J2第31節、柏レイソル戦。強豪相手の勝ち点1は、健闘でもあり残念でもあり。

「柏バカ一代」は最高だ。

まずは結果をJ's Goalより。
http://www.jsgoal.jp/result/20060200030520060729_detail.html

●J2第31節(7月29日19:05/群馬県陸/4,251人)
ザスパ草津 1−1 柏レイソル

得点 22分:島田裕介草津)78分:リカルジーニョ(柏)
警告 35分:佐田聡太郎草津)36分:尾本敬草津)71分:寺田武史草津)85分:チカ(草津
交代 51分:谷澤達也鈴木達也(柏)62分:李忠成フランサ(柏)67分:中井義樹田中淳草津)72分:平山智規佐藤由紀彦(柏)

久々の更新です。草津の最近5節を振り返ると、決意の湘南戦はドロー、続いて神戸と仙台に連敗、札幌にはロスタイムに追いついてドロー、そして前節はお休みと、シーズン勝利数記録を更新する6勝目が遠いですね。
この5節に限らず、第1クール後半くらいから草津は徐々に「現状の壁」に当たってきていたと考えています。同じ相手と4度も対戦するJ2では、いづれのチーム遅かれ早かれ研究され、長所を消され、ちょっとの工夫では通じない壁に当たるもの。そこから長所を伸ばし短所を補い、チームを改良し成長させて戦っていくのもJ2の醍醐味であろうかと思います。最近、J2各チームの戦力補強のニュースも聞きますが、それも現状打破の一環でしょうね。
さて草津で云えば、第1クール後半くらいから、中位〜下位相手でも思うように「走撃」できない、有効な攻撃を封じられている状況。これは大雑把に分けると、各チームのMF島田裕介へのマークの厳しさアップに加えて、サイドバックが守備から入る4バックを敷かれてサイドの深い位置のスペースを消され、思うように両翼からのサイド攻撃を展開できなくなっているからだと見えます。これは第1クールの愛媛戦や第2クールの横浜戦で顕著だったと思います。こうして有効な攻撃方法が封じられると、MF中井義樹やDF陣からのロングフィードか、島田の黄金の左足に期待するセットプレーくらいしか、得点機をつかめません。島田とCB鳥居塚伸人が不在だった第26節の湘南戦、前半の最後のほうでは、引いた湘南相手に、完全に手詰まりでしたからね。
もちろん植木監督も、4バックを敷いてサイド攻撃を強化したり、右SH山崎渡にサイドではなく中に切れ込ませたり、選手や配置をいじってみたりと工夫していますが、簡単に決定打が出ない状況です。また第2クールから累積退場者が目立ち始め、レギュラーが複数欠場することも多く、なかなか実戦であれこれ試すまではいかなかったようにも思えますしね。
とにかく攻撃に関しての改良点は「hincha de un THESPA」さん*1もおっしゃっていますが、「いかに島田に楽にボールを持たせるか、彼の展開の選択肢を増やすか」に尽きると思います。そして、その光明が見えたのがこの柏レイソル戦ではないか、と振り返れます。(ここまで前フリかよ)
まずはザスパ草津情報の70%を発信している、ある意味島田並みに不可欠なライター、伊藤寿学さんによる、J's Goalのプレビューから注目部分を抜粋。
http://www.jsgoal.jp/news/00035000/00035942.html

【J2:第31節 草津 vs 柏 プレビュー】12位・草津が、首位・柏に「撃ち合い」を挑む。果たして結果は? 
(前略)草津はここ数試合、4バックのシステムでスタートし、後半途中で3バックに移行することが多い。今節もDFラインは、これまで同様に4バックを敷く予定。だが、中盤は、柏のブラジル人への対策、そして、攻撃の活性化のために、新たな方法にチャレンジする可能性が高い。草津にとっては、この試合が今季のターニングポイントになるかもしれない。 

プレビューに密着の現地取材で得た情報をまぜてくれる伊藤さんから伝わる手ごたえ。正直、このセンテンスでかなり期待してました。そして実際のスターティングメンバーは以下の通りでした。

●J2第31節ザスパ草津スターティングメンバー
GK:1高木貴弘
DF:4齋藤竜 6鳥居塚伸人 17尾本敬
MF:15中井義樹 5チカ 7佐田聡太郎 11寺田武史 10島田裕介
FW:9高田保則 20吉本淳
●サブメンバー
GK:22北一真 DF:25田中淳
MF:13山崎渡 FW:24太田恵介 14佐藤正美

メンバーを読むと今までどおりの3−5−2のダブルボランチかと思われましたが、実際のピッチでは、今季初めて4−4−2のトレスボランチで布陣しました。これがプレビューで記されていた「新たな方法にチャレンジ・ターニングポイント」なのでしょうね。

