サガン鳥栖、再生のロードマップは如何に。

SH772004-12-01

関連エントリーはこちら。http://d.hatena.ne.jp/SH77/20041123#1101176024に。
このエントリー以降の最大の動きといえば、佐賀県から経営参画要請をされていたクリーク・アンド・リバー社社長の井川幸広氏の要請受諾のニュースだろう。詳しくはニッカン九州27日付より。
http://www.nikkan-kyusyu.com/cgi-bin/vi/view.cgi?id=1101518594&jl=to

●井川氏、条件付きで鳥栖経営受諾へ
J2鳥栖の経営をめぐり、古川康佐賀県知事が経営参画を要請していた東京都港区の人材ネットワーク会社「クリーク・アンド・リバー社」の井川幸広社長が、条件付きで受諾する意向を示したことが、26日明らかになった。
県によると、井川社長から同日付で文書が届いた。条件として、営業権譲渡による経営の引き継ぎ、同社長個人が親交のある複数のベンチャー企業経営者らと共同出資して運営会社を新たに設立することなどを挙げた。来季については、松本育夫監督の続投と、現スタッフの継続受け入れを希望しているという。

記事にある要請受諾と運営諸条件に関して記された文書については佐賀県のHPで閲覧出来ますです。以下、記事と関連ある部分をコメントをつけて抜粋。
http://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kenko_iryo/sagan/candrkaitou.html

・・・現時点では私と複数のベンチャー経営者等との共同出資で新会社を設立することがベストだと判断し、それを前提にお話を進めさせていただければと思います。引き受けさせていてだく条件としては、下記の通りです。
●「営業権譲渡」による経営の引継ぎを希望します。
Jリーグクラブの経営で、これまでに既存会社の過去のリスクを負わない「営業権譲渡」による経営引継ぎの複数の事例があることなどの理由からです。なお「営業権譲渡」のプロセスにつきましては、佐賀県とJリーグが「責任ある立場での関与」をしていただくことを前提とします。私としては早急に交渉に入る準備を整えております。

今あるサガン鳥栖運営会社を引き継ぐのではなく新会社を設立して営業権の譲渡をうけてクラブ運営にあたる、ということ。今の運営会社のゴタゴタや借金まで引き継ぐつもりはないし、この営業権譲渡の交渉に関しては、佐賀県Jリーグも交渉のテーブルに加わることを求めている。行政とJリーグとの今後の協力関係を睨んだ援軍要請でもあろうし、ややこしさが予想される営業権譲渡の交渉のテーブルに自分たちだけが座らされるのを防ぐ意図もあろうかと思われる。平たく云えば「サガン鳥栖を運営する会社を新しく作ります。昔の問題や借金は引き継ぎません。ややこしくなりそうな交渉には佐賀県Jリーグも味方として出席してください」ですかね。

●新会社の2005年シーズンの強化方針として、以下の通りお願いします。
松本育夫監督の続投(※松本氏が「了承」していただければ)
サガン鳥栖スタッフの受け入れ(※当事者が「了承」していただければ)
来季の選手の獲得、契約更新については松本監督と相談しながら。
選手契約等につきましては、11月30日がJリーグにおける「契約更改の締切日」であることから、現時点では「選手の契約等」を私共が行うことはできません。したがって新会社が出来、Jリーグの委員会で承認されるまでは、サガン鳥栖並びにJリーグ側に対し円滑にチームの引渡しができるようご協力していただきたいと思います。
●クラブ運営に際しては、佐賀県並びに鳥栖市をはじめ佐賀の市町村に、全面的な「協力(サポート)」を希望します。
サガン鳥栖が県民のみなさんの誇りあるチームになれるかどうか、人口が少ない地域にあるクラブという不利な状況の中、他チームと戦っていくには、民力の熱意だけではなく行政の協力なしには、果たせません。どういう協力が必要かその内容につきましては、今後、佐賀県と相談しながら進めさせていただきます。

