「熊本から目指せJ」地元紙のフォーラムテーマに。

SH772004-11-11

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「熊本から目指せJ」が地元紙の熊本日日新聞フォーラムテーマに選ばれ、テーマを3つに分けて意見が交わされた模様。フォーラム委員としてJリーグチェアマン鈴木昌氏も参加している。注目部分を抜粋、コメントをつけてアップ。
http://kumanichi.com/feature/ku_forum/index.html

●テーマ1:なぜ今、立ち上げか
荒木時彌氏:熊本にプロチームをつくる動きは以前にもあったが、広がりを見せないまま立ち消えた。今回は、熊本に元気を願う民間有志の人たちから広まった。熊本の活性化につながる地域と一体になった県民クラブをつくるため、行政、企業を含む県民の幅広い支持を得て、県民運動推進本部とクラブの運営会社の二本立てで盛り上げる「熊本方式」で始めた。Jリーグ昇格への道は厳しいが先進クラブの良い点を取り入れ、最後となるチャンスをぜひ生かしたい。

荒木氏は「熊本にJリーグチームを」県民運動本部副本部長。以前にも「目指せJ」の動きはあったが、具体化までは進まなかったことに触れ、「これが最後のチャンス」と意気込みはかなりのもの。

古荘善啓氏:熊本でプロサッカーチームをつくる動きを初めて聞いた時は正直、「何を今さら。大丈夫か?」と感じた。その思いは実に熊本の県民性そのもの。熊本は革新的なものをやらない。それだけに、やることに意味がある。熊本が元気を出し、現在の閉塞(へいそく)感を破ることができるかもしれない。またサッカーは国際的な広がりを見せる。韓国でこの動きを話したら評判が良かった。海外で熊本を認めてもらう有効策ともなるだろう。

古荘氏は熊本商工会議所副会頭。「何を今さら」と思われたそうで。やはり、一度運動が立ち消えてしまったと云う事実は、周囲の人々にそのような感想を持たせてしまう、という実例だろう。JFLクラブが消滅してしまったり移転してしまったりした地域では、状況が変わり再び気運が盛り上がるのに約10年が必要らしい。「何をいまさら」「前もダメだったじゃないか」「ここではサッカーは無理だった」という地域の思い(不成功だったというイヤな記憶)を消すには、長い時間が必要ということだろう。
手前味噌ながら、ザスパ草津のホームである群馬県も決して革新意識の高い地域ではないし、むしろ保守的な土地柄だ。しかし保守的な地域だろうが「目指せJ」には人々をスタジアムに足を運ばせる魅力がある。
その魅力とは、プロジェクトの本気度とチームの好成績が周囲にアピールする「夢と期待の前進」。「なかなかやるじゃないか、面白くなってきた」「Jリーグにいけそうだ」という多くの人々の思いが、保守的な土地柄だろうと、人々を動かすのだと思う。

鈴木昌氏:私も鹿島アントラーズに携わった。新潟もそうだが、初めは観客十人だったが辛抱強くやってきた。「うちの県では…(難しい)」と否定から始まるのは全国どこでも同じ。サポーターが増え出すと全員が与党になる。サッカーの持つ独特の影響力は地域の活性化へプラスになる。新潟も大分も北海道も、住民がサッカーの持つ不思議な魔力でつながっている。

「サポーターが増え出すと全員が与党になる」。サポーターは当然ホームタウンの住民が主となる。サッカーのゲームは、その地域での「楽しい定期イベント=お祭り」の一面を持ち、スポーツ独特の興奮と熱狂がある。加えて、その地域を代表して戦っているのである。「おらが町のクラブを応援しよう」はもちろん地域住民の共通認識になるし、はっきりとした数字が出る観客動員は行政を動かす「世論」にもなる。それが「与党」ということだろう。

鈴木氏:百試合以上ある野球と違い、サッカーのホームゲームは二週間に一度。だから祭りを続けている気分になれる。

毎日だと日常化しすぎて盛り上がりが薄れる。しかし日程が空きすぎると冷めてしまう。2週間でホーム1試合という周期が、サッカーのお祭り感の基なのか。ザスパ草津は今、このお祭りの只中にあるとも云えるのだろう。テーマは「今後の課題」に移行する。

●テーマ2:課題
―チーム作りから組織体制、県民の盛り上がりなど課題も多い。
荒木氏:まずは県民の幅広い理解が欠かせない。そのために後援会組織を立ち上げて、一人でも多くの県民に協力をお願いする必要がある。県内の各地域サッカー協会の力は不可欠。県民の共感を得るのに、サッカーを核にした地域づくりの理念を浸透させるのも必要だろう。他のスポーツ種目も含めたクラブの創設も視野に入れ、全県民の運動に発展させていきたい。スタジアムや練習場は熊本市や周辺に充実しているので心配していないが。