●通常使用3−5−2   ●4−4−2・トレスボランチ   
−−吉本−−高田−−   −−吉本−−高田−−:太田・佐藤
寺田−−島田−−佐田   −−−−島田−−−−:  
−−チカ−−中井−− → -鳥居塚-チカ-−中井-:
−尾本−−−−齋藤−   寺田−−−−−−佐田:山崎
−−−-鳥居塚-−−−   −−尾本−−齋藤−−:田中
−−−−高木−−−−   −−−−高木−−−−:北

以下のフォーメーション画像は、「Questing.jp」さん*2のフォーメーション作成スクリプトを使用させていただきました。いやー素晴らしいです。こういうカッコイイ画像を使用させていただくと、こんなダイアリーでもサッカーブログっぽく見えますな。余計な補足ですが左が3−5−2ダブルボランチ、右が4−4−2のトレスボランチスクリプトでは4−4−2の3ボランチ気味)です。

試合の流れについても、伊藤さんのゲームレポートから。
http://www.jsgoal.jp/news/00036000/00036083.html

【J2:第31節 草津 vs 柏 レポート】逃した魚は大きい。草津、終盤で金星を手放す。柏は痛恨のドロー。
今季初めて鳥居塚をボランチで起用、柏の2列目対策として3ボランチの4−4−2を敷いた草津に対して、柏はキックオフ直後から猛然と襲い掛かる。「前半で勝負を決めるつもりだった」(谷澤)。前線からの迫力あるプレスに草津は防戦一方。ポゼッションが全くできないまま、序盤の時計が進んだ。

監督指示を受けるでもなく選手が風上を選択し、一気呵成に草津を叩き潰すべく猛攻を仕掛けてくる柏。経験豊富で実績も実力も申し分のないブラジル勢を中心とした攻撃は流石に首位のチームでした。またそれを4バックと3ボランチの7人で迎え撃つ草津。これは同じ7人でも3−5−2で両翼が戻る5バックと2ボランチよりも、マンカバー、エリアカバーの双方で効果的な守りが出来たと思います。
どうしてもラインは下がり気味になり、ボールを跳ね返しても、そのセカンドボールを相手にとられてしまっていました。しかし3ボランチのためにセカンドボールを持った選手にも早く寄せが出来、決定的な崩しをされず、シュートも撃たせませんでした。このシステムについて植木監督と選手のコメントは。
http://www.jsgoal.jp/news/00036000/00036041.html
http://www.jsgoal.jp/news/00036000/00036061.html

植木繁晴監督(草津
Q:鳥居塚がボランチに入ったが?
「柏が1トップの後ろに3枚を並べているので、3ボランチにして対応した」
鳥居塚伸人選手(草津
「久しぶりにボランチに入ったが、ゲームが落ち着くまで、守備に回って、ほとんどボールを持つことができなかった」
中井義樹選手(草津
「前半は3ボランチがうまくハマっていて、やりやすかった。チカがリカルジーニョ、自分がディエゴをマークしてサイドに追い込むようにしていった。

鳥居塚さんは、あまり自身を評価したコメントはしていませんが、ボランチ3枚の左に位置したため、柏相手では回数こそ少なかったものの、やや前進してから前線へ配球、サイドチェンジを「島田を経由せずに」展開できました。これで島田のマークが若干緩くなったと思いますし、ボランチがまだ2枚いるのでバイタルエリアが空きすぎることもありません。島田の負担を減らし、効果的な攻めの手段を増やす、という意味では「鳥居塚を前進させたトレスボランチ」は今後もかなり有効なオプションとなりそうです。

しかし、必要以上に前がかりになる柏に待っていたのは大きな「落とし穴」だった。
22分、DFラインでタイミング良くボールを奪った右SB・佐田が柏陣営までドリブルで駆け上がり、サイドに開いた高田へ。「ヤスさん(高田)の動きを待って、サイドに出した」(佐田)。高田が挙げたクロスにファーサイドから駆け込んだのは島田。長い距離を走った島田が左足で捕らえたボールは、柏のゴールネットを鮮やかに揺らす。「ああいう場面は裏に抜けてくることが多いので、ファーサイドに走った。難しいシュートだったがうまく合わせられた」という島田のゴールで、草津が1点を先制する。