ここ数年来、毎年のようにピッチ外の問題があったとはいえ、過去の監督と選手、そして今季の松本監督と選手たちが戦い続けて作ってきたチームというものは、サガン鳥栖を愛する多くのサポーターと同様に、クラブの持つ「継続性ある貴重な財産」である。この財産をさらに大きなものとするために松本監督以下スタッフへの続投要請は、多くのサポーターの意向に沿った形になると思うので、是非実現していただきたい。

ただいずれにしましても、これらはすべて営業権譲渡がスムーズに行われた事を想定してのことです。上記の条件が整いましたら会社の内容や規模、資本参加者等につきましては、早急に事業計画を策定し、ディスクローズの一環として12月中旬には2005年の経営方針として正式に発表させていただきたく思っております。

最後のゴタゴタがここかな。スムーズな営業権譲渡の実現と、5日の臨時株主総会Jリーグ側から難色を示された水産会社社長らの取締役就任議案がどうなるか。このあたりのゴタゴタを避けるべく、行政とJリーグに動いてもらいたい、と井川氏は要請しているわけですね。

私が、県や、Jリーグが、今、第一にしなければならないのは、サガン鳥栖愛する人たちの気持ちを一本化することです。みなさんが「サガン鳥栖」を誇りに思い、夢を持ち続けられるよう、県民一丸となってJ1を目指せるクラブ体制を整えていくことです。決して一時的な資金に頼るのではなく、しっかりとサッカーが浸透していくなかで佐賀そのものがクラブを育てる仕組みを作ることが急務です。

過去のゴタゴタから決別し、本来あるべき地域密着クラブの姿に立ち返り、J1を目指していく。語られる理念が実現、実行に移される日が来季からくることを願って止みません。
そして、この要請受諾を受けて、さっそく行政からは援護射撃が。まずは鳥栖市長が現経営陣に文書通知を。
http://www.nikkan-kyusyu.com/cgi-bin/vi/view.cgi?id=1101518620&jl=to

鳥栖市長、交渉失敗なら鳥栖支援撤退
佐賀県鳥栖市の牟田秀敏市長は、J2鳥栖の古賀照子社長に対し、県が推す会社社長との経営譲渡交渉が不調に終わった場合、鳥栖市が支援を打ち切る可能性があることを文書で通知した。
この日「クリーク・アンド・リバー社」の井川幸広社長が受諾する意向を示したことに牟田市長は「安定したクラブ経営に向けた道筋をつけるもの」と評価。「毎年の混乱で市民の批判が強まっている。不調に終わった場合は、来季以降のクラブへ支援打ち切りを決断せざるを得ない」と厳しい姿勢を示した。

そして佐賀県知事も現社長と株主へ依頼文書を。要旨抜粋。
http://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kenko_iryo/sagan/saganhe.html
http://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kenko_iryo/sagan/kabunusihe.html

株式会社サガン鳥栖から、「今後は県が推薦する企業で話を進める」と表明されたことを受けて、また、Jリーグから県への強い要望もあり、私は、株式会社クリーク・アンド・リバー社に対し、経営参画を要請いたしました。
私は、サガン鳥栖を地域の財産として存続させていくためには、佐賀県に対する熱い想いのある方にお引受けいただくことが何よりも大事なことであると考えており、県としても今回の斡旋がチーム再生のための最後のチャンスと考えております。
このような中で、株式会社サガン鳥栖の臨時株主総会で新役員の選任が議案として諮られる予定であり、新役員候補の中には、Jリーグから厳しい評価をされた方も含まれていると伺っております。
県といたしましては、これまで経営に携わってこられた現経営陣との協議を強く希望するとともに、井川氏側と具体的な手続きを進めていくための代理人(弁護士)を選任していただくようお願いしたいと考えております。
今後は、営業譲渡に向けた手続きがスムーズに行われ、来季からの新体制がスタートできるようJリーグのご指導を受けながら県としても協力してまいりたいと考えておりますので、株主のみなさまのご理解とご支持をいただくことができますようなお一層のご尽力をお願い申し上げます。

