ザスパ草津2009、第4節〜第7節。求められるのは「プランB」。

開幕3連勝の後が1分3敗、「少し褒めると、すぐコレだ!」という磯野カツオ状態の我らがザスパ草津。戦績がまったくの五分になってしまったわけですが、この4試合(岐阜・富山・水戸・甲府)を観ても勝っているときと大きく戦術が違うようにも思えません。じゃあ何が出来て何が出来ていないのか。佐野監督の目指す「トータルフットボール」戦術と絡めて記していきたいと思います。では、さっそく出来てないことと違うことを列挙。相互に関連しあう項目もありますが、明確にするため6つに大別しました。6つもあるのかよ。

●第4節〜第7節、ザスパ草津が思うように出来ていないこと。違うこと。
1.中2〜3日連戦の疲労による運動量の低下、特に中盤。(岐阜・富山戦)
2.FW都倉のハイボールポストからの展開が機能せず。(4試合全て)
3.高めに位置する最終ラインのコントロール。(岐阜・富山・水戸戦)
4.堅守速攻、カウンター志向チームへの対応。(岐阜・富山戦)
5.リードされた展開や終盤の攻勢など、局面が変わった場合の意思不統一(富山・水戸戦)
6.選手交代の時間帯と、交代選手のチームフィットの希薄さ(4試合全て)

本当は「7.セットプレーの脆さ」(横浜・甲府戦)があるんですけど、これは「練習してね」としか自分のようなド素人には云いようがないので、含みませんでした。特に第3節横浜戦での2失点は、草津が3得点していたからいいようなものの、90分の頑張りを無にするような失点の仕方(ロングボールFKにマークを外してDFにヘディングで決められる×2)でしたからね。昨日の水戸×岐阜戦で解説をされていた三浦元札幌監督が、「セットプレーが弱いチームは安定して勝ち星をとれない」という主旨の発言をされていましたが、まったくそのとおりだと思います。横浜戦での3得点の挙げ方と、2失点の仕方を思い出せば、どちらが再現の可能性が大きいか、自ずと判りますからね。
●2009 J2:第3節 ザスパ草津 vs 横浜FC ハイライト前半

●2009 J2:第3節 ザスパ草津 vs 横浜FC ハイライト後半

なんか岩丸ゴメン、てな動画でもありますね。5勝しか出来なかった05年の草津に所属して、未だJ現役である数少ない選手*1なので、出来るだけ勝ち星の多い現役生活を送ってもらいたいんですけど。岩丸ガンバレ。
少し話が逸れましたが、では1番から順番に記していきます。

1.中2〜3日連戦の疲労による運動量の低下、特に中盤。(岐阜・富山戦)
→運動量を求められる戦術のため、疲労が抜けていないとチーム力が大幅にダウン。特に中盤のパスワークや、サイドを使ったビルドアップでミスが続出した。

開幕の熊本戦や第2節の福岡戦に比べると、岐阜戦や富山戦での全体的なスピード感のなさ、特に縦横に走り回るMF熊林や櫻田の反応の遅さやパスミスの続出など、疲労が抜けていないことを感じさせるプレーが目立ち、明らかにチームとしての展開力、攻撃力が落ちているのが判りましたね。岐阜・富山でのアウェイ連敗の一番大きな要因だと思います。またこういう時期に、攻め続ける時間が多い割りに報われない、カウンター志向の2チームと当たったのも運がないとも云えますが、この辺りは後述します。
この前のエントリーで「連戦中のターンオーバーや選手交代が注目」と記しましたが、サブメンバーの起用時間・方法を考えると、まだまだ「誰が出ても一緒」まではチームが出来上がっていないことが窺えます。サブを含めた成熟度を上げるには、これまで以上に時間が必要なのは仕方ないし、当たり前なんですけど。
今季は過去最高のシーズン51節で休みなしのリーグ戦。中2日、中3日の連戦も当たり前のようにあり、今週末の愛媛戦も中3日アウェイですし、大型連休中は4試合を中2〜3日でこなすことになります。11人の先発メンバーに疲労でパフォーマンスが落ちている選手が入るのも止むを得ない状況も普通にあるでしょうし、その選手を周囲の選手や監督がどうフォローするか、特に中盤全体を走り回る熊林と櫻田の二人が動けない時には、どう試合を組み立てるのかは、絶対に避けられない課題と思われます。
これはサブメンバーの奮起はもちろんとして、中6〜7日と中2〜3日の試合の運び方を多少なりとも変える必要があると考えます。先制点が獲れるまで、真っ白な灰になるまで攻撃一辺倒ではなく、全面的な攻勢に出る時間帯と、やや受け身で相手を前に釣りだしつつ、広くなるDFライン裏をシンプルに狙う時間帯があってもいいと思われますね。ただ試合の駆け引きをチーム全体で連動させていくまでの習熟はまだ難しいかもしれませんが。

