないと。それがあんまり多くなくても。自分もサポーターのはしくれですしね。愛媛戦は、選手達に簡単に忘れられては困る試合ですが、同時に選手もサポも囚われ続けてもダメなのではないでしょうか。長くなりましたが、まずはメンバーと結果をJ'sGOALより。
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030520070707_detail.html

●2007 J2第26節(7月7日/鳥栖/5,623人)
サガン鳥栖 2−0 ザスパ草津
得点 44分:藤田祥史鳥栖) 46分:藤田祥史鳥栖)
警告 37分:村主博正鳥栖) 65分:浅井俊光鳥栖)
交代 49分:村主博正尹晶煥鳥栖) 52分:石田博行廣瀬浩二鳥栖)
   56分:秋葉忠宏桑原剛草津) 60分:山崎渡里見仁義草津)
   85分:山城純也山口貴之鳥栖
●J2第26節vsサガン鳥栖 ザスパ草津スターティングメンバー
GK:1本田征治 
DF:7 佐田聡太郎  23藤井大輔  5チカ(C) 24吉岡聡 
MF:6鳥居塚伸人 17秋葉忠宏 18櫻田和樹 8山崎渡 
FW:20松浦宏治 9高田保則 
リザーブメンバー
GK:22北一真 DF:3尾本敬 
MF:30松下祐樹 15桑原剛 27里見仁義
●キックオフフォーメーション(4−4−2・ドイスボランチ
−−高田−−松浦−−:
山崎−−−−−鳥居塚:里見・桑原
−−櫻田−−秋葉−−:松下
吉岡−−−−−−佐田:尾本
−−チカ−−藤井−−:
−−−−本田−−−−:北

すでに触れていますが、右SB佐田聡太郎が負傷復帰し、久々に左SB吉岡聡が先発して攻撃的な配置となりました。またこれによって鳥居塚がSHに戻り、櫻田もDMFに。FW氏原の負傷欠場は痛いですが、ほぼ今季の基本的な並びとなりました。リザーブには前節の動きのよさが評価されてか、オレの里見仁義が連続ベンチ入り。他には桑原、松下、尾本、北がベンチに座り、リザーブFWはゼロ。草津の攻撃はサイドからの組み立てが多いので、そのクロスに一番あわせられる氏原の不在は気掛かりでしたが、他のFWではなく別の方法で埋めようとする試合になりました。試合の流れもJ's GOALレポートより・・・といつもどおりいきたいのですが、鳥栖担当はあまり試合の流れを追わないので、自力で展開を。
●開始1分で草津がファーストシュート、草津本来の戦い方が発揮される。
鳥栖のキックオフで始まり、共にロングボールを送りあう形でスタート。開始30秒でチカが前線の大きくフィード、DFのリフレクトを鳥居塚が拾い、中央へ。高田保則はこれをスルーして山崎が左サイドでボールを収めます。高い位置でタメを作り、攻め上がってきた吉岡へ。吉岡は縦のドリブルで相手をひきつけてから下がってきた山崎へ戻し、山崎はダイレクトで中央に上がってきた秋葉へ。秋葉からふたたび右サイドを上がってきた佐田へ。佐田もドリブルで相手をひきつけつつ、佐田の後方へ流れてパスコースを作っていた秋葉へ戻します。そして秋葉から中央の高田へダイレクト。高田はポストプレーで攻めあがっていた櫻田へ落とします。そして櫻田はフリーでシュート、わずかに枠を逸れてしまいました。このシュートが1分1秒。約30秒の間に左右に素早くボールを振り、その間にゴール前に人数を集めて、最後はバイタルエリアに進入してきた櫻田がフリーでフィニッシュ。鳥栖も人数をかけて守っていましたが、この間は草津の選手のみがボールに触り、フィニッシュまで作りました。今季の草津の目指すサッカーが早速できたと思います。それには運動量ある両SB、DMFも押し上げて攻撃の厚みが必須であることも窺わせました。やっぱり草津は「走撃」しないとゲームにならないんですよね。さらに1分45秒には、松浦、高田、山崎の早いショートパスだけで中央突破、ペナルティエリアにまでボールを運びますが、シュートまではいけませんでした。

●高いDFライン保持が大ピンチを招く
対する鳥栖もスピードある左サイドから攻撃を開始し、徐々に草津陣内でゲームを作っていきます。3分30秒にバイタルエリアでボールを収めた山城から、FW藤田にスルーパス。藤田はやや高い位置どりのDFラインの裏、チカの後ろを完全にとり、飛び出したGK本田の股を抜いてボールをゴールに流します。しかしここは佐田が追いついて必死のクリア。股抜きのコントロールを意識してか、ボールスピードがないことも幸いしました。山城に寄せていた秋葉は藤田へのパスコースは切っていましたが、藤田がスペースでもらう鋭い飛び出しをしたためにスルーパスを許してしまいました。チカの斜め後ろの死角から飛び込まれたために反応も遅れましたね。藤田&山城のナイスプレーという他ありません。
しかしここまで、鳥栖もサイドとバイタルエリアのパス回しでゲームを作り、前を向いて走るFWへ縦パスを送って攻撃を組み立てる形なのが判りました。こうなるとバイタルエリアのケアとDFラインの位置取りが肝要なのですが、草津も攻勢を優先しているため、バイタルエリアの守備に人数がかけられず、ラインも高く保持されるので、かなりリスキーであることも判明しました。どちらが自分たちの組み立てで先制するか。勝負の分かれ目がハッキリした試合でした。この後、10分くらいまでは鳥栖の早いパス回しと大きなサイドチェンジ、縦への突破に押される展開となりました。草津もこういうサッカーがしたいのですが、まだまだパス回しが遅く、相手に守備を整わせてしまうんですよね。11分には草津が遠い位置ながらFKを得て、吉岡がキック。正確にチカに合わせて、チカが競ったボールは前にこぼれて、これを高田がシュート。角度がない位置からでしたが、枠に飛んだのですがGKがファインセーブ。ここから3本連続でCKをとって攻める草津でしたが、最後のCKでファーに飛び込んだチカがわずかに合わず、先制できませんでした。このセットプレーの中のチャンスで1点入っていれば、また違う展開の試合になったと思われるだけに残念でしたね。

