J2第23節セレッソ大阪戦。内容は悪くないものの、中位勢から離される痛い敗戦。

SH772007-06-27

負けちゃいました。今季悪い内容でも勝った試合(第1クール愛媛戦・第2クール水戸戦など)より良い内容で、第2クールのどの試合にもあった「攻撃の行き詰まり感」を打ち破れそうな布陣と施策だったと思いますが、この敗戦で9位との勝ち点差は5から8に開いてしまいました。こちらのほうが痛いですねえ。とりあえずJ's GOALより結果とこの日のメンバーを。
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030320070624_detail.html

●2007 J2第23節(6月24日/敷島県陸/3,665人)
ザスパ草津 0−2 セレッソ大阪
得点 72分:苔口卓也C大阪) 78分:古橋達弥C大阪)
警告 8分:前田和哉C大阪)
交代 26分:小松塁金信泳C大阪) 55分:佐藤正美→高田保則草津)
     75分:松浦宏治桑原剛草津) 83分:秋葉忠宏山崎渡草津)
   89分:香川真司千葉貴仁C大阪

ご存知の通り0−2の敗戦で、1点目はセットプレーからのもの。2点目もあってはならないCBのミスですが、長いシーズンにはこういうミスもあるのだと織り込まなければならないと考えます。まあ無いに越したことはないのですが。なにより草津で一番安定しているCBコンビのチカと藤井がやらかしたのなら、もう仕方ないと割り切るしかないと思います。このシーン以外はDMFの秋葉と松下共々、攻撃的な布陣を後方から良く支えてくれましたし。
やっぱり問題は失点よりも無得点でしょうね。その点を改善すべく、植木さんはこの試合で手をうってきました。まあご存知のとおりノーゴールで負けてしまうのですが、攻守共に手応えはあったと思いますよ。

●2007 J2第23節vsセレッソ大阪 ザスパ草津スターティングメンバー 
GK:1本田征治
DF:6鳥居塚伸人 23藤井大輔 5チカ(C)2寺田武史  
MF:18櫻田和樹 17秋葉忠宏 30松下裕樹
FW:20松浦宏治 11氏原良二 14佐藤正美 
●サブメンバー
GK:22北一真 DF:3尾本敬
MF:15桑原剛 8山崎渡 FW:9高田保則
●キックオフフォーメーション(4−3−3・ドイスボランチ
−佐藤−氏原−松浦−:高田
−−−−櫻田−−−−:桑原・山崎
−−松下−−秋葉−−:
寺田−−−−−鳥居塚:尾本
−−チカ−−藤井−−:
−−−−本田−−−−:北

この布陣から読み取れるのは、やはり攻撃の改善です。現在の問題点として「3人目の動き」の無さ、フィニッシュを担当させたいセカンドストライカー不在が挙げられます。具体的には鳥居塚不在となっている両SHが、なかなかシュートや得点機に絡めないことと、櫻田などDMFもゴール前まで詰めるには時間が足らないことが目に付きます。またサイド攻撃を主としながらも、両SHが精度の高いクロスを送ることが出来ず、またゴール前に詰める枚数も足らないことがしばしばあります。
また全体の配球をDMFの櫻田と秋葉が担当していますが、やはり前線までの距離が遠く、草津の武器である松浦や後藤、高田(昨季はどれだけスルーパスを受けてチャンスをつくっていたか!)といった、スピード系のFWに効果的なスルーパスやフィードを送れていません。やはりDMFの位置からでは遠すぎてタイミングが合わない、というのが正解でしょうか。
これらの対処として、中盤と前線までの距離を縮めつつスルーパスがFWに送りやすい、いわゆるトップ下に櫻田を配置しました。またクロスに詰める人数を単純に増やすべく3トップを採用。これは試合前のピッチアップで、シュート練習時に松浦がクロスを上げる担当をしていたことからも窺えます。松浦がサイドを抉ってクロスを上げれば、氏原と佐藤のクロスからの得点がうまい2人に加えて櫻田もペナルティエリアに詰める形が意図されていたと考えます。また3トップの佐藤と松浦がウイング気味に配置されたことによって、SBとの連携でサイドの数的優位を作りやすくなったことも挙げられます。
また守備面では、両SBがただでさえ攻撃な2人で、かつ相手陣地のバイタルエイアでの攻防の劣勢をフォローするために(SH2人からトップ下の1人に変更しているため)SBはイキオイ上がり気味になってしまいます。これをフォローするCB2人とDMF2人の働きは特に重要になりますね。今までの櫻田の位置には松下が入りました。結果的にこの試合では2失点になってしまいましたが、この4名が完全に崩された場面はほとんどなく、前掛かりなチームの後方の大きなスペースを良く守ってくれたと思います。逆説的ですがチカと藤井、秋葉と松下の4名がいなければ組めない攻撃的な布陣だったとも云えるのではないでしょうか。導入1試合目の結果は残念でしたが、今後に目処が立つ内容だったと思います。守備は合格としても、それだけリスクを負って強化した攻撃はどうだったのか。試合の流れを追いつつ触れていきたいと思います。伊藤寿学さんのJ's GOALのレポートから。
http://www.jsgoal.jp/news/00050000/00050511.html

