天皇杯5回戦「ジュビロ磐田−群馬FCホリコシ」。集大成の大健闘。

SH772004-12-14

地元紙上毛新聞12月14日付より。

天皇杯サッカー ホリコシ善戦
サッカーの第84回天皇杯全日本選手権は12日、各地で5回戦の6試合を行った。本県代表の群馬FCホリコシは静岡・ヤマハスタジアムでJ1のジュビロ磐田と対戦、1点先行された後半40分に追いつく粘りを見せたが、ロスタイムに失点し1―2で敗れた。5回戦の残り2試合は15日に行われ、ザスパ草津は午後7時から宮城・仙台スタジアムで今季のJ1年間優勝を決めた横浜Fマリノスと対戦する。
ジュビロ磐田に1―2で敗れる
5回戦:ジュビロ磐田 2−1 群馬FCホリコシ
得点者【磐】前田(前半31分)西(後半44分)【ホ】森(後半40分)
【評】群馬FCホリコシは1点を追う後半40分、こぼれ球を拾ったFW森が落ち着いて右足で決め同点とした。粘り強い守備と鋭いカウンター攻撃で善戦したが、あと一歩及ばなかった。磐田は1―1で迎えた後半44分に相手DFのクリアした浮き球を、MF西がけり込み決勝点を挙げた。

この試合については、宇都宮さんの「天皇杯漫遊記」第5回でも取り上げられた。群馬FCホリコシ関連の部分を抜粋して。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/emp_cup/84th/column/200412/at00003294.html
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/emp_cup/84th/column/200412/at00003295.html

●磐田に撒かれた種 群馬FCホリコシジュビロ磐田
・・・一方の群馬FCは、磐田とは対照的に愚直なまでのダイレクトサッカーを展開していた。インターセプトしたら、とにかく手数を掛けずに逆襲を仕掛ける。システムは4−4−2。最終ラインからのアーリークロスと中盤でのサイドチェンジ、そしてブラジル人のダニロと守備的MFの藏川洋平が時おり見せる高速ドリブルが攻撃のアクセントとなり、たびたび磐田守備陣を混乱させた。

蔵川が守備的MFに入らなければならない状況がとても残念。今季中盤の底を支えたのは羽山と山田のコンビ。現在山田が右足負傷で出場できないため、蔵川がその位置に入らざるを得ないのだ。もちろん、やや後方のプレッシャーの少ない位置でのプレーのしやすさもあったろうが。J's GOALの蔵川選手のコメントでもそんな主旨があった。
http://www.jsgoal.jp/club/2004-12/00014505.html

蔵川洋平選手(群馬FCホリコシ):「(ジュビロには)試合運びのうまさを感じた。中盤はある程度スペースがあったけど、前に行ったときにスペースがなくて、守り方もうまかった。相手ボールのときも、取りに行ったらはたかれてという場面も多くて、うまいなと思った。でも、後半の20分過ぎぐらいからはうちのリズムでやれたので、そのうち点が入るかなと思っていたけど、ロスタイムに点を取られるとは思わなかった」
Q:通用した部分は?
「切り換えの速さもけっこう通用していたと思うので、それをベースにして、そこからどれだけ上積みをしていけるか。それで来年はちょっとでも上のレベルでやりたいと思う」
Q:切り換えの速さというのは、自分たちの持ち味?
「そうですね。それは最初からずーっと言われているし、そこで勝負というチームだと思う。今日は、守備への戻りも速くできていたと思う」
Q:サポーターの応援も力になった?
「静岡なのに思ったよりもサポーターがたくさん来てくれてうれしかった。やっぱりサポーターの力は大きいと思う」

普段から徹底してる、生命線たる「攻守の切りかえの早さ」が、J1ジュビロ磐田に通用したのは、なんというかウレシイものでしょうね。普段やっていることが無駄じゃないのだから。ちょっと加えれば「攻撃参加と守備への戻り、特に勝負どころの。」の運動量では、蔵川洋平という選手は、今季のJFLでベスト3に入れるだろう。掛け値なしに良い選手ですよ。
少しづつだけど、熱心なサポーターの方々も増えてきている。このチームのサッカーが、普段300人くらいの観客の前でやっているのは正直もったいないよね、やっぱり。

個々の選手は、球際も強く、実にアグレッシブだ。ただし、プレーの精度に難があり、前半は何度もチャンスをつぶしていた。

ライン裏に飛び出した森くんがもう少し落ち着いてパスをトラップ出来れば、というGKと1対1の場面があったけど、JFLでなら得点につながったかも。

そうこうしているうちに、磐田が先制ゴールを挙げる。31分、田中誠のロングキックをチュウミがクリアに手間取っているところを、前田遼一インターセプト。そのままドリブルでDF小山大樹をかわして、きれいに流し込んで一丁あがり。それまで最もどん欲にシュートを放ちながら、ポストに嫌われたり、井坂進一の好セーブに阻まれたりしていた前田だが、相手のミスを一瞬たりとも見逃さない姿勢は、さすがの一言に尽きる。

これも普段なら、失点まではいかないのだけどなあ。

後半、磐田の山本昌邦監督は、この試合を1−0で乗り切ろうとしていたようだ。よりセーフティに、可能な限りリスクを回避すべく、ボールポゼッションの度合いを強めていく。そして61分には、先制ゴールを挙げた前田に代えて、2カ月半ぶりの公式戦出場となる中山雅史をピッチに送り込む。だが、この交代を契機に、ゲームの流れは徐々に群馬FCに傾いていく。
63分には、DF深田慶太のオーバーラップからのクロスに、小松原学がきわどいヘディングシュート。その3分後には、ショートコーナーから奈良安剛が折り返し、小山がニアに飛び込むが、これはGK岩丸史也が何とかキャッチする。その後も、71分と72分にはダニロが長距離ドリブルとミドルシュートで会場を沸かせ、74分にはコーナーキックから再び小松原がヘディングシュートを放ってバーを直撃するなど、磐田サポーターのイライラが募る時間帯が続いた。