J1のゲームすら開催できるKKウイングを既に持ち、また先の日韓W杯ではベルギーのキャンプ地にもなっている。さらに遡ればかつての横浜フリューゲルスの準ホームタウンでもあり、㏍ウイングの他にも荒木氏の言どおり、ハード面は十分すぎるほどである。決してプロサッカーに縁遠い地域ではないのだ。だからこそソフト面である魅力的な新クラブ設立と地域住民の関心さえ高まれば、とも思える。

古荘氏:経済的な観点から言うと、熊本の経済力でチームを支えられるのか、心配だ。支援する企業側としては現状や今後の展開が見えにくい点もある。動き始めたら軌道に乗るのは早いのかもしれないが、企業メリットが不透明な中で離陸に必要な力をどう生み出していくかを探っていく必要があるだろう。

「企業メリットが不透明な中で離陸に必要な力をどう生み出していくか」とは、知名度・認知度の低い初期段階でもスポンサーになってくれる企業・団体の獲得だろう。知名度・認知度の向上がさらにサポとスポンサーを呼ぶが、まさに先立つものは必要である。県の経済界のバックアップは不可欠としても、県外からもスポンサーを集めることも重要。知名度・認知度の向上、という点で地域マスメディアでの露出も考えたい。「熊本から目指せJ」には熊本日日新聞社も関わっているので、その点の不安はないが。

井氏:熊本は温暖な気候、また歴史的観点から武道をはじめスポーツ全般が盛んで競技人口も多く、サッカーだけに関心が高い人たちばかりではない。他の競技団体と連携しながら盛り上げていく機運を育まなくてはならない。総合型地域スポーツクラブが来年度末までに県内に四十近くでき、約二万人が会員になる予定だ。そのうち約九割にサッカーチームがある。少子化と不況で企業スポーツが行き詰まっている現状で、サッカーを核にした地域クラブの力を生かすことが突破口につながると思う。

井氏は熊本県体育協会副会長。「総合型地域スポーツクラブが来年度末までに県内に四十近くでき、約二万人が会員になる予定だ」って、簡単に述べられたがスゴイ計画が進行中です熊本県。確かに「目指せJ」が地域クラブに貢献できることは多そう。

―実際にチーム運営に携わっている立場から意見を聞かせてほしい。
中野氏:計画をきちんと立てることがまずは重要。運営資金が三億円でも五億円でもチームはできるが、大切なのは身の丈にあった経営を目指すこと。根拠のない資金を当てにするのはよくないし、無理をしても結局は行き詰まってしまう。経験的に言えば、行政との連携は時間がかかる。他の競技とのバランスで、サッカーだけを支援するのには当初、抵抗もあるだろう。施設使用で優遇してもらったりスタジアムとの交通アクセスで協力してもらうなど、間接的にサポートしてもらう方が現実的ではないか。

中野氏はアルビレックス新潟のゼネラルマネージャー。「サッカーは勝負事ゆえ勝敗は常だが、大バクチは打つな」かな。しっかりしたプランとリスクマネージメントを見て、安心するスポンサーもあるだろうし。新たなスポンサーを獲得する要因ともなる。また「行政との連携には時間がかかる」と苦労話も。徳島や愛媛の長年の苦労を見るとき、今年の群馬県行政のフットワークの軽さはかなり有難いことだと判る。

丸野氏:私のリサーチでは、熊本でのJチーム運動は若い人にはあまり知られていない。しかし関心は非常に高くて、県民運動に発展しそうな素地はあると思う。機運を盛り上げるにはさらに県民へのリサーチをした上で、若い人たちにも分かりやすいようにチームの姿や運営に関するビジョンを示し、広く市民に情報を提供する必要があるのではないか。

丸野氏は編集プロダクション社長で県総合計画推進委員。認知度向上には情報提供の場所と機会の増加は絶対に必要だけど、この運動自体が地元メディアである熊本日日新聞の肝入りなだけに「好意的な地元メディア」というザスパ草津の地域住民への認知度向上に大きく寄与してくれた要素は熊本にもある。まだ運動自体のアピールの段階だが、予定では今月から監督決定や選手選考など、チームの具体的な姿が見え出すので話題やニュースも多くなる。そうなれば今まで以上にテレビやラジオへの露出も期待出来る。

課題はいくつか出されたものの、熊本の「目指せJ」の課題は地域住民へのアピールくらい(一番、大事で難しい事だけど)。来季、九州リーグからまずはJFLを目指す新クラブが勝ち進むのが、なにより効果的だが。やはり推進のポイントとして、次のテーマで語られている。

