沖縄かりゆしFC加藤久監督の新聞連載中コラムは必読かつ永久保存ですよ。

SH772004-11-26

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監督・選手の集団退団で来季九州リーグの参戦すら不透明な沖縄かりゆしFCですが、加藤久監督兼GMが9月から琉球新報でコラムを連載されています。Jリーグ加盟までの道のりや地域密着、そして今回の沖縄かりゆしFCの一連の騒動などについて、現在だから明らかにできることなどが語られています。加えて火曜日更新の一番新しいコラムがかなり衝撃的な内容だったので、このタイミングでエントリー。
http://www.ryukyushimpo.co.jp/cgi-bin/challenge/index.cgi/2004/11/index.htm

●<8>印象悪くした県サッカー界/全体への配慮必要
地域リーグ決勝大会」は、九州リーグのような地域リーグに属するチームがJFLに昇格するための、最も険しい関門です。全国9地域のリーグ戦の優勝チームがこの大会に出場することができますが、前年度の成績により、地域によっては2位のチームまで出場権を得ることがあります。
■優遇措置:Jリーグを目指すチームには、第一の道として、(1)から順にステップアップする方法があります。しかし、第二の道として、「地域リーグ決勝大会」に到達するまでを短縮する措置も設けられています。それは「Jリーグ加盟を標榜(ひょうぼう)するクラブに対する優遇措置」という規定です。現在、JFLで2位につけている「ザスパ草津」は、この優遇措置を受けた初めてのチームですが、昨年末、関東リーグ二部から一部に昇格せずに「全国地域リーグ決勝大会」への出場権が認められ、大会を勝ちぬいてJFL昇格を決めたのです。
当然のことながら、この「飛び級」と呼ばれる優遇措置には高いハードルが設定されています。例えば、日本サッカー協会の寄付行為・諸規定を順守し、その指示・決定に従う旨の誓約書や、将来的に「Jリーグ加盟する」という意思を表明した誓約書を提出することが義務付けられています。
これは、クラブから都道府県サッカー協会を通じて、日本サッカー協会に対して提出されます。また、自治体からクラブに対しての「ホームタウンとして受け入れ、支援する」旨の承諾書も必要になり、都道府県サッカー協会からも同様の承諾書を得なければなりません。さらに、クラブの役員、株主リスト、Jリーグ加盟までの収支計画書などの提出義務があります。

最新の第8回には地域リーグからJFLまでの道程が紹介されています。ザスパ草津飛び級申請にも言及されていますが、ここまでの厳しい精査があったとはサポながら知りませんでした。

飛び級」を受けない第一の道を通る場合にも、JFLに昇格するには都道府県サッカー協会の「推薦」が必要になります。このように、チームが上を目指すには、サッカー界の設定したフィルターを通過する必要があるのです。
■推薦しない:私が指揮してきた沖縄かりゆしFCの2002年の集団退団に続く、今年の選手・下部組織の退団表明、サポーターの解散は、沖縄県サッカー界全体の秩序を乱し、県のイメージダウンになったことは、本土のサッカー関係者に聞けば明らかです。
今期、かりゆしFCがたとえ全国地域リーグ決勝大会への出場権を獲得しても、県サッカー協会がJFLには推薦しない旨の決定をし、九州リーグ連盟も同様の決定をしました。
九州リーグ最終戦の前に私には内々に伝えられていたのですが、私は大変恥ずかしい思いをしました。しかし、このチームに対する決定は、サッカー界としては極めて妥当なものです。サッカーチームを保有していながら、サッカー界全体に配慮が及ばない組織は、決してフィルターを通過させてはもらえないということです。

九州リーグ最終戦を前に、すでに沖縄かりゆしFCには地域リーグ決勝大会の出場権利はなくなっていた、という事実が明らかに。予想はされていたことですが。結果的に2位で終わったとはいえ、選手たちの気持ちを考えるとツラすぎますね。
チームとしては強くとも、クラブ運営の面で反省材料となる部分も多く言及されています。「ここを直せ」と読めるでしょうか。以下抜粋。

●<3>チーム名変更を提案/地域の名称が最も効果的
Jクラブの地域密着の方法論を参考にしながら、沖縄における地域に密着したクラブ作りの具体的な方法を考えていた私は、昨年末、クラブに対してチーム名を変更してはどうかという提案をしました。チーム名を公募し、県民の皆さんが“うちなんちゅのチーム”“おらが街のチーム”と思えるきっかけにしたい、そう考えたからです。「かりゆしFC」は企業チームではありません。地域に根ざしたクラブ作りを標榜(ひょうぼう)していますから、それは容易に実現できるだろう、そう思っていました。しかし、残念ながらその提案は受け入れられませんでした。
●<4>「企業メセナ」明確に/チーム運営者は常に自覚を
チームを運営する立場の人々は、どういう考え方で、どこを目指すのかを自覚していなければなりません。地域に密着したクラブづくりを進め、Jリーグ入りを目指すと宣言しているクラブが、企業内スポーツの感覚でいること。「沖縄かりゆしFC」で選手が集まってはすぐにいなくなる。これが繰り返される原因は、そこにあるような気がします。
●<5>甘くない“J”への道/説明ないスポンサー撤退
スポンサー撤退に関しては、現場で活動する監督である私にも選手にも、事前に、そして、その後も何の説明もありませんでしたが、撤退のプレスリリースが出た二日後に、琉球新報にオーナーのインタビュー記事が載りました。
その紙面には「共同企業約百社が残っており、決してチームがなくなるわけではない」。そういうコメントが載っていました。私には、百社のみなさんが自発的にスポンサーを継続するとは思えません。なぜかと言えば、「沖縄からJリーグへ」―。そう言い出した「言いだしっぺ」が、本業のために”いち抜〜けた”とやった訳ですから、その他の企業のみなさんも「じゃ、うちもや〜めた」となっても不思議ではないからです。
●<6>独立法人格が義務/鳥栖救済は例外中の例外
サガン鳥栖の例から分かるように、世間一般では、“株主の体質や思惑”というものを非常に重く見ています。株主とは、草木に例えると“根っこ”の部分に当たります。いわゆる“根腐れ”している所では、クラブ発展のための芽が出ても、そこから枝や葉が伸びて、さらに花や果実が実ることはない、そういうことだと思います。
実は、「(株)かりゆし」のスポンサー撤退表明の後、選手のためにできることはないかと思い、私は沖縄の幾つかの企業にスポンサーのお願いに歩きました。これには、下部組織の父母のみなさんが親身になって協力してくれました。しかしながら、企業の反応はどこでも同じでした。
「チーム運営会社の実権を握っている株主や経営者がそのままなのに、新たにスポンサーになる所はありませんよ。自分のところはお金を出さないけれど、誰か出したら使ってあげますよ。加藤さんは、そういう所のスポンサーになりますか」
それ以後、私は独自のスポンサー探しをやめました。

とりあげたのはほんの一部です。興味のある方はコラム第1回からの通読をお勧めします。加藤久教授の「Jリーグと地域密着、サッカークラブの運営とは」という講座でもあり、この方面での基礎知識と正しい認識が得られると思います。繰り返しますが、必読モノです。