思えば、あの時あのチームは楽しかった。その1。

数年前にあるメルマガで載せてもらっていたコラムを手直ししての掲載です。

◆コラム 思えば、あの時あのチームは楽しかった。
−第1回− PHILADELPHIA EAGLES'92

このコラムでは「あの時のあのチームは、良いチームだったなあ」と、なつかしく振り返ることが出来るチームを掘り下げて紹介してみたいと思います。第1回は「ダラス・ダイナスティ」の抵抗勢力? 92年のイーグルスです。QBランドール・カニンガムと強力ディフェンス「ギャング・グリーン」を、まだご記憶の方も多いのではないでしょうか。

PHILADELPHIA EAGLES'92 −デンジャラスQB&ギャング・グリーン−
レギュラーシーズン:11勝5敗(NFC東地区2位/Wild Card2位)
レイオフ最終成績:NFC Div.Playoff at DAL 10-34 Lost
攻守成績:攻撃/ラン2位・パス21位:守備/ラン5位・パス17位
ヘッドコーチ:リッチ・コータイト(就任2年目)

●92年時のチーム状況
当時のフィラデルフィア・イーグルスは88年から4シーズン連続で10勝以上を挙げており、絶えずスーパーボウル出場候補の一角でした。この92年は攻撃陣では負傷明けのQBランドール・カニンガムの復帰とラン攻撃強化のためにRBハーシェル・ウォーカーが加入。守備では天才コーチ、バディ・ライアンの育成した強力守備陣が健在であり、レジー・ホワイト、セス・ジョイナー、クライド・シモンズ、エリック・アレンらが主要ポジションを固めていました。

現在のFA制度時代から見れば垂涎もののタレント集団ですが、過去4シーズンではプレイオフでの勝利がないという事実もあり、「才能を充分に発揮していないチーム」という批判もありました。

この能力はありながら勝ちきれないPHIにシーズン前、衝撃がはしります。先発DTジェローム・ブラウンの交通事故死のニュースでした。プロボウル出場を果たすほどの選手の死は戦力的にも、精神的にもチームに動揺を与えましたが、チームは「JBのために」という合言葉の元に結束を固め、必勝の気合と共にシーズンに突入。台頭著しいダラス・カウボーイズも撃破する開幕4連勝をとげ、レギュラーシーズンを11勝5敗でプレイオフ進出を果たします。プレイオフでは80年以来という勝利を挙げますが、その後DALに敗れてシーズンを終了しました。

現在から俯瞰すれば、この92年がPHIのSB出場最後のチャンスのシーズンでした。SB優勝を遂げている地区内ライバルニューヨーク・ジャイアンツワシントン・レッドスキンズは明らかに下降期に入っており、上昇期のDALと円熟期のPHIでの勝負の年でした。

翌93年は開幕5連勝のあとカニンガムの負傷で、シーズン8勝8敗。その後は、FA制度の導入とオーナー交代劇のドタバタもあり、櫛の歯を挽くように続々と選手はチームを去り、戦力は低下していきました。

コータイト後任のレイ・ローズHC時代にもプレイオフ出場を果たしたシーズンもありましたが、抜本的な戦力再構築は、QBドンヴァン・マクナブの成長まで待つことに。2000年も11勝5敗でプレイオフ出場と、92年と同じ結果は残せましたが、90年代前半の圧倒的な破壊力を持つPHIの再現とまではいっていないように思えます。現在のPHIが「あの頃のイーグルスは強かったなぁ」と云う思いを忘れさせてくれるのは、もう少し先でしょうか。(追記。その後NFCチャンピオンシップまで2年連続で勝ち進むなど、すっかり強豪の一角として復権したイーグルス。もう「あの頃」を懐かしむ必要はなくなったかな?)