J2第19節、徳島ヴォルティス戦。第1クールを思い出す試合。ただし役を入れ替えて。

SH772005-07-02

結果はJ's GOALより。
http://www.jsgoal.jp/result/20050200030520050702_detail.html

●J2第19節 7月2日(19:04/鳴門/3,008人)
徳島ヴォルティス 2−1 ザスパ草津
得点者 26分:伊藤彰(徳島)43分:籾谷真弘草津)70分:小山拓土(徳島)

今週末は、土曜も日曜も急に仕事でしたよ。仕方ないので、徳島遠征費用はスカパーチューナ代に振り替えました。なにせJ-SPORTS今月のJ2放送予定では、ザスパ草津のアウェイ3試合は放送されませんから、ここがタイミングだと思いまして。てなわけで7月4日の月曜日の録画放送を観て、観戦記をアップします。1−2という点差以上の敗戦だったようですが、1−4とか点差どおりの大惨敗を数度、眼前で繰り広げられた身からすれば、まだまだ。
追記。とりあえず3度観たので観戦記を。いつもどおり結論から書いておけば「第1クールと攻守ところを替えた試合。その差は両サイドの位置どりとゲームプランから生まれた」ですね。実際に観てみると点差以上の完敗でもなかったところが救いでした。第2クールの草津は戦い方と布陣を変えているため、第1クールほどには優位に進められなかった試合だと思います。逆にいえば、第1クールはそれくらいツボにはまった、徳島の良さを出させなかった試合だとも云えるでしょう。
徳島ヴォルティスの攻撃の特徴は、精度の高いショートパスでボールをキープし、両サイド攻撃も絡めて中盤優位を確立、3バックは高い位置で中盤のコンパクトを保ちつつパス交換にも参加して試合全体の主導権を握っていくところにあると思います。第1クールの草津は4−2−3−1を採用し、攻撃姿勢のチームでした。1トップの宮川大輔に、FW吉本淳と酒井良がかなり高い位置で両サイドに陣取るため、徳島のDF陣と両サイドも守備に下がらせて攻撃に移るの遅らせ、主導権を握れました。トップ下の伊藤彰も氏家英行マンマークして抑えたため、中盤でパスの組み立てがうまくいかない徳島は、前線への放り込みくらいしか攻め手がない時間が多くなってしまいましたね。
3−5−2の両SHの攻撃参加を減らし、トップ下を孤立させて攻撃全体を封じていく。今回はこれを役どころを変えて行われてしまいました。今の草津は守備基調の3−5−2を採っています。両SHもやや下がり目に、相対するSHのマークも担当しているため、自陣でプレーすることが多くなり、トップ下の山口貴之が中盤で孤立してしまいました。*1まあこれは第1クールと違い、まず耐えて機会をうかがう試合運びをチームが選択しているだけに攻め込まれるのも、攻撃の人数が少ないのも覚悟の上です。ですから、この試合の問題と課題は、攻め込まれ続けたことではなく、失点を重ねてしまったことにあるでしょう。第2クールはロースコアの接戦に持ち込んだ結果、勝ち点をとれる試合が多くなってきました。これからの発展的な課題は「1点とられた後に、2点とりかえすサッカーが出来るか」でしょうね。
また今後の対徳島に限っていえば「いかに両サイド攻撃を機能させないか」でしょう。「ならば徳島戦だけ4−2−3−1で攻撃重視に戻せばいいじゃないか」と云う向きもあるでしょうが、テレビゲームみたく簡単に切り替えられれば苦労はありません。今は3−5−2で途中交代を繰り返すと、チームの統一感がなくなるような錬度でもあるのですからね。そして4−2−3−1の攻撃重視で臨んだ第1クールは徳島にしか勝っていない現実もあります。今のシステムで錬度と連携を高めてチームを形作っていくことのほうが重要でしょう。システム変更ではなく3−5−2で真っ向勝負、このシステムで錬度の高い徳島と良い試合が出来れば、ザスパ草津はまた1つレベルアップできると思います。と、まとめまで書いてしまいましたが、試合の流れも追いましょう。ザスパ草津、この試合のメンバーとフォーメーションは。