この辺りの攻撃の組み立ては、群馬FCホリコシの普段のサッカー。FW町田多聞の欠場がなければダニロは本当は後半から投入したかったのだと思う。相手DF陣にダッシュを強いるダニロのスピードは群馬FCの後半の決め手。

こうした群馬FCの攻勢に対して、しかし山本監督には手持ちのカードは極めて限られたものであった。77分、プレーの空回りが目立った藤田に代えて、成岡翔を投入。だが、状況の改善には至らなかった。むしろ、ここまで磐田に対して互角に戦うことができたことで、群馬FCは徐々に自信を深めつつあった。そして迎えた85分、ついに群馬に同点ゴールが生まれる。小山、ダニロとつながったパスが、服部の足にに当たって走り込んでいた森陽一の足元へ。森はそのままGKをかわしてシュート。副審はオフサイドの旗を挙げていたが、主審はその副審に確認した上で、あらためてゴールインを認めた。

やっぱり森くんはカッコイイねぇ。あの角度と、この状況で決めるのがエースの証。森くんのコメントもJ's GOALに。

森陽一選手(群馬FCホリコシ):「(ジュビロは)やっぱりプレッシャーが早かった。みんなそれに慣れるまで時間がかかったけど、後半は向こうも運動量が落ちてきたので、多少スペースと時間ができた。それで何回かはいい形が作れたと思う」
Q:ジュビロ対策は?
「これといったものは特になかった。自分たちがどれだけ通用するのか、個人としてもチームとしても思っていた。Jとやるために練習しているし。技術は向こうのほうが全然上なので、気持ちと走り負けないことを考えて、その中で自分たちの持ち味を出そうとした」
Q:ゴールシーンは?
「余裕はなかったけど、ここで決めないと負けると思ったし、GKと1対1だったので、とりあえず決めることだけ考えていた。だけど、その後守りきれなかったのが悔しい。2点とも自分たちのミスから取られた失点だったけど、そこを決められるかどうかという差が出た試合だったと思う」

関東リーグでぶっちぎりの得点王、JFLでも堂々14得点の8位。後期Honda FC戦での独走ドリブル、左右と後ろにホンダの選手を引き連れ、飛び出したGKの脇を抜いた決勝ゴールを思い出す。余裕はないけど決められる、ってのが良い。無人のゴールにヘディングで入れるだけ、を外したりもすることも、たまにあるけれど。トータルでプラスならオッケーだ(笑)。

またしても追い詰められた磐田。ところが、誰もが延長戦を予感したロスタイム1分にどんでん返しが起こる。オーバーラップした菊地直哉のクロスを、群馬FCのDFがカット。しかし、ボールは前に詰めていた西紀寛の胸トラップに吸収され、そのまま右足から放たれた弾道は、一直線に群馬のゴールネットに突き刺さった。ほどなくして終了のホイッスル。群馬FCの守備陣が、力尽きてバタバタと倒れる中、磐田の勝利が確定した。磐田の2得点は、いずれも相手のわずかなミスを突いたものであり、さらには選手個々の能力に負うところが大きかった。

2失点目の起因も、普段のJFLでなら失点にはつながりにくい程度のミス。しかし前田や西はそこから得点できる選手だった。これがJリーグ、なのだろう。名波・鈴木がいないとはいえ、あのジュビロ磐田相手にレギュラー欠いての中、大健闘だったと思う。ふたたび上毛新聞。

●「よく戦った」
前回王者の磐田を最後まで苦しめた。群馬FCホリコシの戦いぶりはそれほど評価に値するものだった。池田司信監督は「出すべきものを出し、よく戦ってくれた。恥ずかしくないゲームができた」と胸を張った。真正面から挑んだ試合だった。ホリコシは守備的にならず、自慢のプレスを前線から仕掛けた。高い位置でボールを奪い、素早く攻撃に移す戦術を徹底。シュート数は13本で上回り、運動量でも勝った。敵将・山本昌邦監督は「ホリコシの守備は質、量とも高い」と感心した。2つ上のカテゴリーに位置する相手と堂々渡りあった。山本監督に「ボールを取ってからの素早い攻撃には力がある。個々のスキルも上のレベルでできるものにある。苦しめられた一戦」と実力を認めさせた。
池田監督は就任1年目でフィジカルを鍛え、2年目には守備をてこ入れした。「J1と戦うこと」を目標に就任当初から着実にチームづくりを進め、今大会の躍進につなげた。MF蔵川洋平は「自分たちが通用する部分もあった」と手応えを感じた。
天皇杯ベスト16。本県代表として戦い抜いた「群馬FCホリコシ」の名は全国のサッカーファンにしっかりと刻み込まれた。

天皇杯が現在の形なってからはもちろん、ベスト16は過去最高の成績。JFLリーグ戦にたびたび足を運んだけれど、このチームは池田監督にどんどん鍛えられ、強くなっていくのが判った。選手も魅力的な個性が揃っている。来季はさらにJFL上位が狙えるという期待も高まるなか、次エントリーでも触れているけれど、この試合を最後に池田監督は退任とのことで非常に残念。
今季の天皇杯柏レイソルに勝利し、ジュビロ磐田と接戦を繰りひろげた。このチームの潜在能力と方向性は、確かにJ加盟を目指す明確な意図を持っていることを証明している。来季のJ加盟を目指すとしているフロントは、この成果も大いに材料として、地元地域に魅力的なチームを存分にアピールして欲しい。