●クロスを待つだけのセカンドストライカー、攻撃も守備も他選手にしわ寄せが
15分すぎくらいからは、お互いが持ち味を活かした攻撃で一進一退の展開となりますが、草津はポゼッションからクロスを中央に送る攻撃を意図しますが、ターゲットとなる氏原が不在。ここを打開するために、いつもと違うアレンジがありました。それは草津の攻撃時に、左SH山崎が中央に流れてセカンドストライカーとなるべくペナルティエリア中央やや後方に位置取り、FW高田が左サイドに入って攻撃を組み立てる形です。山崎のクロスはほとんど期待できないので、いいアイデアだと思いましたが、山崎は一度中央に陣取ると攻撃に絡まず、ほぼ死兵に。チームオーダーだと思いますが、DFを背負っている高田にボールを預け、その周囲に味方もパスコースもない状態なのに、さっさ追い越して中央のポジションに向かうところなど、無責任ともとれるプレーが目立ちました。またそのフォローに入る櫻田も上がり気味になるので、鳥栖の選手がなだれ込むバイタルエリアを秋葉一人が支えることになり、またサイドの守備では山崎の不在で数的不利を余儀なくされた吉岡も割をくう形になってしまいました。11対11の同数で行っているサッカーは、ある意味あの手この手で数的優位をつくることの応酬ですが、草津は一人まったく攻守に絡まない選手を自ら作ることになってしまい、この影響で立ち上がりに見せた両サイドバックも攻めあがるワイドな展開も出来なくなり、徐々に主導権を鳥栖に渡していきます。

●運にも助けられた無失点も前半ロスタイムにミスから先制を許し、後半立ち上がりにもミスから追加点で自滅
そして30分過ぎからは防戦一方の展開となり、38分にはセットプレーからチャンスを作りましたが、ここも得点ならず。42分には突破を許し、ポストに救われるピンチに。さらに前半ロスタイム、うまく守れたはずの状況でしたが、櫻田が横パスに反応しきれずバイタルエリアでボールを奪われ、吉岡もかわされて、クロスを中央に折り返されて、藤田に先制を許しました。また後半立ち上がり2分には、草津から見て左サイドから逆サイドに折り返され、そのシュートはGK本田が防いだものの、こぼれ球をこれも藤田に押し込まれました。
ここで残念なのが、秋葉がサイドを変えられる前にボールホルダーにプレスにいっているのですが、そのプレーをサイドに張っていた山崎がボールウォッチャーになってヒトもスペースも見ない中途半端な位置をとっていたことですね。その彼の裏をとった選手に簡単にパスを通され、そこに山崎は寄せるでもなく併走し、そこから追加点に繋がるクロスを送られたことです。1点目も2点目もわずかなミスでしかないのですが、どうして重要な局面や時間帯でもう少しプレーをやり切れないのか、走れないのか残念だとしか云い様がありません。

●桑原、里見を投入するも、クロス攻撃だけではターゲットが不在。
後半早々に追加点をとられたことで、攻撃手な選手を投入するものの「隠しターゲット」だった山崎の代わりを務める選手もおらず、決してハイボールの競り合いに強いわけではない松浦をターゲットにクロスを送る攻撃が続いてしまい、効果的な攻撃は行えなくなってしまいました。里見もロングスローのみならず鋭い飛び出しからシュートを放ち、桑原もドリブルでリズムをつくって奮闘しただけに、彼らが先発していたら左サイドから桑原がクロスを上げたり、里見がセカンドストライカーとして攻撃に絡んだり、少なくとも11人対11人で戦えたのではないかと思ってしまいました。
また松浦は、クロスへの競り合いでなかなか勝てずとも、DFライン裏への飛び出しで再三抜け出ていたので、ターゲットのいないクロス攻撃よりも彼へのスルーパスを増やしても面白かったと思います。一度うまく通り、中央へ折り返すもゴールラインを割るシーンがありましたが、あれが一番後半で可能性がありましたしね。鳥栖も攻撃的な選手を投入して主導権を握ったまま追加点を狙う作戦でしたが、スコアは動かず2−0で終了。
本来、鳥栖に対してはもう少し守りの意識を強く、バイタルエリアでスピード系のFW達にスペースを与えないサッカーをしたほうが戦えるのだと思いますが、愛媛戦のボロ負けの次の試合で守備基調のサッカーをさせたくなかったのでしょうね。危険な相手に果敢に攻めのサッカーで向かった植木さんとイレブンは、サポの気持ちを汲みとるような姿勢で臨んでくれたのは良かったと思いますが、チームオーダーで1人攻守に絡まない死兵を作ってしまったことと、鳥栖に攻守の切り替えで勝てなかったことが敗因になってしまいました。あのワーストゲームの後にイキナリ良くはならないでしょうし、そこは仕方ないと思います。佐田の復帰や個々の選手が開幕当時のポジションでプレーできたこともあり、愛媛戦よりも格段にマシなゲームでした。ただ、厳しい云い方をすれば、この試合で愛媛戦の失態を取り戻そうとイレブンが必死になることはある程度予想していたことで(同じようにふがいなければ今季終了モノ)、肝心なのは次のホームゲームの湘南ベルマーレ戦だと思っています。鳥栖である程度ガンバれたのでまた一安心してしまうか、さらに勝利を求めて走るか。今季後半戦をただただ消化していくだけのシーズンにしてしまうか、まだ順位を上げるよう戦えるのか。次の試合はそこに注目したいと思います。

「岡山から目指せJ」ファジアーノ岡山がJリーグ準加盟申請。審議は8月21日のJ理事会にて。

SH772007-07-04

本日、7月4日付でファジアーノ岡山公式にて発表されました。公式トップは草津よりカッコイイなあ。Jリーグ加盟の実現には、まだ成績面など越えなければならない多くのハードルがありますが、関係者各位の努力が生んだ大きな一歩だと思います。
http://www.fagiano-okayama.com/
http://www.fagiano-okayama.com/2007/07/74j.php

●本日7月4日、Jリーグに準加盟申請
本日7月4日14:00、おかげをもちまして弊クラブはJリーグに準加盟を申請。
これもひとえに皆様のご支援、ご協力の賜物と心より感謝申し上げます。
今後も引き続きご声援のほど宜しくお願い致します。

ファジアーノ岡山が近日中にJ準加盟申請を行うこと自体は既報でして、その中詳しい経緯や状況がまとまっていたのはさすが地元紙の山陽新聞、その6月30日付より。
http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2007/06/30/2007063009174447012.html

ファジアーノ岡山 Jリーグ準加盟申請へ 承認なら地域リーグ
中国サッカーリーグファジアーノ岡山岡山市)が7月4日にも、Jリーグへ準加盟を申請する。申請はJリーグ2部(J2)参入に欠かせない要件。承認されれば、「J4」に当たる地域リーグに所属するチームとしては全国初のケースとなる。
申請に必要な岡山県サッカー協会の承諾書、運営会社・ファジアーノ岡山スポーツクラブの資金繰り表、スポンサー(130社)の名簿などは既にそろい、ホームスタジアムは桃太郎スタジアム岡山市)を想定している。岡山、倉敷市岡山県の地元自治体には、練習場やスタジアム確保など協力姿勢を示す文書の提出を要請しており、それらの書類がそろい次第、木村正明社長らがJリーグへ申請する。