ザスパ草津 スターティングメンバー(J2第19節 vs 徳島ヴォルティス
GK:22小島伸幸
DF:2籾谷真弘・17小川雅己・32:齋藤竜 
MF:5氏家英行・6鳥居塚伸人・9山口貴之・18寺田武史・24酒井良 
FW:20吉本淳・30樹森大介 
●サブメンバー
GK:29岩丸史也 DF:3小田島隆幸
MF:10高須洋平・15山崎渡 FW:14佐藤正美
ザスパ草津 キックオフ(3−5−2)
−−吉本−−樹森−−:佐藤
寺田−−山口−−酒井:高須・山崎
−−鳥居塚−氏家−−:
−籾谷−齋藤−小川−:小田島
−−−−小島−−−−:岩丸

先発11人ならば、現状ではこうなりますか。CB齋藤竜は完全にスタメンの座を勝ち取りましたね。ラインコントルールと対人マンマークといい及第点以上の活躍っで生き生き動いているのが判ります。セレッソ大阪からよくぞ草津に来てくれたものです。とはいえ、群馬県リーグの頃からチームをまとめ、練習環境の整備や運営にまで動き回ってくれた小田島隆幸がベンチにいるのが寂しくもあります。しかし層の薄さは相変わらずなので、まだまだ出番はあるはず。頑張れオダジー

徳島ヴォルティス スターティングメンバー(J2第19節 vsザスパ草津
GK:30高橋範夫
DF:16挽地祐哉・20大森健作・25谷池洋平
MF:5筒井紀章・8伊藤彰・11片岡功二・17秋葉忠宏・23金位漫・24小山拓土
FW:18羽地登志晃
●サブメンバー
GK:22古田泰士 DF:2谷奥優作
MF:4鎌田祥平・15冨士祐樹 FW:10大島康明
徳島ヴォルティス キックオフ(3−5−2)
−−羽地−−小山−−:大島
片岡−−伊藤−−−金:冨士
−−筒井−−秋葉−−:鎌田
−大森−挽地−谷池−:谷奥
−−−−高橋−−−−:古田