【J2:第23節 草津 vs C大阪 レポート】ゴールが遠い草津は4試合連続無得点で2連敗。C大阪は4試合連続無失点で4連勝。
(前略)
3試合連続ノーゴールという嫌な流れを断ち切りたい草津は、氏原を頂点として右に松浦、左に佐藤という3トップを形成。トップ下に櫻田を配置する4−2−1−3の攻撃的なシステムで、ベーシックな4−4−2を敷くC大阪に挑んだ。序盤は草津のペースだった。激しいプレスで奪ったボールを小刻みにつないでチャンスを演出。両SBの鳥居塚、寺田からのクロスでゴールへと迫る。しかし、C大阪草津のシステムを把握し始めた20分過ぎから、草津の攻撃は迫力を失っていく。「相手の守備が揃う前に攻めきるスピードが必要だった」(植木監督)。

立ち上がりは草津が櫻田の位置取りが奏功し、安定したパス回しで主導権を握りました。セレッソは雨のアウェイ、新監督のチームつくりの過程、若いながら頼もしいFW陣の不在など、いくつかの悪条件が重なったためだと思われますが、サイドチェンジや短い距離でもパスミスが多くサイドラインを割るシーンが目立ちました。3連勝中とはいえ、この試合が絶好調というわけでもなかったわけですね。
ただ草津も前方に人数を増やしてペースを握った割に決定的な場面を多く作れなかったのは、まだ導入1試合目のシステムであった部分が大きかったと思います。右のウイングに入った松浦に送られるフィードは、ゴールラインを割ることがしばしばで、松浦に収まらずクロスを上げるにも到りませんでした。また松浦は止まった状態から動きだして相手を抜くよりも、スピードにのった状態でボールに追いつき、そのまま切れ込んでいくタイプなので、もう少し精度の高いパスを送れないと松浦は活きてこないでしょうね。
左ウイングとして久々に先発した佐藤正美は、足下でボールを受けるものの、格好のシュートチャンスには慎重になりすぎ、DFに前を塞がれるとドリブルで横に逃れていって最後にはボールロストする場面が印象的でした。全体的にパスミスも多く、後方から追い抜いてサイドを駆け上がるSB寺田も見えていないのかほとんど使えず。3トップの一角に入りながら、攻めあがる味方達が前線で交通渋滞を招くフタになってしまいました。
ボールを高い位置で受けられるのですから、あまり難しく考えずに持ち味を活かしてペナルティエリアにドリブルで突撃していったほうが活路が開けたのではないかと思います。チェイシングなどは頑張っていたので、体はキレていたと思うのですが、スタメン奪取というまでのアピールにはならなかったと思います。逆にこの布陣で佐藤正美の位置に高田保則がそのまま入っていたらなあ、と思ってしまいました。
というわけで序盤は、ボールをキープ出来るものの中央では攻守ともに人数が多すぎて繋げず、サイドからのクロスも攻め上がった鳥居塚が上げるしかないような状況になってしまいます。3トップの一角にもう少し高い位置で攻撃が組み立てられる選手が必要なんでしょうね。
20分すぎからは草津の攻撃に慣れたセレッソも攻勢に転じ、縦に早いセレッソと回して押し上げる草津の攻防に推移していきました。