6月30日の時点でほぼ申請書類は出揃い、残る地元自治体からの支持・支援文書が到着したので7月4日に申請できた、というわけですね。

その後はJリーグが書類審査や現地調査を行い、最終的に8月21日のJリーグ理事会で審議され、決定する。
ファジアーノ準加盟クラブに認められれば、Jリーグ入りが現実味を帯びる。今年、日本フットボールリーグ(JFL)に昇格し、来年4位以内の成績を収め、最終関門のJ2入会審査で承認されるとJリーグ昇格がかなう。(後略)

中国リーグを戦うチームも、開幕から12連勝で堂々の首位。まだリーグ戦は残っていますが全国地域リーグ決勝大会への中国リーグからの出場枠は2つあります。*1よほどのことがない限り大会に臨めるでしょう。一昨年は1次ラウンド敗退、昨年は決勝ラウンドで敗退してしまいましたが、毎年確実かつ急速に力をつけてきているようです。今季は、ザスパ草津で一昨年に指揮をとられた手塚さんが監督を務められており、また地域リーグ時代の草津の中心選手で昨季まではファージアノの選手だったFW梁圭史が今季からコーチに就任。選手にも元ザスパ草津チャレンジャーズチームのMF山口直大が所属しているなど、ザスパ草津ともなにげに関係の深いチームです。毎年過酷な全国地域リーグ決勝大会ですが、なんとかJFLへの昇格を果たして欲しいですね。
話を元に戻しまして。ファジアーノ岡山がJ準加盟を果たせば、地域リーグクラブとしては初の事例となりますが、*2実際のところどのくらい環境が整っているのか。準加盟の条件は大小様々ありますが、おおざっぱに分けると「運営組織・ホームタウンの協力・J規格スタジアム」となります。*3それぞれについて新聞過去記事からまとめてみます。地元紙山陽新聞は、ファジアーノ岡山の過去記事を設立の動きがあった2003年のものから全て特設応援ページに並べておいてくれるので、ありがたいですねえ。上毛新聞は今週の試合結果も読めないのに。
●運営組織(運営組織の法人格・常勤取締役と職員・財務状況など)
山陽新聞2006年7月13日付より。
http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/soccer/fagi/news/2006/20060713.html

ファジアーノ岡山 株式会社設立へ J入りへ財政面強化
中国サッカーリーグファジアーノ岡山の新しい運営母体となる株式会社「ファジアーノ岡山スポーツクラブ」の登記が13日行われる見通しとなった。社長に就任予定の元ゴールドマン・サックス証券執行役員、木村正明氏(37)らが12日、岡山市内で明らかにした。
これまでファジアーノNPO法人・岡山ヒューマンスポーツクラブが運営してきたが、将来のJリーグ入りに向け、選手強化や財政基盤を充実させることが株式会社設立の狙い。
資本金は当初約1000万円で、来年1月末までに県内企業や県民から幅広く出資を募る。ファジアーノは今年、中国リーグ上部に位置するアマチュア最高峰の日本フットボールリーグ(JFL)への昇格、来年はJFL上位、再来年のJリーグ2部(J2)入りを目標に掲げる。

昨年7月にNPO法人から株式会社に。常勤取締役も決定し、体制的には準加盟の要求を満たしました。ファジアーノ岡山として出発してから3年目、JFL入り前での運営体制の強化は迅速かつ拙速のようにも思えますが、NPO活動での限界を見据えて、組織・財政状況の強化を図ることがJ加盟とクラブ存続のために必要と判断されたようですね。各地域の強豪が集い、「目指せJ」クラブも増加する全国地域リーグ決勝大会。そういう相手を向こうに回して戦っていくには少なくない資金が必要ですからね。05年の大会初挑戦が1次リーグ敗退で終わったいえ、この時の経験がチームにもクラブにも活かされているといえるのではないでしょうか。同記事で、その辺りが解説されています。

●解説 「チーム力」向上狙う 支援の輪広げ安定運営
正式に設立することが12日、明らかになったサッカーのファジアーノ岡山の新運営母体となる株式会社「ファジアーノ岡山スポーツクラブ」。これまで運営を担ったNPO法人・岡山ヒューマンスポーツクラブでは資金難が切実となり、夢のJリーグ入りに向け株式会社化による財政基盤強化は当然の成り行きだった。
ヒューマンクは昨年度、チーム運営に必要な約1200万円の資金繰りに苦労した。会費や広告料だけでは足りず、有志の寄付金や借入金で急場をしのいだ。
現在所属している中国リーグから上部リーグに進めば、運営資金は大幅に増える。日本フットボールリーグ(JFL)は1・5億円、さらにJリーグ2部(J2)では3億円が必要とされる。日本協会は2010年、J2チームを現在の13から18に増やす構想を掲げており、新経営陣は早期昇格には株式会社設立で、集金システムの構築が急務と判断したようだ。
Jリーグを目指すライバルチームは全国に約30と言われる。9地域リーグの上位チームを倒し、入れ替え戦を勝った先にJFL昇格があり、さらに強豪18チームがひしめくJFLを勝ち抜かないとJ2の扉は開かない。1勝ずつの積み重ねはJへの階段を上がることになる一方、支援の輪が広がり経営の安定化にもつながるはずだ。(後略)

取締役社長の木村正明氏のインタビューも同紙の2006年9月6日付より。注目部分を抜粋します。
http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/soccer/fagi/news/2006/20060906.html

ファジアーノ岡山スポーツクラブ 木村社長インタビュー
―資本金1500万円で会社を設立し1カ月余り。資金集めは順調に進んでいるか。
「現在、事業計画書を手に県内企業に理念を説明して歩いている。地域活性化につながる、と評価されているが、具体的な出資はこれからになる。Jリーグ準加盟段階で1億5000万円の資金が必要で、フロント、チーム関係者は相当の覚悟で事に当たらなければならない」
―今年、中国リーグで優勝すれば、アマチュア最高峰の日本フットボールリーグ(JFL)昇格を懸けた全国地域リーグ決勝大会が待ち受ける。
「同じ地域リーグではFC岐阜(東海リーグ)、V・ファーレン長崎(九州リーグ)が強敵。今年か来年にはJFL昇格を果たし、Jリーグを狙えるチーム力と財政基盤を整えたい。全国にはJリーグを目指すチームは30以上ある。前例を見ればJFLの壁にことごとくはね返され、Jリーグ昇格後も財政面で苦労するケースは多く、今は確かな経営基盤を築くことが急務」
―サッカー関係者にとどまらず、県民の関心は高い。今後の抱負を。
「県民に愛されるチームになるよう、経営に知恵を絞る。運営資金は特定企業頼りではなく、たくさんの企業や個人に支えられる地域密着型クラブを目指す。収益性の高いJリーグチームを柱に、将来は他のいろいろなスポーツが楽しめるようにし、岡山の子供たちに夢を与えられるチーム、クラブを目指す」