2.FW都倉のハイボールポストからの展開が機能せず。(4試合全て)
→第3節以降、五分以上に持ち込めていない。また都倉の高さに拘りすぎて、戦い方の幅を狭くしている場面も。

熊本戦、福岡戦では予想以上に機能した都倉のハイボールポストプレーですが、第3節の横浜戦から簡単に競り勝てなくなり、素早いビルドアップの手段が一つ消えてしまいました。特に昨日の甲府戦や水戸戦で顕著でしたね。甲府はダニエルというJ2規格外のCBに再三阻まれましたし、水戸戦では水戸の「ゲージ」に囲まれて(これは後述)、ポストとして機能しませんでした。都倉がダメ、と云うことではなくより強いCBが都倉に充てられていることが考えられます。また昨季はファールばかりもらっていましたが、ここ数試合でもそうファールが増えていないので、都倉がハイボールポストとしてプレーが成長していると思えます。今後はフィールド中央より、ややサイドに流れてフィードを受ける形とか、まだまだ工夫はあると思います。
また「戦い方の幅を狭くしている」という点ですが、これは富山戦で先制された後(後半58分)、まだまだ時間はあったのですが、なぜか戦術を忘れたかのようにハイボール一辺倒になってしまい、都倉が交代出場すると(67分)、ますます都倉への放り込みに拘って、相手守備を容易にさせてしまいました。試合最終盤に通常のサイド攻撃に戻したほうがチャンスが多かったことからも、あまり有効でなかったことが判ります。繰り返しになりますがフィールド中央で、相手の複数マークを受けながらハイボールをポストするのは、都倉に限らずとても難しく(あのチカですら有効とはいえなかった)、サイドに流れるなり、都倉をオトリにして別の選手の前のスペースにボールを送るなり、工夫の仕方はあると思えます。

3.高めに位置する最終ラインのコントロール。(岐阜・富山・水戸戦)
→失点の印象はとても悪いが、トータルフットボールでのラインコントロールを含み攻性守備自体は機能している。主因は自陣でのボールロスト、不確実なパス回し。

岐阜戦・富山戦・水戸戦では、高い位置取りのDFライン裏を突かれて失点するという、応援するほうは脱力感満点な失点シーンが繰り返されています。この失点の仕方がまだ戦績が五分なのに、草津サポ全体をなんとなく意気消沈させている主因だと思っています。ブラジルではこのようなシーンを「マヌケな失点」とか云うそうですが、そのとおりですね。とても疲れます。
そんな中、昨日の甲府戦ではCB藤井が復帰し、FWマラニョンなどを実に9回もオフサイドに引っ掛けているのは朗報です。ただ「マヌケな失点」をした試合でも、ラインコントロール自体は悪くないんですよね。相手GKからのロングキック、DFのフィードで簡単に抜かれているわけではありません。これから判るように藤井にしろ、喜多にしろまずますラインの統率は出来ていると云っていいと思います。
またトータルフットボールの守備セオリーとして、アタッキング・ディフェンスがあります。これは自陣に引きつつ守備隊形をとるのではなく、MF陣・DF陣ともにボールホルダーにつめる前進守備の形です。この辺を踏まえていただいて、ちょっと詳しく動画つきで説明します。第6節の水戸戦、草津は守備の選手が前進してボールにつめるアタッキング・ディフェンス、水戸は4メン2ラインで守備ブロックをコンパクトに形成し、ボールホルダーを周囲からプレスする形です。
●ヤス 幻のGOAL