島田のシュートがサイドネットに当たったのを眼前で見たときは、これ以上ないくらい嬉しかったですね。流れからのゴールは今季初。記事にはありませんが、FW高田保則のクロスにニアに飛び込んだのはFW吉本淳。彼のつぶれによって、GK南をニアに振ったことで、島田のゴールをサポートしました。それにしても草津の選手がクロスに対して複数の選手がニア、ファーに分かれて飛び込み、一方がゴールするというのはあまり見ない形です。もしかして第1クールの湘南戦、吉本のゴール以来かな。ぜひ今後も続けて欲しいですね。この試合の中でも、引き続き柏の猛攻に耐えて、数少ないチャンスを島田がキッチリ活かして展開したカウンターで逆襲というシーンを数回作り、これまたニア、ファーに選手が複数走りこんだのですが、クロスが敵に跳ね返され、得点に到りませんでした。
勝負の分かれ目としては、この追加点が無かったこと、そして猛攻の中、セットプレーやリカルジーニョのミドル、李のゴール正面でのどフリーのヘディングなどを弾きつづけたGK高木の奮闘、CB2枚で耐えた齋藤と尾本、さらに両サイドバックの佐田と寺田の運動量で、前半を無失点で乗り切ったことでしょうね。佐田は先制の起点となりましたが、寺田もスピードあるオーバーラップ、どうしてもJレベルでは苦戦の守備も献身的にこなし、とても光っていました。強豪相手から勝ち点を獲得する時は、草津は全員が光ってますね。全員が球際厳しく寄せて守備をしていましたし。「もうちょっとなんとかなりそう」というサポの気持ちは、こういうプレーを実際に見ているからだとも思うんですが。

植木繁晴監督(草津
「先制して追加点のチャンスもあったが、勝負どころで点が奪えなかったことが1−1の結果になってしまった」
石崎信弘監督(柏)
「ゲームの入り方は悪くなかったと思うが、決めるときに決めることができずに、前がかりになったところをカウンターから先制されてしまった」
Q:前半からかなり飛ばしていったが?
「先制点がどうしても欲しかったので、最初から行かせた。あそこで点が取れなかったためにゲームが厳しくなってしまった」
佐田聡太郎選手(草津
「自分のプレーからゴールが生まれてよかった。1失点は仕方がないので、もう1点取って突き放したかった」
高田保則選手(草津
「狙いどおりのゲーム展開だった。先制点は、アツシ(吉本)へのクロスが合わなかったけど、シマ(島田)がよく決めてくれた。1失点は仕方がないので、もう1点をFWが取れればよかった。カウンターが単発に終わってしまっていたので、もっと分厚い攻撃ができるようにしたい」
谷澤達也選手(柏)
「前半でゲームを決める気持ちでゲームに入っていったが、全体的にリズムがよくなかった。前がかりになってしまい、空いたスペースを使われて失点してしまった」
南雄太選手(柏)
「第3クールになって相手にべったりと引かれる試合が多くなってきているので、先制されるとキツくなる。今日も先制されて攻めに行ったところで、カウンターを喰らうという悪循環になってしまっていた。ボールの取られ方が悪いので、相手のカウンターへの準備をしないといけない」

草津の各選手コメントの「1失点は仕方ない。2点目をとらないと」という共通意識が植木さんの云うところの「撃ちあい」かと思います。柏相手に前掛かりに攻め続けるのではなく、守勢にまわりながらも「攻めの意識と点取り合いの試合展開」を意識する。確かに先制してからの落ち着き、失点シーンからの立ち直り、ともに早かったと思います。こういう面でのタフさはこれからも必要ですよね。

後半、1点を追う柏は前線にフランサを投入、「力」で得点を奪いに出る。それに対して草津は、ボランチ・鳥居塚を3バックの中央に戻し、守備的な陣形で1点を守る。さらに草津は、最も警戒していた重戦車・ディエゴに対し、田中を投入してマンツーマンを断行。前節・徳島戦でも2得点を挙げたディエゴを抑えるためには、この方法しかなかったとも言える。
ボランチ・中井に代わって入った田中は、気迫のプレーでディエゴを「封印」。マンツーマンは成功したが、それによって中盤に空いたスペース、またリカルジーニョの動きをチーム全体でカバーすることができなかった。そして、78分、フランサからのパスを受けたリカルジーニョがミドルレンジから豪快な同点ゴールを突き刺す。「ディエゴへのマークは、あの状況を考えたらチームとしてそうせざるを得なかった。リカルジーニョのスペースを消せずに失点してしまったことはチームの力。もう一皮むける必要がある」(鳥居塚)。草津は、最後の最後で、つかみかけた「金星」を手放してしまった。