Jリーグに加盟するためにも運営・財政基盤強化が必要で、準加盟時には1億5千万円が必要とのこと。また頼れる大スポンサーがなく、小スポンサーを増やしていかねばらならない見通しが語られています。ヴァンフォーレ甲府方式と云えるでしょうが、実際にスポンサー獲得に東奔西走する現場は大変ですよね。その活動については同紙の本年1月11日付の木村社長インタビューで触れられています。
http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/soccer/fagi/news/2007/20070111.html

●JFL昇格へ正念場 ファジアーノ岡山 木村正明社長に聞く
(前略)
―プロ契約選手を増やすなどチーム強化には多額の資金が必要だが。
「資本金を含め昨年は運営費2500万円でやり繰りしたが、今年は遠征や選手強化など最低でも2倍の5000万円が必要。この目標に向け、フロントは資金集めのために毎日汗をかく。資金援助だけでなく、例えば薬局にテーピングを原価で譲っていただくとか、理髪店なら選手の無料散髪券など、できる範囲で支援をしてもらえればありがたい」
(中略)
―JR岡山駅前に整備していた5人制ミニサッカー・フットサルのコートが13日オープン。スクールではファジアーノ選手が幼児や小学生を直接指導する。
「自主財源の確保、さらには子どもたちの夢づくりにつながる。一人一人の個性や発育を考慮して指導し、サッカーの楽しさを伝えるとともに、自ら活動できる人間性を養いたい」
(後略)

株式会社への移行から約1年。準加盟申請までこぎつけるまでには多くの活動の積み重ねがあったことが窺えますね。ただ昨季よりチームを強化した分、今季の運営資金もやりくりが大変なようです。それに関しても同紙4月12日付と30日付より。
http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/soccer/fagi/news/2007/20070412.html
http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/soccer/fagi/news/2007/20070430.html

ファジアーノ 29日からホーム6試合で樽募金
Jリーグ入りを目指すファジアーノ岡山は、県民から幅広い支援を受けるため「樽(たる)募金」を始める。夢実現へ機運盛り上げを図るとともに、チーム強化費に充てるのが狙い。29日、岡山市桃太郎スタジアムで行われる中国リーグ、JFE西日本戦でスタートさせる。
同スタジアム正面付近に設置する酒樽は直径、高さともに1メートル。倉敷木材(倉敷市)が無償提供する。15日のリーグ開幕戦を除く、ホーム6試合の会場に置く予定。(後略)
ファジアーノ 樽募金開始 夢の「J」へ後押し
岡山からJリーグへ―。中国サッカーリーグファジアーノ岡山は29日、試合会場の桃太郎スタジアム岡山市いずみ町)に酒樽(さかだる)を設置し、約5600人の観客に募金を呼びかけた。
プロ野球・広島カープの球団草創期などに行われたことにあやかっての発案。倉敷市内の木材メーカーが製作した樽は直径、高さとも1メートルもあるジャンボサイズ。スタジアムの2階通路に置かれ、気前よく1000円札数枚を投じるサポーターや、背伸びして中をのぞきながら100円玉を入れる子どもなどが続いた。岡山・牧石小6年大長智勝君(11)は「ぼくたちが応援するから」と心強い。
ファジアーノは今季9000万円の運営資金のうち5000万円しかめどがたっておらず、スポンサー集めに苦労している。応援機運の盛り上げも狙った「樽募金」は今後、同スタジアムでの公式戦3試合でも行う予定だ。(後略)

2005年には1200万円の運営資金のやりくりに窮し、2006年は2500万円で運営したクラブが、2007年には5000万円も集めたのは素晴らしい頑張りですね。毎年2倍に増えています。しかし今季の運営資金は9000万円を予定し、まだ4000万円が不足している状態。ここは準加盟審査に影響があると思われます。FC岐阜も運営資金に問題が発生し「財政の改善と追加報告」を条件に、準加盟が認められましたからね。ただ目算あって準加盟審査に臨んでいるのでしょうから、残り4000万円の調達は完全にお手上げ、ということはないでしょう。一日も早く新しいスポンサーが増えてくれるといいですね。

●ホームタウンの協力(ホームタウンとなる市町村と都道府県からの練習場の支援・スタジアム優先使用の許可)
冒頭の記事で、岡山県岡山市倉敷市から「ホームタウン支援承認」の書類が届いたと書かれていますから、当然クリア。そて練習場支援に関してですが、ここから先は、草津サポだと「いいなあ、いいなあ」の連発になりそうな記事が並びます。2006年12月12日付と本年2月17日付より。
http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/soccer/fagi/news/2006/20061211.html
http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/soccer/fagi/news/2007/20070217.html

ファジアーノ・J入り支援 岡山市サッカー場を優先貸し出し
岡山市高谷茂男市長は11日、同市に拠点を置き、将来のJリーグ入りを目指すファジアーノ岡山中国サッカーリーグ)について、市有のサッカー場を練習グラウンドとして優先的に貸し出すなど、支援に乗り出す考えを明らかにした。
11月定例市議会の個人質問に答えた。「市民と一緒になって応援できるプロスポーツを持つことは、政令指定都市の大きなシンボルの一つになる」とプロを目指すチームへの協力に意欲を見せ、「来年度にも練習場の確保などの面で、支援ができるように取り組んでいきたい」との考えを示した。
練習場の候補に挙がっているのは天然芝が整備された神崎山公園競技場(岡山市神崎町)、財田スポーツ広場サッカー場(同市長岡)、灘崎町総合公園多目的広場(同市灘崎町片岡)の三施設。ファジアーノは現在、夜間に岡山、倉敷市などの学校や企業の土のグラウンドで練習しており、運営母体のファジアーノ岡山スポーツクラブ(木村正明社長)は10月下旬、芝生が整備されたグラウンドの確保を同市に口頭で要望していた。(後略)
ファジアーノ支援 岡山市が6月から練習場を優先貸し出し
岡山市高谷茂男市長は16日、Jリーグを目指すファジアーノ岡山中国サッカーリーグ)を支援するため、6月から市有サッカー場を練習場として優先的に貸し出すことを表明した。
対象となるのは、天然芝が整備された操車場跡地公園スポーツ広場(岡山市北長瀬表町)、灘崎総合公園多目的広場(同市灘崎町片岡)、神崎山公園競技場(同市神崎町)、財田スポーツ広場(同市長岡)の4施設。利用は午前中2時間の週3回。芝を休ませるため、1週間単位で順番に4施設を貸し出す予定にしている。
(中略)
ファジアーノは常設練習場がないため、岡山、倉敷市内の企業や学校の土のグラウンドを借りて夜間練習。硬い土は選手の足腰への負担が大きく、木村社長らが昨秋から芝生グラウンドの確保を岡山市に要望し、昨年12月、市議会で高谷市長は支援に乗り出す考えを示していた。
昨年からDFとして活躍する伊藤琢矢選手(32)は「練習環境が改善し、うれしい。公式戦と同じ芝生グラウンドで常に練習できれば、技術向上やけが予防などメリットが大きい」と話した。

