JFL後期第3節、キーパーズ・ハイ?

グッジョブ!!

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群馬FCホリコシ 1−0 ホンダFC
(7月18日14:00/群馬県前橋市敷島公園陸上競技場/331人)
群馬FCホリコシスタメン:サブ
−−−森−−−町田−−−:ダニロ
−藏川−−−−−−奈良−:阿部
−−−羽山−−山田−−−:大谷
神田−三本菅−小川−小山:深田
−−−−−井坂−−−−−:道本

ホンダFCスタメン
−−−鈴木−−新田−−−:
−川崎−−−−−−宇留野:
−−−柴田−−増田−−−:
−−−−−川島−−−−−:
−石井−−向島−−安部−:
−−−−−川口−−−−−:

●得点経過
29分:森陽一(群馬)

18日の日曜日は、群馬FCホリコシ戦の観戦へ。後期に入り調子の落としているホンダFCは、前節に最下位SC鳥取に敗北し、3位のザスパ草津とは勝ち点差が1まで縮まっている。この試合と19日のデンソーザスパ草津戦の結果次第では、ザスパ草津の2位浮上も十分ありえる。そんな魂胆も抱えつつ、群馬FCの応援スタジアム入りは午後1時ちょうど。同じような考えか、普段着観戦のザスパサポがちらほら。もしくは「週末のサッカー観戦がないと寂しいのです」なのか。自分も半分以上そうなのだが。やたらと攻撃志向の両チームの対戦は、ザスパサポの立場を離れても見てみたいカードだしね。前売りチケットは全席800円なのもグッド。

さて、スタメンとフォーメーションは上記のとおりでキックオフ。ホンダは左SH川崎*1と、中央と右サイドからゲームを組み立てるMF宇留野の両名によるサイド攻撃をメインに主導権を握る。キープ力で中盤を支配するでもなく、中盤をとばしてしまうのでもなく、ダイレクトパスの連続でボールあっという間に前線に運んで、結果的に相手MFを無力化している。こういうスタイルもあるのだ、とひとしきり感心。

試合開始から頻繁に群馬FCの右サイドコーナー目掛け、すっとんでくる川崎のケアに必死な群馬FC。川崎のスピードが、ホンダ自慢の中盤のダイレクトパスの展開でさらに加速されていて、マーク役の奈良が追いつけず。本来SBとして機能したい小山がディフェンス専念になってしまい、群馬FCの展開が遅くなる。せっかくの赤城颪がフォローだと云うのに。

ホンダFCの、DFラインから始まるダイレクトパスの連続で両サイドに進入し、中央で待つFW2人にクロスを上げる必殺の攻撃パターンは美しさすら感じる。チーム全員が明確な意図を持ってゴールに向かう様を見るのは、サッカー観戦の楽しさの一つだと思う。

また、そんな時に相手チームの対応の妙を見るのも、同じく観戦の楽しさ。群馬FCの池田監督*2は川崎のマンマーカーにトップに張っていた町田を指示。奈良とポジションを入れ替える。

スピードあるFW町田のマークで川崎の自由を奪うと、下がり気味になっていた小山の攻撃的SBの特性が生きてくる。12分、22分とゴール前に精度の高いクロスを上げ、18分には自らシュートまで持ち込んだ。群馬FCの右サイドからの攻撃で川崎に守備を強い、その上がりを封じ込めてゆく。ザスパ戦でも感じたが、池田監督は試合中のアジャストに優れた監督と思う。

しかし、ホンダも宇留野を中心に攻撃の手を休めず、今度は群馬FCの左サイドに宇留野が進入、クロスの雨を降らせる。群馬FCのDF陣と守備的MFの山田と羽山がなんとか競り合いに勝ってシュートまで持ち込ませない。群馬FCはこの競り合いに勝つことに全神経を集中している。安易にボール奪取にいかずに最後の場面で競り合いに負けず、失点を防ごうと意図してプレーしているように見える。ホンダの華麗なサイド攻撃の連続の裏には、中央でボールを受けて危険なミドルを放ったFW古橋のセレッソ大阪への移籍という事情もある。その点を踏まえて池田監督が指示しているのだろうか。

