ラスト・プレゼント、この女優なくしては。

この映画で主演女優賞。

感想を残しておこうと思った映画シリーズ、その3。

ラスト・プレゼント(2001/韓国/112分)
http://www.seochon.net/lastpresent/
監督:オ・ギファン
脚本:パク・チョンウ
音楽:チョ・ソンウ
出演:イ・ヨンエイ・ジョンジェ
コピー:あなたは 世界が私にくれた 最高のプレゼント!

●あらすじ
才能はあるがなかなか売れないコメディアンのヨンギ(イ・ジョンジェ)と、成功を信じて彼を支える妻ジョンヨン(イ・ヨンエ)。しかしやる気を見せないヨンギに、ジョンヨンはどうしても苛立ち口喧嘩をしてしまう毎日だった。そんなある日、偶然にも妻が不治の病に犯されていることを知ったヨンギ。それでも素直になれない二人は同じような日々を送りながらも、相手を思いやり時間を使ってゆく。バラエティ番組「お笑い王トーナメント」への出場で実力を認められ人気も上昇するヨンギだったが、ジョンヨンに残された時間はあまりに短かった・・・。

余命いくばくもない妻のために、というありふれた筋書きの「お涙モノ」でありながら、妻の生涯の片想いの相手をさがす流れと、ケンカをしながらもお互いを思いやって日々を過ごしている主人公の二人がかもしだす「優しさと切なさ」と要所に組み込まれる「過去の想い出」が、この重いテーマをさらりとうまく進めていく。韓国映画はこういうテーマを真っ向勝負で作るのは本当にウマイ。

厳密に云えば、脚本と設定に「現実的にはどうよ」という首を傾げる粗さもあるが、ヨンギ役で幅広く役をこなすイ・ジョンジェはもちろん、妻ジョンヨン役のイ・ヨンエの自然な演技が映画全体を支えている。と云うか彼女の説得力ある演技なくして、この映画は成立しない。そう云えるほど台詞なしで観客に自らの意図を伝えねばならない、死別という悲しいテーマを扱いながらも映画鑑賞後には爽やかさを残す、のが彼女のラストシーンなのだ。

1人の女優の演技が全て。そしてその要求に満点で答えられるイ・ヨンエの実力はおそるべし。*1

*1:夫役のイ・ジョンジェも妻の病気を知らされ、理解するまでの表情の変化など秀逸である。こういう心象風景をメインテーマにした作品は実力ある演技者を必要とする、という好例だろう。