チーム始動からこちら、土のグラウンドの練習場を点々とした状況が、4箇所ローテーションとはいえ市内の芝生の練習場を、1週間連続&優先権つきで確保ですよ。そもそも要望の段階では3施設だったところを4施設に増やしてくれていますし。それぞれの施設が全て同じように充実しているのではないでしょうが、芝の状態を確保しつつ、年間通して練習場の心配が無くなったのは、大きな支援ですし、チーム強化の面でも大きいですね。どう思う、同志草津サポ諸君。準加盟審査において、ホームタウン支援の面では問題ないようです。
ただこの環境も、天からの恵みではなく、クラブ関係者の努力の賜物だと考えられます。2006年3月発行の季刊誌「サッカーJ+」第3号に、宇都宮徹壱さんの長期連載『股旅フットボールファジアーノ岡山編』が掲載されました。そこに昨季でも練習場やクラブを巡る環境が決して恵まれていたわけではなかったことが記されています。余談ですが、この連載記事のためにこの雑誌を購読しているようなものですよ。月刊化が決定しましたが、不定期連載にならざるを得ないのかなあ、と心配しています。

宇都宮徹壱の股旅フットボール 第3回「夢見る時代からの脱却」
(前略)早速、ファジアーノの練習場を訪れよう・・・・・・と思ったら、何と目的地は岡山市ではなく倉敷市にあることが判明。それも、水島港に程近い工業地帯にある、JFEスチール(旧・川崎製鉄)の福利厚生施設を利用しているらしい。岡山からは車でおよそ1時間。
(中略・宇都宮さんは、当時の山下監督の車に同乗させてもらえることに)
すでに日は暮れて、車窓の向こう側に、闇に沈んだ工業団地が見える。ファジアーノの練習場は、距離的に、というよりも心理的に、とおく感じられる。これでは、岡山市民にクラブの存在が浸透しないのも詮無き話である。生活の場の近くに練習に励む選手の姿があって、初めて人々はクラブに愛着を覚えるのだ。
(中略・翌日は桃太郎スタジアムを見学に)
桃スタは、さすがに岡山国体のメイン会場だけあって、実に立派な造りである。完成には2年の月日と、91億円が費やされた。(中略)これほど立派なスタジアムがありながら(いや、むしろ立派であるがゆえに)、ファジアーノは昨シーズンの中国リーグで、一度もこのスタジアムを使用できなかった。「国体に遠慮していたから」「たかが4部のクラブだから」「サッカーだけを優遇するわけにはいかないから」――理由については諸説あるが、お陰でファジアーノ岡山市以外の5会場で「ホームゲーム」を行うことになり(広島県福山市も「ホーム」扱いとされた)、サポーターはまさに流浪の民となった。
(中略)岡山は伝統的に陸上競技団体の発言力が強い、という話も耳にした。「桃スタは陸上競技施設なのに、そこでサッカーをするのはいかがなものか」という意見も根強くあるらしい。(中略)競技間に横たわる悪しきセクショナリズムが是正される気配はない。

とんとん拍子に練習場を優先確保できたわけではなく、外部の悪しきセクショナリズムと戦い、折り合いをつけて活動から3年半を経て、ようやく勝ち取った芝生の練習場なんですね。草津サポとしてはまず知事選からかなあ・・・

●Jリーグ規格スタジアム(座席数・ピッチ・照明・各屋内施設など)
結論から云うと、ほぼ完璧です。施設の充実度に加えてスタジアムまでのアクセスも良好どころか優秀の部類に入るでしょう。そんなホームスタジアムは岡山市桃太郎スタジアム。その詳細は岡山県総合グラウンド公式より桃太郎スタジアム概要ページから。
http://www.okayama-momo.jp/annai/annai_1.html

陸上競技場(桃太郎スタジアム
【種別】 第1種公認陸上競技
【収容人員】 約20,000人(メインスタンド約8,200人収容/バックスタンド約7,400人収容)
【フィールド】 106m×72m(天然芝)
【夜間照明設備】 1,500Lxを確保
【大型映像装置】 1基
【主な部屋】
1階: エントランスホール、遺跡&スポーツミュージアム陸上競技場事務室、ウォーミングアップ室、情報処理室、医務室、ドーピング検査室、更衣室、シャワー室
2階: 総合グラウンド事務所、売店スペース 4階: 運営指令室、写真判定室、放送室
ユニバーサルデザイン
車椅子対応型エレベーター 2基 車椅子対応観客席 134席
聴覚障害者(難聴者)対応観客席(集団補聴設備) 240席
多目的トイレ(身体障害者等)12ブース 車椅子対応スロープ 4ヵ所 親子席(ベビーカースペース) 8席

えー、文句無くJ1規格です。また日本一のスタジアムガイド「わかの観戦日記・スタジアムガイド」さんから座席の説明が。
http://waka77.fc2web.com/index.htm
http://waka77.fc2web.com/studium/35okayama/06momotaro.htm

(前略)
メインスタンドは屋根付き。2万人収容で座席はバックスタンドも含めて全席が個席(ベンチシートではない)という充実した施設でJ1基準を軽くクリアしている。(後略)