「ヤス、惜しいなあ」とも思いますが、草津・水戸それぞれの守備アプローチが窺える動画だと思います。草津のボール奪取が即攻撃へのパスとなり、また水戸がボールを失うと素早く陣形を修復して構える様はとても見ごたえあります。草津の守備のスタイルと、中盤とサイドから構築する攻撃のスタイルが表れている動画でもありますね。
またポゼッションの基本として「自陣では確実にボールをパスしながら前進。敵陣に入ってからはチャレンジのパスで攻撃」というのがあると思います。佐野監督も「自陣でボールを奪われてはいけない」と再三コメントしていますが(確か今年のイヤーブックとか)、これをミスすると途端に大ピンチになってしまいます。例として富山戦の動画、27秒からのプレーをご覧ください。
【2009 J2:第5節 カターレ富山 vs ザスパ草津

「田中テメェ!」、てなプレーですが、自陣でリスクがある長いボールを蹴る怖さですね。この時はまだゴール前に人数が揃っているのでペナエリア外でシュートを打たせて終わりに出来ましたが、高いラインを敷いている状態ではさらに危険度が増し、岐阜戦と富山戦で失点につながってしまいました。

FC岐阜 染矢一樹 J初ゴール 090326

ゴールキックの処理を無理に浮きダマで繋ごうとし、カウンターを警戒してサイドに流す展開もなし。*2逆に相手は足下にボールを収めて前進してきます。ここでボール処理にCB田中がラインブレイクしてボールに寄せていますが、これはアタッキング・ディフェンスのセオリーどおり。問題は相手にバウンドボールの処理で競り負けたこと、残っているDF陣がラインコントロールを迷ったスキを突かれていることです。ラインを上げるべきか下げるべきか。ボールを味方が持っているならアップ、相手が持っているならダウンですが、とても迷う局面です。ゴール自体は相手の染矢くんを褒めるしかなんですけど。

【2009 J2:第5節 カターレ富山 vs ザスパ草津

1分41秒からのプレーです。これもほぼ同様の失点シーンですね。CB喜多のラインブレイクによるボール寄せで、一度は跳ね返したのですが、このセカンドボールが相手の足下に行き、そこからDF裏を突かれてしまいます。このシーンもラインコントロールの判断をする時間が極めて少ない、難しい状況でした。
加えて岐阜戦でもそうですが、田中や喜多が前進する前に、いづれも松下が競り合いで負けてボールを相手にとられちゃっているんですよね。アンカーが抜かれ、ブレイクしたCBも抜かれているので、相当危険な状況です。ラインが高いからとかいうだけの失点ではないと判ります。
また繰り返しですが、相手のロングボール1本だけで失点してしまういう場面は今のところありません。ゴールを決められた岐阜の染矢と富山の朝日よりも、オフサイドトラップで封じた熊本の宇留野と木山、甲府のマラニュンのほうが、選手実績からすればより危険な相手でした。それでも彼らを封じられたのは彼らめがけて送られるロングフィードにはキチンと草津DF陣が対応したからに他ありません。*3自陣での相手の早いパス回しをラインコントロールだけで乗り切るのはとても困難で、どこでマンマークに移行するかの判断が、今後の守備力向上のカギと思われます。
繰り返しですが、自陣でのリスクあるパス回しを避けつつ前進を図ること、ポゼッションによるボールキープは攻撃はもちろん、守備も大きく助けます。昨季、守備がまずまずで失点が減ったことのはチームが長くボールを保持していたのが大きな要因だと思います。
今季はパス回しをより早く進めることを課題として取り組んでいるので、まだまだ速攻が拙攻になってしまい、ショートカウンターをくらう場面は多くでてしまうでしょうし、ロングボール1本のカウンターから失点してしまう場面も出てきてしまうと思います。しかも複数回。そういう場面に出くわしても、こういう失点の形は承知の上と割り切って応援していくのが精神衛生上よろしいと思います。そう腹を括っていないと心が折れちゃうと思います。
高いライン取りはチーム全体をコンパクトに保ち、アタッキング・ディフェンスによるプレスに効果をもたせ、中盤のプレー範囲を狭めて負担を軽減し、またゴール前に詰める人数を増やすメリットをとるために行われています。このメリットを生かすために今のプレースタイルを熟成していければ、高いライン取りのデメリットも軽減していくことになります。こういう考え方が、佐野監督の試合後のコメントで度々登場する「攻撃力の強化」という主旨の発言の真意だと思います。攻撃がうまくいけばいくほど、守備の負担が減る。佐野監督が攻撃だけに執着している訳ではないと考えます。いやもしかしたら、本当に佐野さんは攻めダルマな勝負師なのかもしれませんけど。