しかし、ただホンダの猛攻をはじき返すだけでは埒が開かない。埒を開けるために群馬FCは宇留野に自由に使われているバイタルエリアボランチ山田を上げてパスコースを減らし、攻撃を遅らせる作戦に切り替える。これが奏功し、ホンダが押し込みながらもやや攻めあぐねる形の前半30分、ホンダのバックパスをFW森がセンターサークル付近でインターセプト。この時、森とホンダGK川口の間には、広大なスペースとDF二人だけがあった。

これが絶好の得点機であることは誰の目にも明らか。森はゴール目掛けて猛然とドリブルを開始する。その左にフォローの奈良も駆け上がる。左右から殺到するDFをかわすべく、奈良とのワンツーを決める森。この成功で左右に挟むDF二人は前方からのチェックではなく、やや後方から追う形になった。必死に戻ったホンダの選手も追撃に加わり、森の左右と後ろは完全に塞がれた。GK川口も果敢に飛び出しシュートコースを消しにかかる。シュートしかなくなった森だが、飛び出した川口の脇を抜く押さえ気味のグラウンドのシュート、これを見事にゴールに流しこむ。この局面であっても冷静なプレーで強豪ホンダFCから値千金の先制点を挙げた。*3その後の15分間はなんとか一進一退の展開に持ち込み、群馬FC1点リードでハーフタイムに。ザスパサポからも「群馬FC、やるなぁ」の声が上がる。次の群馬ダービーも天気同様、熱戦となりそうだ。

後半、赤城颪はホンダにフォローの風となり、1点ビハインドの状況もありホンダの猛攻が予想されたが、群馬FCが開始3分で得点機をつかむ。ややハーフカウンター気味にボールを奪取し、これをゴール前30メートル付近でのFKにつなげる。キッカー藏川は、ゴール向かって左上スミを狙う完璧なキックを蹴り2点目を確信させるが、GK川口の会心のセーブに阻まれる。このプレーでホンダは勢いづいたか、その2分後にホンダMF宇留野がミドルシュートを枠に飛ばすも、これは群馬FCのGK井坂が好判断でクリア。この好プレーが最終盤の井坂熱血劇場の幕開けとは、まだ誰も知る由がなかった。

ホンダの攻撃が続く後半16分、ついに群馬FCのDFラインが完璧な形で崩されゴールを決められるが、これはオフサイドの判断で命拾い。池田監督は前線のFW陣にプレスのサボリがあると、激を飛ばす。前半から執拗にチェックにいっていた森と奈良だったが、たしかにこの時間帯は少しチェックが甘かった。強豪相手の緩いプレーは致命傷につながりかねない。群馬FCは命拾いから気を取り直して守備にあたるが、ホンダ両サイド攻撃の猛攻を耐える時間がつづく。DMFの二人もDFラインと共にサイドからのクロスのケアに手一杯で、リフレクトのセカンドボールがことごとくホンダに拾われる。森や奈良もチェックにいくのだが、ホンダの球離れが早く追いつかない。

失点必死の流れが意外な形で断ち切られた。後半21分にホンダは疲れの見えるFW新田に変えて鈴木を、SH川崎に変えて吉村を投入。この同時二人交代がホンダのダイレクトプレーに微妙に影を落とし、目に見えて展開スピードが落ちた。中盤での動きが遅くなれば、群馬FCにもつけ入るスキが生まれる。DMFの山田と羽山が判断良くパスをカット、中央と左サイドでボールをキープできる藏川にボールを預ける。群馬FC右サイドから度々危険なクロスを上げていた川崎は退き、交代した吉村はなぜか下がり目。左サイドに進入する宇留野には、タメを作れる藏川がその攻撃を遅らせ、逆に群馬FCのカウンターを演出する。*4