かつメイン座席はシート付きだそうで。数年前の国体で作られただけあってバリアフリーの導入されています。あえて改善点を挙げれば両ゴール裏が平坦な芝生席であることくらいですが、ここを開放しなくても2万席もあるのですから問題はないでしょう。あと陸上競技場なのでサッカー専用じゃない、とか云いだすとキリがないので。
アクセスは岡山駅から徒歩で15分。岡山駅は新幹線、山陽本線、四国と繋がる瀬戸大橋線など多くの路線が乗り入れる地域のターミナルステーションで、そこから徒歩で着けるわけですから、草津サポ的なイメージでは高崎競馬場跡にあるようなものでしょうか。素晴らしいアクセスですね。J規格スタジアムの条件は問題ないどころか、現在のJ2クラブと比較しても、そこで五指には入るスタジアムではないでしょうか。そして都市圏人口と西日本での岡山県の位置、スタジアムアクセスを併せて考えると、J昇格となれば中国・関西・九州・四国の他サポにも遠征しやすいアウェイクラブという認識になりそうです。地元も他サポからも集客が見込めます。ファジアーノ岡山は、今はまだ地域リーグクラブですが、良質な鉱脈を持つ、成長が期待されるクラブだと思われます。
各条件を見ていくと、準加盟に関しては「クラブの財務状況」が懸案事項である以外は、ほぼ問題ないようです。確実に規模を拡大しているファジアーノですが、残り4000万円を集める必要があるようですし、JFL昇格、J加盟時にはさらに資金が必要になります。なんとか来月には準加盟を果たして、スポンサー数を拡大する起爆剤になって欲しいです。そして準加盟すれば自動的にJFL昇格ではありませんから、チームも強くなり全国地域リーグ決勝大会を勝ち抜いていってもらいたいですね。

*1:昨季も2つ。これは大会決勝ラウンドに進みJFL入りも果たした三菱水島の置き土産。そしてファジアーノ岡山も、昨季大会で決勝ラウンドに進んだため今季も出場2枠をキープした。

*2:現在のJ準加盟クラブは、ロッソ熊本栃木SCガイナーレ鳥取FC岐阜の4クラブで、いづれJFL所属。

*3:J2加盟には、さらにJFLで4位以上・平均観客動員3000人以上という条件が加わります。

J2第25節愛媛FC戦。現時点で今季ワーストゲーム。同時に、不調時の戦い方を問われる一戦。

SH772007-07-02

やっと俺の里見仁義が出場したのに。確か昨季、里見が出場した最後の試合は惨敗の東京ヴェルディ戦だったと思いますが、*1久々の出場なのにあの試合と同じく、大ブーイングの中で頭を下げる里見が見ていてツラかったですね(涙) そしてあの試合と同じく、彼のプレー自体は悪くなかったと思います。持ち前の運動量とロケットスロー、大きなサイドチェンジのパスと好調ぶりが窺えました。シーズン開幕前に負傷して出遅れていたそうですが、この調子ならこれからも期待できそうです。
ただ里見自体は良く動き、キレもあったと思いますが、ベテラン勢を中心に、全体的に体が重そうな試合でした。札幌遠征から中3日、第2クールも終盤ですからそろそろ疲労の蓄積がプレーに影響を与える時期でもあるのですが。それでも運動量で相手に負けてしまうと、草津はゲームを作れないので厳しい限りですね。ベテランやほぼフル出場のレギュラー勢も適度に休養を入れないと、なかなかパフォーマンスは上がってこないでしょうし、彼らを休ませるためにもサブメンバーの奮起が求められると思います。まあ左SBで結果を出した吉岡聡俺の里見を、試合前日にサッカー教室に出している場合じゃないと思うのですが。まずは結果とこの日のメンバーをJ's GOALより。
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030320070701_detail.html

●2007 J2第25節(7月1日/群馬県陸/3,759人)
ザスパ草津 0−2 愛媛FC
得点 47分:内村圭宏(愛媛) 74分:内村圭宏(愛媛) 
交代 52分:松下裕樹松浦宏治草津) 62分:桑原剛里見仁義草津)
    68分:江後賢一大山俊輔(愛媛) 74分:秋葉忠宏田中淳草津)
    78分:赤井秀一新井翔太(愛媛) 85分:内村圭宏三木良太(愛媛)
警告 82分:里見仁義草津) 87分:大山俊輔(愛媛) 89分:川北裕介(愛媛) 
●J2第25節vs愛媛FC ザスパ草津スターティングメンバー
GK:1本田征治 
DF:3尾本敬 5チカ(C)23藤井大輔
MF:6鳥居塚伸人 15桑原剛 17秋葉忠宏 30松下裕樹 18櫻田和樹 
FW:11氏原良二 9高田保則 
リザーブメンバー
GK:22北一真 DF:4田中淳 
MF:8山崎渡 27里見仁義 FW:20松浦宏治 
●キックオフフォーメーション(4−4−2・ドイスボランチ
−−高田−−氏原−−:松浦
櫻田−−−−−−桑原:山崎・里見
−−松下−−秋葉−−:
尾本−−−−−鳥居塚:
−−チカ−−藤井−−:田中
−−−−本田−−−−:北

今季の基本布陣の4−4−2のドイスボランチ、そして前節の札幌戦で採用した配置を継続しています。秋葉忠宏松下裕樹をDMFとして並べ、櫻田和樹が左SHに上がっています。そして変更は、前節は右SHに入った鳥居塚伸人がSBに下がり、空いた位置には桑原剛が起用された点です。札幌戦では4CBの4バックでしたが、鳥居塚がSBに入ったことによってやや攻撃的に変更されたと云えると思います。ただ鳥居塚がSB起用時の問題点は「鳥居塚不在の両SHがサイド攻撃やセカンドストライカーとしてどれくらい有効に攻撃に絡めるか」ですから、この辺りがこの試合のポイントとなりました。まあ結果は散々なんですが。orz
あと特筆すべきはサブメンバーの組み合わせなんですが、GK北一真とFW松浦宏治、MF山崎渡は今季の流れから判りますし、MF里見はチャンスを貰ったのだと思えます。しかしDFのサブメンバーがSB寺田武史や吉岡ではなくCB田中淳なんですよね。結果的に彼はチカの代わりにCBに入り、チカはパワープレーのために前線に上がったのですが、こういう後ろ向きな特殊状況のためにベンチ入りしていたとは考えにくいですし、そのためにベンチメンバー枠を1つ使うのはもったいなさすぎます。チカを上げる時には尾本敬がスライドすればいいわけですし、そこが尾本のSB起用の利点の1つでもあるわけですから。
おそらく植木さんは、鳥居塚の代わりに田中を右SBとして「守備固め&鳥居塚を中盤に上げる」を意図していたのではないかと考えます。愛媛FCは攻守の切り替えの早く、スピードあるサイド攻撃を基調としたチームですからね。そんな愛媛のサイド攻撃のスペースを与えず、かつ鳥居塚がバイタルエリアのケアに走らねばならない場合の交代要員だったように思えます。田中が桑原と交代して右SBに入り、鳥居塚が上がる。そして状況に応じてSHとしてや、秋葉や松下と並んで3DMFの態勢。前半最後の決定機で氏原が決めていれば、終盤こういう形で愛媛の攻勢に対処する予定だったのではないでしょうか。現実としては、得点できないまま後半早々の失点でプランは流れてしまったのですが。そして攻撃の組み立てと、流れとしては尾本と田中がいるよりは、寺田か吉岡が必要な展開になってしまいました。試合の流れは、伊藤寿学さんのJ's GOALレポートより。
http://www.jsgoal.jp/news/00050000/00050872.html