累積警告で出場停止の右SH大場啓の代わりはキム・ウィマン軍団長。*2左SHは要注意選手の片岡功二。3バックは挽地祐哉大森健作がスタメンに。またベンチながらエースFW大島康明が負傷から復帰。めでたいことながら、もうちょっと後でもいいのですが。前回の対戦では、数少ないチャンスは大島の個人技から生まれていましたしね。2トップで並べましたが、羽地の1トップで小山と伊藤の2シャドーでDFライン裏を狙う形も。
さてキックオフ。開始から9分までは互いに高い位置からプレスをかけ、3バックもラインを押し上げて主導権を握りの奪い合いとなりました。一進一退ながら草津の方がチャンスを作ります。開始0分の氏家のミドルシュート、5分の樹森と吉本の動きと連動した酒井良の右サイド突破からのシュート、8分には同じく樹森と酒井のパス交換から右サイドを崩し、樹森のヘディングに合わなかったとはいえ、酒井はクロスにまで繋げました。氏家1人にDMFを任せた鳥居塚キャプテンの高めの位置どりも奏効し、樹森や吉本がサイドに流れてボールを受け、攻めあがりの選手と連動して人数を掛けてサイドを崩す形が見えました。ちょっとづつですが組み立てが増えていますね。
徳島は9分に左SH片岡功二の低い位置からのロングフィードでチャンスを作ります。このフィードをDFラインの裏をとったFW羽地がドンピシャでうけ、飛び出したGK小島さんの1対1に。シュートはコントロール重視でGKの脇を抜きますが、スピードが落ちたことでゴールマウス前のCB籾谷が間一髪クリア。11分に山口のFKに吉本がヘディングをワクに飛ばすチャンスもありましたが、徐々に流れは徳島に傾いていきます。
齋藤竜のバックパスが雨にぬれたピッチをすべってゴールラインを割って12分にCK。最後は小山のヘディングにまで繋げられました。16分には1トップの羽地へのロングフィードで、またもやGKと1対1の大ピンチ。勇気ある飛び込みとしかもノーファールで止めた小島は神、てなファインプレーでピンチを脱します。しかし19分に自陣深い位置から繰り出した、片岡の豪快なロングサイドチェンジに逆サイドを駆け上がるキム・ウィマンが追いつき、フリーでペナルティエリアに進入されますがキムが足を滑らせて助かりました。
草津が攻撃の組み立てを増やしてきたように、徳島の前回対戦の反省と修正を行ってきていました。草津のサイドを突くキック&ラッシュにはSHではなく、DMFがかなり深くまでカバー、ボールを奪えば逆サイドに大きくフィードしてチームをビルドアップしてきます。プレーの逆サイドのSHは下がり過ぎないよう、かなり高めの位置どりを意識していましたね。キムを下がらせるためにも、草津は右サイドの酒井からの崩しだけでなく出来れば左SHの寺田武史を使ったサイドチェンジも用いたかったところです。また伊藤彰のマークを担当する氏家対策に、小山と伊藤がかなり自由に動く2シャドーを採用してマークをつきづらくしていましたね。
この2シャドーが徳島の先制点に結びつきます。26分に伊藤彰の強引な中央突破からシュート、というかボールをゴールに蹴り送るような形で打たれて、小島さんも反応しきれず失点してしまいました。直前の25分のカウンターをプレスをかけながらFWまで自陣で布陣を敷き直し、守備ブロックを整えてサイドラインに蹴り出して攻撃を切りましたからね。しかしここのスローインを受けた伊藤に鳥居塚と山口が挟むようにつき、DF2名も寄せましたが、伊藤に執念でボールを前に送り出されるような形になってしまいました。守りの形を整え人数をかけて寄せているだけに、逆に寄せきれなかったのか。悔いが残りますね。本来ならば当たりの強いマーカーの氏家が前から止めに行きたかったところですが、この時はファーサイドの選手をマークしていましたからね。
その後試合は一進一退、草津は自陣で守備の形を整えてからチャンスをうかがいますが、やはり中盤のせめぎあい徳島がやや上手。それでもワイドに中盤を使いながら攻めた43分、35mはあろうかという遠いFKを得ます。キッカーの山口はファーサイドの籾谷に送り、籾谷は地面に叩きつけるヘディングであわせ同点に追いつきます。このプレーを徳島の田中真二監督と選手は。
http://www.jsgoal.jp/club/2005-07/00020962.html
http://www.jsgoal.jp/club/2005-07/00020963.html

田中真二監督(徳島)
「今日は前半から選手が積極的にプレーしてくれて、内容的にも満足のいくものだった。反省点は失点の場面だ。このレベルでは初期動作の確認が遅れるとピンポイントで取る実力があるので、集中を切らすことは、即失点につながる」
挽地祐哉選手(徳島)
「悪い時間帯の失点が続くことは、次節への課題だ。それを修正できなければ連勝は不可能。ただそれ以外は狙い所もはっきりしていて、チームとして良い流れではないかと思う。オフサイドのルールが変わったので、集中力がより求められている」
●谷池洋平選手(徳島)
「ディフェンスとして、またそれ以上にキャプテンとして失点には責任を感じる。内容的には3ラインがコンパクトに保てて、目指すサッカーができていたと思う」

