サラマンダー、着想の魅力と限界。

設定も着想も良いのです。

感想を残しておこうと思った映画シリーズ、その5。

●サラマンダー(2002/英・アイルランド・米/103分)
http://www.salamander-jp.com/index.html
監督:ロブ・ボーマン
脚本:グレッグ・チャボット/ケヴィン・ペテルカ/マット・グリンバーグ
原案:グレッグ・チャボット/ケヴィン・ペテルカ
特撮:リチャード・R・フーバー/デビッド・ガウシアー
出演:クリスチャン・ベールマシュー・マコノヒーイザベラ・スコルプコ/ジェラード・バトラー
コピー:生き残りたいなら、空だけ見てろ。
●あらすじ
舞台は現代のイギリス。
ロンドンの地下鉄工事現場から、かつて恐竜を喰らい絶滅させ、永い冬眠に入っていたサラマンダーが甦った。それを目撃したクイン少年はからくも脱出に成功するが、高熱の火炎を吐き自在に飛行するサラマンダーには近代兵器も通用せず、サラマンダーは群れをなして、全世界を焼き尽くしていった・・・。成長したクイン(クリスチャン・ベール)は、生き残った人々のリーダーとして砦に立て篭もって暮らしていたが、サラマンダーを恐れる日々は続いていた。そんなある日、アメリカからサラマンダーと闘う武装集団が砦に現れた。

近代の兵器対古代の飛竜の戦争アクションかと思いきや、社会崩壊後の世界で飛竜に人間が追いかけまわされる話。古くはベルヌの「宇宙戦争」、最近では「28日後」と欧州と米国の差みたいなものを感じる作風でもある。

古城に立て篭もる中での食料確保の問題、サラマンダーはもちろん同じ人間の野盗集団に備える日々の活動、子供たちのためにクインと友人が演じてみせる「スターウォーズ」の寸劇・・・。崩壊後の小さなコミュニティの描き方が思いのほか丁寧。コミュニティを守る使命感と現状の限界を悟り苦悩するリーダーをクリスチャン・ベールが熱演している。「リベリオン」とは表現が真逆の人物像だが、うまくこなしており、ベールの俳優としての実力を窺がえた作品でもあった。

さらにアメリカ人たちが考案した、ヘリから地上に落下するまでの17秒間で、サラマンダーの翼を封じようとする、スカイダイバーチームと飛竜の駆け引きが息詰まる「命知らずの天使」作戦など、アクション部分でも魅力的な展開が。

ただ、魅力的な世界を構築しながら2時間の映画として決着をつけなければならないし、また面白い設定が満載ながら予算が足らなかったのだろう、展開がどうしても気ぜわしくなってしまったのが残念。1本の映画としては充分に面白いのだが、B級映画には似つかわしくないくらい素晴らしい着想と設定がアダとなり、消化不良の印象を与えてしまう少し損をしている作品である。こういう作品の監督と脚本家は次回作を注目する楽しみもあるのだけれど。*1

*1:ひとつ難を云えば、核兵器でも死なない設定にしなければならないと世界が崩壊しないので、主人公たちが銃や刃物で飛竜を倒せるのが矛盾と云えば矛盾。