ザスパ草津賢持宏昭社長が辞任へ。大西忠生GMが社長代行に。

SH772005-07-27

asahi.comより。http://www.asahi.com/sports/update/0727/107.html

●J2草津の社長辞任へ 本拠・前橋移転で観客が激減
ザスパ草津を運営する草津温泉フットボールクラブの賢持宏昭社長(37)が辞任する。本拠を群馬県草津町から前橋市に移したことから観客数が激減するなど経営手腕や姿勢に批判が出ていた。26日深夜の臨時取締役会で承認されており、近くクラブが発表する。当面は大西忠生GMが社長を代行する。

いやー、びっくり。集客にせよチーム成績にせよ全てがこれからなのですが。アビスパ福岡戦で花火がちゃんと上がっているかの確認で敷島のトラックまで出てきた姿をチラと見たのですが、それが最後になるのかな。
植木繁晴前監督同様に、3年間J加盟のプレッシャーで精神的に追い込まれていたことはあちらこちらで言及があったのでメンタルの部分での疲労もあるかもしれません。正式な発表なり記者会見なりを待ちたいと思います。記事が事実ならば、本当にお疲れ様でした。社長の行動力もザスパ草津Jリーグ加盟の大きな要因だったと思います。
さて記事自体は見出しから内容まで、事実確認がズサンかつ矛盾だらけなのですが、一応続けますと。

賢持氏は02年春、群馬県社会人リーグのチームを受け継ぐ形で、大西GM、植木繁晴前監督らとザスパ草津を発足。「温泉町からJリーグへ」を合言葉に、選手が地元の温泉旅館などで働きながらJリーグを目指すユニークなチーム作りを手がけ、3年足らずでJ2昇格を実現した。

ここまではその通り。ここから後ろですな。

だが、昇格を決めた昨年度の決算では約6000万円の赤字を計上。昨年は最高で1万3743人を集めた観客も前橋市に本拠を移した今季は2,000人台まで落ちこみ、成績もJ2最下位に低迷。チームが遠のいた草津町民やスポンサーからは、同氏に対する不満の声が上がっていた。

「昇格を決めた昨年度の決算では約6000万円の赤字を計上。」
まず、昨年度の決算が赤字なのは仕方ないことでして。地域リーグからJFLまでは収益を上げることを目的としていないアマチュアリーグであり、全国リーグJFLでもリーグ戦だけで黒字を出しているクラブはおそらくほとんどないでしょう。短期間でJ加盟を目指すチームとしては1年でも早く地域リーグJFLからJリーグに上がって収益を得るのは大きな目標ですし、それぞれのカテゴリーを勝ちぬくには費用をかけた戦力補強が必要です。Jリーグに加盟しなければ(辿りつかなければ)サッカーでクラブに利益が生まれない、最初の数年間は黒字転換を念頭に置かねばならない、というのはザスパ草津だけでなく現在活動中の「目指せJ」すべての案件だといえるでしょう。
「昨年は最高で1万3743人を集めた観客も前橋市に本拠を移した今季は2,000人台まで落ちこみ、成績もJ2最下位に低迷。」
観客減は前橋市に本拠を移したから、というのは決定的な理由にはならないでしょ。そもそも昨季JFLでも草津町開催は1試合のみですし。
おとといのエントリーを参照してもらえば判りますが、観客減少は成績はもちろん駐車場問題などの複数要因の結果であり、また収容5000人程度の敷島サッカーラグビー場での開催を11試合中10試合、ようやく第21節で現在8,000人程度収容の敷島県陸が使用できるようになったばかりのデータでもあります。
今季11試合での平均入場数は3,720人。記事で触れられている観客2,000人台の試合は、11試合中の2試合です。たしかに昨季はJFL記録の1万3743人を集めたゲームもありましたが、ホーム15試合の平均入場者数は4,942人。元々2,000人収容の南長野開催の2試合を除いても、観客1000人台の試合が2回、2000人台の試合が3回ありました。JFL時代が毎試合満員御礼でなかったことは、昨季以前から応援されているサポーターの方々ならば誰でもご存知のことでしょう。
そもそも昨季観客1万人超えの2試合や平均5000人にせまる観客動員の実績は、人口7000人の草津町民のバックアップだけでなく、群馬県下・県外のザスパ草津サポーターが集まったからこそ生まれた数字でもあります。昨季、草津町で唯一開催した佐川印刷戦の観客が2,174人だったこともザスパ草津サポーターが草津町以外の地域に大勢いることの証拠です。
記事の主張を逆手にとれば「ならば本拠地が草津町のままなら&戻せば、JFL時代以上の観客が集まるか?」というになりますが、残念ながらザスパ草津の集客案件はそんな容易なことではありませんよね。
成績に関しては、まあ現場に頑張ってもらうしかないです。(笑) 過去3年間の赤字を抱えたザスパ草津では大幅な補強も無理ですし、戦力増強のためにJFLまで苦労してきた選手たち、現有戦力の大量解雇なんて事態のほうが観客を減らしそうです。
「チームが遠のいた草津町民やスポンサーからは、同氏に対する不満の声が上がっていた。」
これはあるかもしれませんね。スタジアムや交通アクセスの問題から草津町からチームが離れてしまうことは理屈で判っていても感情では簡単に割りきれないと思います。かといって草津町では1年通しての練習は無理ですし、運営業務の全てを行なうことが困難なのもまた現実です。現在とりくんでいるチャレンジャーズチームの活動や、トップチームの練習やイベント参加などを積極的に推し進め、コミュニケーションを図っていくしかないでしょうね。また、この記事だと草津町全体で社長を辞めさせたような印象すらうけますが、今まで同様にチャレンジャーズチームの選手を受け入れてくれる温泉宿などの勤め先は引き続きサポートしてくれていますし、前橋敷島やアウェイまで応援に通われる熱心な草津町のサポーターの方々も多数いらっしゃいます。
表層のみを捉えた印象操作めいた記事を掲載する朝日新聞には怒りすら覚えますが、朝日新聞群馬県版の熱心なサポート記事とのズレを考えると、やはり大した調査もせずに全国版担当の記者が書いた記事ではないか、と思われます。
と、ここまで書いてきましたが、こんなダメ記事よりも「赤字を抱えて今年も観客減。社長も辞めちゃうザスパ草津の今後の運営は大丈夫なの?」てことのほうが余程心配ですよ。とにかくスタジアムも広くなりましたし、チームもだいぶマシになってきました。これからも引き続き、お客さんを増やす努力しないといけませんですね。あとは先の福岡戦で100までもう少しに迫った(おそらく95〜97だと思われ)スポンサー看板を減らさないように運営もチームも頑張ってもらわないと。
追記。J規格スタジアムのある『前橋』で活動しているザスパ草津』という事実は、Jリーグ百年構想にも関わるテーマなんですよね。中小自治体の地域に密着したサッカークラブがあるとして、そこがJリーグ加盟を目指せばどうしてもJ規格スタジアムのある都市部での試合開催、集客など本格的な活動を考えなくてはならないですから。熱心なホームタウンとスタジアムが離れているクラブの活動のあり方とは。Jリーグに加盟した今でも「ザスパ草津という名の実験」は続いていると云えますね。