4.堅守速攻、カウンター志向チームへの対応。(岐阜・富山戦)
→昨季よりもゴール前で使える武器は増えている。攻撃もカウンター封じの守備も櫻田がキーマン。

過去3戦と違い、岐阜・富山はカウンター志向で臨んできました。特に岐阜は昨季途中からカウンター重視のチームではなく、今季もそう試合をしていただけに、うまく出し抜かれた形になってしまいました。こういう相手に対策をとる時間もない中2日、続いて中3日で連戦したのは痛かったですね。チームとして経験を積んでいくほかありません。
岐阜・富山戦、甲府戦もそうですが、ゴール前を固める相手を崩すのは容易ではありません。それでも今季の草津は1.5列目としてドリブルからシュートを放てるMF廣山、両サイドから中に切れ込んでシュートが打てる小池と佐田、都倉の高さと使える武器は増えています。島田のFKは失ってしまいましたが。ライン裏を突く高田と後藤もいますので、持っている武器を用いるパターンを増やしていければ、より効果的に攻撃が可能と思います。今までにない形といえば、廣山からのスルーパスペナルティエリアで受けて佐田、小池がシュートとか。06年に島田のスルーパスを受けた佐田がペナエリアに突入しゴールしたシーンが思い出されます。
相手の逆襲カウンター対策ですが、これはまあ草津が攻撃的なサッカーをしていく以上、戦術的に相性の良くない相手との永遠の課題です。振り返って昨季は、あまりカウンターをくらわなかった理由として、相手を押し込んだ展開でも秋葉・松下のドイスボランチが中央に位置して、カウンター発動の起点をつぶし、後方が数的不利にならないよう備えていたことが挙げられます。そのためにバイタルエリアにつめる中盤の選手が少なく、攻撃人数が足らないというデメリットも抱えていました。
今季は秋葉の代わりに櫻田がレギュラーを務めています。彼は秋葉よりも運動量を誇る選手ですので、攻撃参加するのか、カウンターに備えて中盤に留まるかの双方をこなせます。カウンター志向のチームとの勝敗は、櫻田の判断とプレーが決めるといっても過言ではないと思います。だから甲府戦でペナエリア、ゴール前まで突入した時は、ボールを外にはたかず、シュートして欲しかった。廣山はチームの求めどおり、1.5列目としてシュートを放つプレーを見せてくれていますが、全体的に見るとどの試合もシュート本数が少なく、まだ昨季からの課題は継続していると考えます。どうしてもボールを大事にまわしてしまうんでしょうね。
またカウンター志向のチームのプレスをかわし、相手をつり出して間延びさせるパスワークも必要になると思います。もちろん今でもDFラインの横パス、ボランチとDF陣でのポストプレーなどを行っていますが、これを行う時間が長く、多くなると考えられますので、サクちゃんがバックパスしてもその意図を感じて応援していきたいと思います。味方の攻撃のための下準備のバックパスですから。「そろそろ前に出せよ!」という時もあるんですけどね。

5.リードされた展開や終盤の攻勢など、局面が変わった場合の意思不統一(富山・水戸戦)
→失点後には大雑把な放り込みになりがち。相手の対策に嵌まるとなかなか修正できず、同じミスを繰り返してしまう。
6.選手交代の時間帯と、交代選手のチームフィットの希薄さ(4試合全て)
疲労著しく機能していない中盤の選手交代の遅さが結果として敗因になってしまった。また交代選手は主に攻撃要員として投入されているが、「ゴール前に飛び込む係の人」以上の働きを見せていない。それぞれの特徴を活かした攻撃になっておらず、まだまだレギュラーもサブも互いを活かしていない。