●テーマ3:推進のポイント
―いくつかの課題が明らかになった。これらをどう克服していくか。
荒木氏:チームをつくるからには、県民の関心を持続させることが肝心。そのためには試合である程度、いい成績を残さなければならない。魅力あるチームをつくることも必要だろう。その一つが、チームに県出身選手がいて、活躍してくれること。幸いにも、熊本はJリーグで活躍している選手も多い。将来、Jリーガーを夢見ている大学生、高校生もたくさんいる。

地元出身選手はたしかに魅力の一つ。熊本県出身で現役Jリーガーだと、FC東京の土肥やジェフ市原の巻などか。

井氏:先日も「熊本にJリーグチームを」という新聞広告が出たが、広報、PRが重要。監督の決定あたりは大きなチャンスだ。分かりやすく姿が見えてくるよう、戦略的工夫が求められる。少年のサッカー熱の高まりの中で、地域密着型のJリーガーによるサッカー教室の開催など、有効な企画に期待したい。

地域密着のサッカー教室などは、新クラブの母体になるアルエット熊本も行っていたはず。アルエットの今までの活動と繋がりを活かす形にしてもらいたい。

丸野氏:どこのスタジアムも、駐車場不足は頭の痛い問題。そこを解決できれば、他の地域との差別化が図られる。そこで、個人的な考えだが、郊外のショッピングセンター数カ所に車を置いて、シャトルバスを出す、というのはどうだろうか。パークアンドライドの「パーク」の部分を、企業に協力してもらえば、駐車場の問題は解決する。

先日の中止になった熊本KKウイングでの大分−名古屋戦の駐車場水没での補償問題はようやく解決のメドがついたようだが。
駐車場確保はザスパ草津でもかなり問題。先の大塚製薬戦は観客1万3千余の動員を誇ったが、駐車場はすし詰め状態で路上駐車も問題になったとか。クラブは公共交通機関での来場をよびかけるが、生活の足を自家用車に多く依存している群馬では、正直厳しい。電車もバスの本数が少ないし。スタジアム改修問題が一段落した今、最重要課題となったかも。熊本のアイデアと実現には注目したい。

鈴木氏:大事なのは、やはりスタジアムを観客でいっぱいにすること。足を運ぶ人が増えれば、スポンサーは自然と増える。そのスポンサーの数で言えば、甲府(J2・ヴァンファーレ甲府)が一番。選手の散髪を無料にしたスポンサーや、試合におにぎりを持ってくるスポンサーまである。こういう人たちは、熱烈なサポーターにもなってくれる。ホームの試合を増やすことも、チームの盛り上げには欠かせない。
注意してほしいのは、急ぎ過ぎては駄目だということ。ザスパ草津JFL群馬県)は設立当時は人気先行型で、金が集まりすぎた。しかし、ホームゲームは少なかった。そのためサポーターが少なく、盛り上がりが出てくるまでスポンサーの数を抑えた。堅実なチームづくりをやった結果、今は一万人ぐらいの観客が入るまでになった。

ザスパ草津は金が集まりすぎてスポンサー数を抑えた」ってのは初耳。お金はいくらあっても困らないと思うけど、良く考えればそうでもないか。昨季は関東リーグ2部で全14ゲーム、ホームで7試合。サポの盛り上がりを受けとめるには、たしかにゲーム数は少なく無料試合だから入場料収入はゼロ。大々的に集客しても警備など運営にお金がかかるばかり、とも考えられる。難しいものだ。金が集まりすぎた、とは云え自前でハードをどうこう出来るほどの巨額の資金があったわけでもなく、また地域リーグ時代からのハード面への積極的な投資は、今後を睨めば控えたいところ。それでザスパ草津は資金を戦力補強にまわしたのかな。全国地域リーグ決勝大会前には遠征費がかさんでしまい、スポンサー料の前借りをあちらこちらにお願いしていたらしいので、かなり苦しかったようだが。「県や関東リーグ2部のクラブとしては」お金が集まりすぎた、が正解か。

荒木氏:熊本では、報道関係が協力的なこともあって、Jリーグをつくろうという機運が広がっている。ボランティアを募集したところ、まだ形もないのに三百人が集まった。県民の関心、期待も大きく、経済界も思った以上に協力してもらってありがたい。今回、いろんな提言をいただいた。もう一度原点に立ち返って、見直すべきところは見直したい。

やはり地元メディアはかなり好意的な模様で、ボランティアが早くも300人集まる、ですか。「熊本から目指せJ」は、かなり期待がもてそう。新クラブ名とカラー発表、監督人事や選手選考などのニュースは今から楽しみだ。