1−0で折り返そう、という時間帯でもあり、選手も「あそこ以外は良かった」という失点シーンでしたが、田中監督はかなり問題視すると思います。実は28分のCKと33分のFKでも、草津は一番ファーサイドに走り込む籾谷にボールを合わせていたのですよね。しかも2回ともノーマークでどフリー。その2回を見ても誰も危ぶむようでもなく同じ形の3回目で失点。注意不足というより、セットプレー時の対応方法の穴なのでしょうか。まあ、ヨソ様の心配している場合ではありませんし、モミーニョ、J初ゴールおめでとう。前半が終わってみればシュート数は互いに5本づつ、スコアは1−1なのですから、草津はまあまあ良くやれたと思います。失点シーンは悔やまれますが。
後半立ちあがりは草津の攻勢で進みますが、徐々に徳島にペースを握られ草津がカウンターで応じる展開になり、立て続けにFW羽地と小山にライン裏をとられて再三ピンチの陥りますが、小島さんの神がかりなファインセーブの連発で凌ぎます。神がかりと云いますが、解説者の方もホメていたとおり「シュート予測の経験値」の高さの賜物だと思いますね。
草津も60分にカウンターで樹森のクロス、酒井のシュートまでつなげますが、ノリヲ様にセーブされていました。またこの頃から草津疲労が目立ってきました。アウェイ移動や天皇杯横浜F・マリノス戦以来のナイトゲーム、大雨でホテル缶詰などイロイロあるそうですが、前半から徳島のロングボールによって全体的にかなり走らされた場面が多かったのがキツイと思われます。それでもマークを崩さず、粘り強く守っていたのですが70分に小山にミドルシュートを決められてしまいます。カウンター気味の中でのプレーだったのですが、ゴール前の人数は戻って整っていただけに、誰か一人当たりにいって欲しかったとも思えますが、蹴った小山を誉めるしかないプレーでした。
直後の72分にサイドに流れた山口からのクロスに吉本がヘディングをあわせますが、僅かにポストの外に。これは惜しかった。草津は佐藤正美、高須洋平を投入して攻勢に出ます。徳島はカウンターで対応するまま時間が過ぎ、双方あまりチャンスのないまま試合終了。1−2からの攻撃方法な課題はありますが後半70分すぎの疲労度を考えると、出来れば1−1で終わらせたい試合でしたね。実に14回(後半だけで11回)もCKを蹴られましたが、ピンチは0回。シュートまでもいかれたのもおそらく2回、どフリーで打たせたのは1度もなし。FKでもピンチは皆無と、セットプレーでもかなり粘り強くなってきました。守備のブロック構築とマーキングとチェイシングも頑張っていただけに、2失点のシーンそれぞれがもったいない試合でした。
負けと承知で見ていて、しかもかなり守勢にまわった試合でありながら、あまり悲観的にならずに気持ちが次戦に切り替えられるのはどうしてだろう? と書きながら思っていたのですが、ようやく理由がみつかりました。草津が攻勢だった時間が少なかったとはいえ、パスミスで攻撃が終わることがほとんどなく、そのチャンスをキチンとフィニッシュまでもっていけたからですね。まるで攻め手なしだったベガルタ仙台戦などから見ると、守るときはチャレンジ&カバーのチームで守り、攻めるときは攻めの形が出来ています。
昨季JFLでの両チームの試合も見直しましたが、草津と徳島ともに現在はまちがいなくスピードアップされています。両チームともJ2に慣れてきたのでしょう。第2クールもあと3試合、草津は山形、福岡と上位チームとの対戦も残していますが、今のチームなら第1クールよりは90分間戦えるようになったと思えます。次節もアウェイですが結果もついてくるように頑張って結果欲しいです。

*1:山口さんは、前半途中からサイドに流れることでマークを外していましたね。さすが百戦練磨。

*2:Footival24号参照。人柄に惹かれて多くの若手選手が彼の周りに集まり「ウィマン軍団」を作っているそうで。軍団の主な活動は、おしゃべりとお食事会。