5と6は関係が深いので並べました。繰り返しになりますが富山戦の失点後は、まだ20分以上もあるのに、今までのサッカーを諦めるような放り込みばかりになってしまい、貴重な時間を費やしてしまいました。ボールをつながずに放り込むため、相手の逆撃の回数ばかり増えて、後半は相手ばかりにシュートを打たせてしまう、攻撃的なサッカーの一番ダメな部分が出てしまいましたね。
また連戦の疲労から回復していない熊林のパフォーマンスは、前半だけで交代したほうがいいくらいの出来でしたが、交代が遅れたため、相手の突破をらしからぬプレーで許してしまい、櫻田の尻拭いのようなファールをよんでしまいました。2つ上の動画、富山戦のハイライト2分8秒からです。熊林を中々交代させられなかったのは、彼の代わりをほぼ務められる選手がいないことを示しており、止むを得ない部分もあります。繰り返しですが、今シーズン、同じようなことを何度も繰り返さないためには、熊林の代役の確立が必須だと思われます。
続く水戸戦では、相手の4−4−2のコンパクトプレス隊形の注文どおりに嵌まり、4メン2ラインの8人が形成した「囲い」の真ん中で都倉にハイボールポストプレーを要求したり、最初から囲まれているような状態の熊林や松下にボールを預けて簡単に奪わせてしまうなど、まだまだ当初のプランが崩れた時の対応、「プランB」が足らず、臨機応変な戦い方が出来ていません。ただこれはチームとして様々な相手と対戦して、経験値を得ていくことで鍛えられるでしょうから、まだまだ時間が必要と思われます。
既に紹介しています「ヤス 幻のGOAL」の動画でも、水戸の守備隊形と戦い方が窺えますが、個々の距離の正確な維持と崩れた隊形の修復スピード、担当ブロックでのボール奪取へ移行するタイミングなど、とても素晴らしく鍛え練られていると思いました。
目新しい戦術ではありませんが、FW2人が後方8人の作る「囲い」に相手のパスを誘導するようにチェック&プレスを仕掛け、2ライン8人のブロックの中でボールを奪う。「囲い」はとてもコンパクトに形成され、フィールドの横幅約3分の2くらいに圧縮し、縦もラインが高く保たれ、草津を自陣に押し込んだ時など最終ラインはハーフウェーラインすら越えて位置していました。
逆にいえば「囲い」の外(DFライン裏と逆サイド)には広大なスペースがあるわけで、ここを活かせればよかったのですが、前述のとおり、都倉のハイボールと熊林のパスワークに拘り、「囲い」の中で悪戦苦闘してしまいました。都倉のハイボールを後ろに逸らせてFWがDFライン裏を突くとか、大きいサイドチェンジを繰りかえし、「囲い」を形成する8人を左右に走らせ続けつづけて、綻びを作らせるとか色々考えられます。今の草津はあれこれ求めても実行できる力はると思っています。現にこの試合、草津は2得点を挙げるわけですが、どちらも「囲い」を破る2つの方法、それぞれを実践しているんですよね。1つには「1対1で勝負に勝ち、囲いを破る」、もう1つは「囲いの外のスペースを突く」です。
♪奪え?GOAL?! とっくら?GOAL???!!

1点目は、小池が前進したエリアでボールを受けて、水戸の第2列・MFラインで勝負せずに1人かわして突破。SBと1対1に持ち込み、これを抜きます。そしてSBとCBに詰められますが、この2人のマークを受けながらもゴール前にクロス。これで小池は1人で3人引き付けたことになり、草津の数的優位をサポートします。ゴール前では水戸のDF陣がスライドして高田・都倉をマークしますが、SBの寄せがやや遅く、都倉がゴールを決めました。草津はさらにもう1枚、廣山がフリーで待ち構えているわけですから、囲いを個人技で突破すると数的優位がつくれる典型的な得点シーンになりました。
2点目は、もちろん都倉の頑張りが大きいのですが、高めに位置するDFライン裏、DFが処理しにくい微妙な位置を突いた形になっています。結果的にですけどね。試合後に水戸のCB大和田が処理ミスを反省するコメントをしていますが、水戸の本間GKは「簡単に跳ね返されるようなゴールキックを蹴ってしまった自分の責任」という主旨のコメントをしています。やはり突かれてはいけないところを突かせてしまった、ということだと思います。
特に2点目は偶然性が高い得点機でしたが、1点目は草津のやり方で相手を崩し、得点している素晴らしいシーンです。サイドからのクロスにペナエリアでニア・センター・ファーに分かれて3人も飛び込むなんてのは間違いなく練習の成果ですよ。今まで中々見られなかったし。引き分けの試合でしたが、そう気落ちするものでもないと思っています。
ただ同点に追いついた後に、山崎・玉乃と投入され、追加点を狙いますがタイムアップ。交代要員が投入されると、攻撃がゴール前への放り込みに偏ってしまっていました。期待の新戦力である玉乃らしさはこの試合でも第7節甲府戦の途中交代でも、ほとんど発揮されず、また周囲も活かせませんでしたね。サブメンバーが今季のレギュラーとまだまだフィットしていない表れであると思います。また終盤に投入される攻撃要員が、玉乃・山崎・後藤が現在の形ですが、これは大きく分けると似たようなタイプ(高さではなくスピードを活かす、くらいの大雑把な区分だけですが)になってしまい、放り込みに強いわけでもないんですよね。FW氏原の復帰が待たれます。

