2003年劇場鑑賞映画ベストワン。

右がレオン、左がラウ。

なんで今ごろこんなことを書くかと云うと、そのベストワン映画「インファナル・アフェア*1をDVDで再鑑賞し、やはり魅力的な作品であったため。その感想と雑感を記録しておく。作品の基本データとあらすじは以下の通り。

インファナル・アフェア (2002/香港/102分)
http://www.infernal.jp/
製作:アンドリュー・ラウ
監督:アンドリュー・ラウアラン・マック
脚本:アラン・マックフェリックス・チョン
出演:アンディ・ラウトニー・レオンアンソニー・ウォンエリック・ツァン/ サミー・チェン/ケリー・チャン
コピー:男には決断すべき時がある。心に秘める愛がある。
●あらすじ
舞台は現代の香港。警察学校時代に優れた能力を見込まれたヤン(トニー・レオン)は、潜入捜査官として活動して10年。警察官としての矜持とマフィアにその身を置くギャップに苦しむ日々を送っていた。一方、マフィアから警察に送り込まれたラウ(アンディ・ラウ)も警察情報をマフィアに流しながら、能力の高さから目覚しい昇進をとげていた。そして今ヤンが潜入しているマフィアの麻薬取引の情報を警察に報告。そのマフィアはラウが本来所属している組織であった・・・。香港警察、マフィア、潜入捜査官、マフィアのスパイでの四つ巴の駆け引きの幕が開ける。

出演陣がみな、既に名声を得ている実力派で固められていることや、鮮やかな空と海の青い美しさと都市としての無機質な黒のコントラストなど、クールで突き放した厳しさを映像で見せる技量が作品の価値をあげている。が、この作品の本当の魅力は優れた脚本にある。
元来、警察対犯罪組織の図式だけでも緊張感があるが、互いの組織にスパイがいることから生まれる駆け引き、そのスパイたちの正体がいつばれるのかという緊迫感などが、物語を102分間まったく飽きさせないものにしている。また数々の伏線が後半に収束していく様、組織と組織、それを超える誇り高きプロとしての男の闘いなど「香港映画ここまできたか!」と驚きと悔しさを感じた。*2
そして、70年代スパイ小説からの系譜「スパイを普通の人間として捉え、彼らゆえの苦しみと孤独」を見事に描き、その心情を長セリフで延々説明させる愚を犯さず、それにふさわしい舞台で一言で云わせている。
ビル屋上の対決でマフィアのスパイたるラウに「潜入捜査官は屋上が好きなのか」と軽口を叩かれたヤンは、香港のビル群を背景に青い空の下でこう答える。

「太陽に恥じることを俺はしていない」

同じスパイだが俺とお前はちがうのだ、という強烈なメッセージであり、潜入捜査官として孤独に生きてきた彼を、10年間支えてきた言葉なのだ。このワンシーンだけでもこの映画を観た甲斐があった。
果たして彼らの決着は。アジア映画などがイマイチ肌に合わない方にもオススメの一本です。

*1:原題「無間道」。こちらのほうが作品の本質を表現しているだろう。

*2:別段、金のかかっている映画ではない。充分日本でも出来るサイズの映画だから悔しいのかも。ハリウッドがブラッド・ピット主演でリメイク権も買うのも納得。