これで、なんとかカウンター攻撃の形を作れてきた群馬FCに対して、31分にホンダDF安部がファール。これが本日2枚目となる痛恨のイエローで退場、ホンダは10人で戦う厳しい展開を強いられる。群馬FCの池田監督はこれを見て、奈良に代えてカウンター要員だろう快速FWダニロと、川崎のマークで疲労した町田に代えてMF深田を投入する。対するホンダの安間監督は、1枚欠けて今や2バックとなったDFはそのままで、DMF柴田を下げて田坂をOMFを投入「残り10分、前のめり全力攻撃」を指令。選手は云われるでもなくやる気まんまんだったのもスゴかった。

10人のホンダが疲労をどこかに置き忘れたかのような波状攻撃を仕掛ける中、群馬FCのGK井坂は、自らの好セーブ連発でテンションが上がっているのか、味方のバックパスを前方ではなく、なぜか無造作にサイドに蹴り出しホンダにスローインを与えたりしている。「お前ら、シュート撃ってこいや、全部止めたる!」な雰囲気はどうやら本気らしい。

42分に、ついにラインの裏に飛び出たFWとGK井坂が一対一、この試合最大のピンチが訪れる。この局面で井坂が足どころか体ごと投げ出してシュートをブロックし、なんとかボールを確保する。この時の接触プレーで痛がる井坂、駆け寄る味方と主審。時間帯と状況から見て井坂の時間稼ぎもあるだろう、と思われた途端に井坂はスクッと立ち上がり、審判に先のプレーの危険さを少し抗議、そして味方に「上がれ」とジェスチャーした後、一切のタメも時間稼ぎもなくゴールキックを蹴る! スタンドからは「井坂、落ち着け〜!」「少しは時間を使え〜」の声と笑い。

群馬FCの選手にも動揺があるのか、ボールはあっという間にホンダがキープして豪快なミドルシュートがゴールを襲う。これをジャンプ一番かき出した井坂は、つづくCKもダイビングキャッチして、味方に「上がれ」のジャスチャーの後、早々にボールを蹴る!! 「井坂、頼むから本当に落ち着いてくれ〜!」「ホンダ相手のキーパー練習はヤバイって〜!!」の声がスタンドから巻き起こる。

この熱血井坂のキーパーズ・ハイ劇場は、スタンドの哀願も空しく、また「1点差・強豪ホンダ相手の勝ち点3・残り時間ロスタイムのみ」の状況すら省みず続けられたが、井坂はこの後も好セーブを連発してゴールを割らせなかった。これは奇跡か絶好調GKの確信か。最後は「ならば我らが時間稼ぎをせねば」と藏川、ダニロ、森がなんとかコーナーでのボールキープで時間を使い、試合終了。強豪ホンダ相手に貴重な勝ち点3、この後にデンソー戦で勝利したザスパ草津の2位浮上を影ながらアシストしてくれた。ホンダFCはチーム記録の「勝利が3節連続なし」を「4節」に更新、また実に2年ぶりとなる連敗を喫した。逆にホンダが強豪であることを示すデータだろう。FW古橋の抜けた穴をどう埋めるか、とかも実際に見て感じたが、引き上げてくる井坂の「おれ、やりつくしました」感のある爽やかな笑顔が印象に残るゲームでした。

*1:もしかして日本一俊足の背番号2? 脅威のスタミナとスピード。

*2:ガンバ大阪サテライト監督、日本女子代表監督などを務めていた。

*3:ゴール後に指輪キスのセレブレーション→「おっと、オレ指輪してねーじゃん」パフォーマンス付き。横浜FM出身の森は動き出しの妙とその細い体躯からは想像できないほどのスタミナを有する快速FWである。JFLではもったいない選手の一人であるのだが。次の群馬ダービーでは、その前日あたりに急にお腹が痛くなったりしてくれないだろうか。

*4:ザスパ草津もこれと同様、ホンダ宇留野のサイド攻撃にはMF後藤大輔山口貴之のキープ力&攻撃展開力で応じ、サイド攻撃の威力を半減させていた。