また前述で「熊林の代役の確立が必須」と記しましたが、これは玉乃なのか? というと、違うと思います。やはり優先順位は山崎渡でしょうね。これは水戸戦で左SHの位置に後藤が入った試合を見て、強く感じました。左SBをFWコンバートの小池が務める限り、相手の狙い目でありますし、サイド攻撃はどのチームも多かれ少なかれ組み立ててきます。小池の前に位置するSHは守備も大事な仕事です。だから熊林は走り回るのですけど。
水戸戦で代役に入った後藤はその攻撃力を意図して配置されましたが、どうしても守備に戻る時間が多く、また小池とのコンビネーションが希薄で、パスミスや守備の受け渡しで齟齬が目立ちました。それでも頑張って守備をしていましたが、それは後藤に求められているものではないんですよね。攻撃力のアップといえば聞こえはいいですが、裏をかえせば守備に弱い配置でもあるわけで、その攻撃力を発揮しないまま守備に追われてしまいました。ですので左SHに玉乃を入れても、後藤と同じことになる可能性が高いと考えられます。玉乃の良さを出す前に、守備ばかりでも勿体無い戦力ですね。試合終盤の限定時間ならともかく、先発で玉乃なり後藤なりをSHで起用する場合は、ボランチ櫻田の攻め上がりを減らして小池のエリアのカバーを優先させるなり、必ず対処法が必要といえるでしょう。
ただ山崎なら、そのままでいいんですよね。彼は攻撃でも守備でも強力な武器(売り)がある要員ではありませんが、全体のバランスを考えて万能接着剤のようにチームバランスをとれる、ちょっと得がたい選手です。流れを変えるようなインパクトプレーヤーではないので、物足りなさを感じるときはどうしてもありますが、中盤全体のサブということでは、やはりベンチに座っておいてもらいたい存在であると考えます。甲府戦であのシュートを決めといてくれれば、なお良かったのですが。

1分3敗で終えた4試合を振り返りましたが、セットプレーの脆さはともかく、3連勝中が強くて、その後に急に弱くなったわけではないことが分かります。3連勝中は、幸い自分達の戦い方で勝てましたが、今の戦い方までは厄介なカウンター志向の相手と連戦して、疲労も抜けず修正もままならないまま連敗。そして水戸・甲府という調子の良いチームと連戦。勝ち点1では物足りないのは確かですが、若いチームの序盤らしい状況であるとも思えます。

なかなか勝てない中、佐野監督が「攻撃を追求して守備をおろそかにしている、現実より理想を追っている」というような論調がありますが、ここ4試合の失点シーンを振り返ると、守備云々より攻撃の機能不全が、失点に繋がっていることがわかります。これも繰り返しですが、佐野監督はチームの習熟、攻撃を整備することが同時に守備を助けることを意図して、攻撃の強化をコメントされていると思えます。決して理想だけをおっているのではなく、現実を見据えたチームつくりを進めていると考えます。レギュラーにサブを含めたチームの習熟はまだまだこれからです。従来の戦い方に、状況による「プランB」が増えることを期待したいです。
それまでは、本汗かき役の熊林・櫻田・松下と高田に、そしてGK本田に「相手と1対1なんだけど止めてください!」ってところですかね。本田ガンバレ。

*1:寺田・山崎・佐田・後藤・櫻田・岩丸、そして御給で全員かな?

*2:ド真ん中でボールを持たれるよりマシ、という意味

*3:カターレ富山朝日大輔には、JFL時代のYKK APとの2試合それぞれでゴールを決められているので、これで3試合連続失点になりました。そういう部分では徳島のFW石田と同様に、草津にとってモストデンジャラスな選手です。