と、平たくいえば「今後のゴタゴタになりそうな新役員就任議案は廃案にしなさいよ。これが最後のチャンスなんだから」ですかね。とにかく行政サイドも新経営陣へのスムーズな運営移行を望んでバックアップ態勢なのは間違いない。鳥栖市長さんはかなり強気というか最後通牒同然だし。「もうこれ以上のゴタゴタは勘弁、来季からは普通な協力関係になりたいのですよ」というところか。
そして11月30日には、戦力外通告のニュース。まずは西日本新聞から。
http://www.nishinippon.co.jp/nishispo/kyu_j/index_sagantosu.html

鳥栖 全28選手の半数を解雇
J2のサガン鳥栖は30日、全28選手(レンタル移籍の3人を除く)のうち、今季主将を務めたDF朝比奈伸(28)ら14選手に対し、戦力外通告をしたと発表した。同クラブによると、査定は松本育夫監督の意向を尊重して決めたという。サガン鳥栖は来季の経営体制が定まらず、松本監督の去就も未定だが、新たに経営参画に名乗り出ている2陣営とも同監督の続投は容認している。
また、クラブから同日付で解雇通告を受けたとされるチームスタッフ5人は古賀照子社長と話し合った結果、全員が残ることになった。古賀社長は「職員には『来季はどうなるか分からないので覚悟はしておくように』とは伝えたが、正式な解雇通告ではない」と釈明した。

解雇予定だったスタッフには強化・運営担当者まで含まれていたそうだが、とりあえず解雇はなしに。現社長の釈明はともかく、新経営陣の意向と行政のプレッシャーが効いたか。松本監督のコメントは今日のニッカン九州版12月1日付に。
http://www.nikkan-kyusyu.com/cgi-bin/vi/view.cgi?jl=to&id=1101912452

●14人に戦力外通告
経営再建に揺れる鳥栖は11月30日、クラブ史上最多となる14人に戦力外通告を行った。主将のDF朝比奈伸(28)やリベロの佐藤陽彦(26)、中盤左サイドの主軸だった中村祥朗(25)らDF登録では5人が名を連ねた。また、JFLアローズ北陸のDF三好拓児(26)ら他クラブへレンタル移籍中の4選手も含まれた。
鳥栖スタジアムでこの日行われた選手への来季契約に関する通知に、古賀照子社長(48)は姿を見せなかった。クラブからマスコミ各社に配布された文書には「(戦力外通告は)松本監督の意向を受けて」と書かれていたが、同監督は「参考意見は述べるにしても、最終決断は社長のすること。私は正式に続投を要請された立場でもない」と話した。
戦力外通告の選手
GK:藤川康司(26)
DF:朝比奈伸(28)宮川悟(27)中村祥朗(25)佐藤陽彦(26)三好拓児(26)
MF:伊藤彰(32)古川隆志(23)矢部次郎(26)鈴木勝大(27)森恵佑(24)
FW:鳴尾直軌(30)菅原太郎(23)石橋直希(23)

「監督の意向」に基づくとはいえ、来季のビジョンも強化計画もないまま所属半数の選手に戦力外通告し、撤回されたが強化・運営担当まで解雇を告げていた現経営陣の行いは、正直理解の範疇を超えてしまっている。こういう状態だから「混迷」というのだろうけどね。
たしかにニッカン九州の過去記事では、松本監督は「選手の半分は入れ替えて、鍛えないと到底戦えない」と繰り返し述べているけど、新経営陣がスムーズに決まり、松本監督が続投して、呼び戻される選手も出てくれれば良いけれど。
ちなみに記事で触れられているアローズ北陸にレンタル移籍中の三好拓児選手と森恵佑選手に関してのエントリーはこちら。http://d.hatena.ne.jp/SH77/20040918#1095474685http://d.hatena.ne.jp/SH77/20040923#1095907073に。
本人たちの希望優先がもちろんだけど、アローズは三好・森の両選手を頻繁に起用、戦力として大いに期待していると思えるから、いっそ完全移籍、って手はどうかな。アローズ北陸は今季2度観戦できたけど、さらに成長が見込める良いチームだし。>自分がこの目で直にプレーを見た選手が選手キャリアの危機にあるニュースは本当にツライですね。