後半も前半と同じく柏の一方的な攻勢でゲームは続きます。そして上記の交代策と失点。ここの交代はとても難しかったと思います。リカルジーニョの豪快なミドル同点弾を見た後からでは、そのケアを考えたくなりますが、リカルジーニョのミドルよりも、たびたびペナルティエリアに侵入するディエゴへの優先マークは採られて当然の措置だと思います。投入された田中淳もディエゴ相手に堂々と頑張りましたしね。ただこれで中井の前線への配球が無くなってしまい、両翼も下がった5バック2ボランチでの守勢が決定し、追加点よりも逃げ切りモードになりました。
前半から攻守に走りどおしの2トップと、流石に警戒万端の柏DF相手ではカウンターの望みは薄く、島田のセットプレーが頼り(実際、同点になってから草津の時間帯が生まれ、後半の得点チャンスは島田のセットプレーから数回生まれた)に。攻勢の交代を意図しても、疲れの見える吉本と、太田か佐藤との交代では、柏の高いラインの裏をとるタイプでない2人には無理があります。この試合に限っては、2人は劣勢時のパワープレー要員であったと思います。あえて替えるとすれば吉本→山崎でしょうか。山崎もサイドの交代要員としてのベンチ入りだったと思いますが。
個人的には、前線からのチェイシング+裏をとるスピード+スルーパスの技量の持ち主、MF里見仁義がベンチにいてくれればなあ、と感じていました。試合展開を考え、ベンチ要員を決めるのは難しいですね。

植木繁晴監督(草津
「ディエゴをマンツーマンにしたのでリカルジーニョが空くのは分かっていたが、あそこから決められては仕方がない。他の選手だったら外していたかもしれない。リカルジーニョの個人の力によって、最後にやられてしまったという印象だ」
齋藤竜選手(草津
「今日はうしろだけが頑張っていたのではなく、前もかなり走ってくれていた。全員が体を張って防いでいたが、最後に1点を取られてしまったので納得がいかない。失点のところは、リカルジーニョが空いたのは分かったが、どうしようもなかった。ブラジル人3人が同時に出てきたらやはり恐い。今日は守りの時間が多かったけど、今後は、守りを攻撃につなげられるようにしていかなければいけない」
高木貴弘選手(草津
「結果を見れば、レイソルに負けなかったことは大きいが、先制したので守り抜きたかった。失点の場面では、リカルジーニョがミドルからシュートを打ってくるとは思ったが、間に人がいて、コースがよく見えなかった。いなければ止められたかもしれないので悔しい」

高木は失点のミドルシュートを一度触っているだけに悔しさ倍増なんでしょう。でも神セーブ連発でしたし、フィールドプレイヤー全員の守備とGKで得た勝ち点1は大きいと思います。ともあれ最終盤の猛攻も防ぎきり、首位の柏と引き分け。柏の勝ち点を2点削ったとも云えるでしょうか。上位の柏、横浜、仙台からそれぞれ1引き分け、4位の神戸からは2勝と、昨季よりも上位陣とも戦えています。昨季は京都・福岡・甲府に全敗でしたしね。

首位・柏から勝ち点1を奪った草津は、リーグ終盤へ向けて確かな手応えをつかんだ。だが、「柏相手に負けなかったことは評価できるが、先制したのでなんとか守りたかった」と高木が話したように、勝負所で耐えられない未熟さもある。柏の戦力差を考慮すれば引き分けは悪くない結果だが、粘りを見せていただけにやはり悔しさも残る。相手が首位を走る柏だった分だけ、「逃した魚」が大きく感じてしまうのだ。

勝ち点3が見えていただけに、失点や追加点を奪えないなど悔やまれるプレーも思い出されますが、4−4−2トレスボランチシステムや、これを支える4バックのCB2人の健闘と両SBの献身的な運動量、ディエゴを相手に力を見せた田中、1失点でめげないチームの意識、などなど好材料も多く得られた試合だったと思います。
加えてバクスタに挨拶に並んだイレブンからは、首位から勝ち点1を得た安堵の笑顔はなく、みな表情に悔しさが浮かんでいました。あれだけ走り回って奮闘し、それでもなおこの気持ちを持っていてくれるなら、まだこのチームは引き出しを増やし、壁を乗り越えてシーズン後半を戦っていけると感じましたよ。

●試合以外での感想あれこれ
・開幕戦ではまだなかった「柏バカ一代」をナマで聞けた。素晴らしい「漢振り」よ。
・テキサスロングホーンをみんな揃ってやってる。
・「果て無き修行まっしぐら」は「ブレーキの壊れたダンプカー」のイキオイなんでしょうか。
・対する草津は「草津節」を続けてコール。
・こういうのも日本オリジナルのサッカーシーンだと思います。とても良い雰囲気。
尾本敬選手にオリジナルコール誕生。「オモト! オモト! オモトケイ!」使いやすい。後はこの試合同様の尾本の活躍だ。
島田裕介選手のオリジナルコール、敷島に響く。初めては熊谷でのコールでしたからね。
・熊谷で歌って以来、口について仕方ないのですが。
・手拍子から入る新コールも。コールリーダーさんの云われるとおり、楽しい感じのコールなので、個人的には勝ってる展開で歌いたい。
・6勝目いつかなあ。次節の鳥栖戦での勝利を期待。

空手バカ一代(1) (講談社漫画文庫)

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