28分、C大阪はカウンターから苔口が自慢の快速を披露。右サイドを稲妻のように切り裂くと、チカを簡単に振り切ってクロスを上げる。得点には至らなかったが草津へ与えたインパクトは大きく、それを機に草津の両ウイングは守備に追われることになる。機能しない3トップに堪りかねた植木監督は後半から、4−4−2のシステムに変更。仕切り直しを図るがチャンスを決めきれず時間は進んでいく。

セレッソは元々攻撃力のあるチーム。押し込まれる時間帯は想定の範囲内だったと思います。草津セレッソ共に決定機を決めきれずに前半は終了。0−0で折り返します。
後半、植木監督は佐藤正美を高田保則に替え、氏原と松浦を2トップ、高田と櫻田がSHに入る4−4−2の従来の布陣に戻しますが、前半高い位置でボールに絡んでいた櫻田が下がり気味になり、高田のポストプレーが相手に狙われて攻撃を組み立てられないまま時間が過ぎていきました。

試合を決定付けるゴールはセットプレーから生まれた。72分、C大阪がゴール正面ペナルティアーク付近でFKを得る。古橋、ゼ・カルロス、香川がボールを囲むとコンビネーションプレーからゼ・カルロスが左足で強烈なシュート。GK本田が左手を伸ばしブロックするも、そのこぼれ球に苔口が反応。必死に滑り込んだチカのタックルよりも先に右足を振り抜き、豪快にゴールネットを揺らしてみせた。草津としては、本田が好セーブを魅せただけにクリアしなければいけないボールだった。こぼれ球をきっちりと決めたC大阪に対して、草津には勝負への甘さが垣間見えた。

このセットプレーを生んだファールは、チカのハイボールの競り合いだったのですが、厳しすぎる印象でした。まあこぼれ球を苔口よりも追えないのは確かに問題でしたね。運不運もあると思いますが。

草津はその5分後、DFのミスから古橋にゴールを献上。2点のビハインドとなったチームは捨て身の攻撃を見せ、2度3度の決定機を迎えるが肝心のシュートが枠に飛ばず、スタンドからはため息の連続。そしてゴールを奪うことなく無情のホイッスルを迎えた。「点が取れないと勝ち点3は取れない。流れの中でダメならセットプレーからでも決める必要がある。セレッソはそういう所ができていた」(秋葉)。

チカと藤井のパスミスから生まれたピンチがそのまま追加点となってしまい、ゲームは事実上終了。桑原と山崎を投入し、チカを前線に投入したパワープレイも奏功せず無得点で試合を終えました。セットプレーでチカが素晴らしいヘディングを見せた場面もあり、決してノーチャンスではありませんでしたが、多くの課題も見えました。
攻撃に移ったときに、前線で動き出している松浦や高田を見ずにボランチに一旦下げてゲームを組み立てるような形に拘りすぎ、相手が守備を整えて待ち構えているところに精度の低いクロスを上げたり、中央突破をはかって潰されたりの繰り返し。攻撃の緩急が求められる試合でした。

またしてもゴールを割ることができずに2連敗となった草津だが、目指す形は見えている。次は、その形をゴールへとつなげる執念を見せて欲しい。いや、見せなければならない。「大事にやろうとしているのか攻撃に迫力が感じられない。点が入らないのは力不足に集約されるが、原因が必ずあるので追求しないといけない。もうごまかしは利かない」と佐野コーチ。草津は今、1点の重みをしっかりと受け止めなければならない。

櫻田が高い位置に陣取れることが分かり、松下と秋葉で安定したDMFが組めるのも収穫でしたね。松下が常時出場でき、精度の高いセットプレーキッカーが務められる利点もあります。
そして佐野さんの云われるとおり、やや曖昧になっている前線の動きだしとパスの送り手との呼吸、クロスに合わせた攻め上がりの人数と位置などクリアにされれば得点が近づくと思います。長いシーズンのツライ時期ですが、開幕からの攻守に対応された行き詰まりは、1年で必ず迎えなければならない時期だと思えます。ここを打破しなければシーズン後半は戦えない。まったく悪い試合内容でもないので、諦めずに戦っていって欲しいですね。弁当の呪い?も終わることだし。