【J2:第25節 草津 vs 愛媛 レポート】草津、今季ワーストゲームで愛媛に完敗。草津はオフ返上で練習再開へ。
草津の完敗だった。草津にとっては、それ以上、語ることがないほど内容に乏しいゲームだった。バックスタンドを埋め尽くしたサポーターが試合前から迫力ある重低音を響かせ今季最高の応援を展開した一方で、チームは今季最悪のゲームを繰り広げた。

感情を抑えた淡々とした文章から、逆に伊藤さんのガチ怒り具合と失望が伝わってくるようなレポートですね。ゲーム開始前、ピッチアップ開始時の「草津GO+ジャンプ付き」はやっていて盛り上がりましたし、応援は熱が入ったものだったと思います。やはり札幌戦の引き分けからサポも手応えを感じていて、この試合からなんとか上昇気流にのって欲しいという気持ちの表れだったのではないでしょうか。自分はそんな感じで応援していました。

草津は、築き上げてきたポゼッションサッカーを全くさせてもらえなかった。自陣で奪ったボールを中盤で展開しようとするが、愛媛の素早い切り替えに後手を踏み、パスが横にしか出せない。ここまでは、最近の悪いパターンと同じだったが、このゲームではさらに先があった。愛媛にパスコースを限定されて追い詰められる草津は、ボールを横に出すことすらできずに、GK本田へのバックパスを繰り返すことになる。本田は「あの状況で返されたら、ただ蹴るしか選択肢がない。一つのパスコースを消されたら、簡単に後ろに戻すのではなく、次の方法を考えなければならない」と指摘した。

前節の札幌戦では、智将三浦監督からの褒められた「中盤の4人によるパス回し」ですが、この試合ではうまくいきませんでした。理由は複数あり、まず鳥居塚が下がって桑原がSHに入って構成自体が違う点。そして札幌戦では中盤の4人がボックスを作って、サイドからの崩しよりも中央で互いがポジションチェンジを繰り返して数的優位を作れた点。これには相手の札幌がDMF2人は守備するものの、SHは攻撃優先でサイドに拡がり気味だった点も関係しています。
そして札幌戦では、全ての時間帯でうまくいったわけではありませんが、中盤の4人がパス交換でポゼッションを保ちつつ、2列目まで前進してきた秋葉が前を向いたままボールを受け、GKとDFラインの間にボールを落とす攻撃で2得点を挙げることができました。GK高木貴弘の弱点*2を徹底的に突き、サイドからのクロスにはめっぽう強い札幌DF陣の攻略方だったと思います。
しかし今節の愛媛戦は、SHの桑原と櫻田が共にサイドに開く位置をとってサイド攻撃を基調とする、従来の戦い方に戻してていたように見えました。そこが愛媛の守備策にズバリ引っ掛かってしまったと思われます。また鳥居塚と桑原では役割が違い、中盤でのパス回しに参加するというよりドリブルでのサイド突破とクロスを送ることを担っていたように見えました。櫻田のサイドに相手全体をひきつけ、そこからサイドチェンジで空いたスペースを桑原が突く、というプランだったのではないでしょうか。

ゲームを通じて草津の運動量や闘志が足りなかったことは間違いないが、この状態に陥った要因は、愛媛の徹底した草津対策にあった。愛媛のボランチ・井上が「サイドをマークしてボールを出させないようにした。サイドをケアすることによって、攻撃が中央に偏ってきたので楽になった」と話したが、草津ポゼッションサッカーはサイドの起点を潰されたことで、音を立てて崩れていった。これまで中盤で細かくパスを回すことでリズムを作ってきた草津だが、そのパスを封じられると何もできなくなるという弱点をさらした形になった。

ただ「両SHのマークがキツイと思うようにいかなくなる」という弱点は、既に第2節で徳島ヴォルティスが突いてきていたので、「遂にバレたか」というものではありません。ある意味当たり前の対応をされているだけです。しかし、今まではSHが激しく寄せられたり、マークがキツかったりすれば、SBが近づいてフォローするなり、追い越して相手のマークをズラすなりしてきたのですが、*3右SBの鳥居塚は(札幌戦からでしたが)疲労のためか運動量が上がらず全体的に精彩を欠くプレー。左SBの尾本は、守備を優先しているのか櫻田を追い越すこともフォローで近づくことも躊躇っているような低いポジションどりで終始しました。
こうなるとSH単独での打開を図るしかなく、桑原は数回ドリブル突破でチャンスを作りましたが、*4左サイドライン際の櫻田は、独力で相手を抜きさるプレーよりも味方を前に送り出すパスで活きる選手です。SB尾本が絡まず、DMFの2人も上がってこれずで、バックパスを繰り返すことになってしまいました。鳥居塚が下がり目で、櫻田が攻撃を展開できない状態では、ロングボールの繰り返しか、無理なパス回しを奪われてのカウンターでピンチを招き続ける前半となってしまいました。
全体的に運動量も気迫も足らず、攻守の切り替えの早い愛媛FC相手に手詰まり状態で拙攻を繰り返す。マズい状態なのは、誰の目にも明らかだったと思います。そして、この試合最大の問題は「この状態をどう変えていくか」だったと考えます。疲れていようが手詰まりだろうが、走り攻め続けるのか。相手の注文通りに嵌められている組み立てを、一回停めるのか。
チーム全体が連戦の影響か、疲労しているのは明白で、前半20分くらいで既に相手のセットプレー終わりやカウンターのチャンスでもDFやMFも歩いている状態。スタンドからは不甲斐ないイレブンに叱咤の声が多数上げられました。草津本来のスタイルに程遠い状態だったので仕方ないのですが、こんな状態の時はチーム全体を落ち着かせるためにチームは守備隊形を整え直し、後方のゆっくりしたパス回しで、待ち構えている愛媛FC全体を釣り出し、陣形を崩させるべきだったと思います。前半の途中には後方のパス回しで相手全体を釣りだした時間帯もあり、そこでは落ち着きを取り戻して、桑原の突破に繋がりましたしね。
いつもの草津ならば、いつも通りの攻勢の応援がふさわしいと思いますが、いつもの状態でないイレブンと危機的な試合の流れの時は、もう少し後方のパス回しと守備隊形を整えて構えるサッカーを見てやってもいいんじゃないかと思いました。48試合全部がイケイケでいけるハズはありませんし、応援も我慢する時間帯はチームと一緒に我慢しながら支える声が出せればと思いました。まあ、だらしないプレーの連続とジョギング移動には自分も相当トサカにきていたので、難しいことだと思うのですけど。イレブン内でも考え方が割れてしまい、戦い方がちぐはぐになってしまっていたようですね。
http://www.jsgoal.jp/news/00050000/00050860.html

秋葉忠宏選手(草津):
「リトリートすれば、守りきれるはずなのに、一つ一つがズレていってしまい、相手に自由に回されてしまった。ゲームがうまく行かないことで、文句の言い合いになってしまい、チームがバラバラになってしまった。弱いチームの典型的な試合になってしまった」
尾本敬選手(草津):
「気合が足りなかったとは思わないが、みんなの気持ちが空回りして、イライラしてしまっていた。それでも、DF陣で耐えていこうとしたが、ミスから失点して立ち直ることができなかった。あの1点がなければ、違う展開に持って行けたと思う」
櫻田和樹選手(草津):
「相手が中盤のパスを狙いに来ているのは分かったが、うちの出足が全体的に遅かった。闘う気持ちが足りなかったのかもしれない。全体的に相手のペースで、うちが後手に回ってしまった」
鳥居塚伸人選手(草津):
「監督に『闘っていない』と言われたが、運動量、球際の部分で気持ちが出せなかった。中盤で詰められてバックパスが多くなってしまっていた。もっと運動量を増やして、相手をズラしていかないといけなかった。セカンドボールが拾えなかったのは運とかじゃなくて、チーム全体で意識が足りなかったからだ」

秋葉と尾本は「仕切り直し、建て直し」だと思っており、鳥居塚と櫻田は「なんとか攻めたい」だったことが判ります。味方は動けず攻撃は手詰まり。拙攻を相手に利用されて防戦一方。こういう状況でどう対応するのか。攻守どちらの考え方も間違っていません。しかし統一しなければ勝てません。この見どころ少ない試合から得られた大きなテーマだと思います。前半は不利な状況ながら数回のピンチも失点せずに乗り切り、後半の建て直しが期待されましたが、開始早々にミスから失点してしまいます。

愛媛の積極的な姿勢が、草津のミスを呼び込んだ。後半開始早々の47分、草津のミスに乗じてボールを奪った井上がゴール前へ低いクロス。そのボールに詰めたのは内村だった。「(田中)俊也が前でつぶれてくれたので、合わせるだけだった」(内村)。そして、74分には草津のクリアをブロックした大山がマイナスのラストパス。そのボールを内村が豪快に突き刺し、試合を決めた。「ニアでマークを振り切ってタイミング良く撃つことができた。自分でもびっくりするくらいのシュートだった」(内村)。敵地で会心の勝利を挙げた望月監督は「草津のサッカーを見習った」と控え目なコメントをしていたが、リーグ終盤にむけての確かな手応えをつかんだはずだ。

1点目は秋葉のミスで、2点目は鳥居塚のミス。二人とも明らかに動けておらず、それでもボールタッチが多い中でのミスでした。植木さんは次々と攻撃の駒を入れますが、愛媛の運動量の前に思うような攻撃も出来ず、またメンバーが交代するたびにパワープレーで前線に上がったチカへクロスを送る選手も鳥居塚しかいない状態で、それでも何回かチャンスは作れたものの、無得点のままで試合が終了しました。90分通じて運動量少なく気迫も感じられない今季これまででワーストの内容であり、結果でした。
1年間戦うなかで、イヤでもこういう試合はあります。しかも間違いなく。それはそれで仕方ないことだと思っていますが、ただGK本田がコメントで「札幌戦にドローでどこかに慢心があったのかも」と分析していました。それが草津の大きな弱点なのかもしれません。確かに札幌戦は不調を覆した奮起の大健闘でしたが、それまでは「内容ではなく勝ち点3が必要」と各々がコメントしていたはずです。札幌戦は勝ち点1の試合であり、次の愛媛戦で勝ち点3に繋げるのではないでしょうか。苦しい状況なので一定の成果に安心したい気持ちも充分に分かりますが、札幌に健闘すれば愛媛が自動的に負けてくれるわけでもありません。勝利とそして連勝を達成するのは相手よりも自分達に打ち勝つ覚悟が必要だと思えた試合でもありました。

対する草津だが、第2クールでわずか1勝と停滞している。目指すポゼッションサッカーを成熟させるには、さらなる努力、そして臨機応変なプレーが必要だろう。植木監督は試合後のロッカールームで選手たちに、月曜日(2日)のオフを取り上げて練習に充てることを通達した。指揮官のサッカー人生で初めてのことだという。 

試合翌日にハードな練習は無理でしょうから、主にミーティングだと思われます。このまま1年を過ごすのか、もう一度奮起し、そして次の試合だけでなく奮起しつつづけるかどうかの境目ですね。今季の草津イレブンとチームの、成否の分水嶺だと思います。試合後にバクスタ前で挨拶に並んだ俺の里見は、相当悔しそうな表情をしていました。里見だけでなく、そういう表情の選手も多かったのでまだまだ立ち直ってくれると思いますが。そしてまた、イレブンの奮起を促し背中を押す応援をしたいと思います。

*1:これはマチガイでした。ダイアリー更新後に記録集で確認すると、東京ヴェルディ戦の後も先発を含む4試合で出場していました。謹んで訂正いたします。

*2:至近距離のシュートストップでは高木は神ですが、逆にシュートストップがウマイので飛び出しを逡巡する時があるんですよね。昨季の指導陣である植木さんと山岸GKコーチが相手で90分間苦手ばかりを突かれるのですから、高木はやりづらかったと思います。でも守護神として札幌に貢献してJ1に上がれよ高木。今でも変わらず応援しているぞ。(;´Д⊂)

*3:第1クールではSH鳥居塚がマークされるとSB佐田が近づき、追い抜いていきましたよね。

*4:前半の終盤に、松下と桑原でサイドを突破し、桑原のクロスを氏原がシュートしましたがGK正面。ここで先制していれば試合はもう少し違ったものになったでしょうね。勝てたかどうかはともかく、こちらのゲームプランで進められたと思います。