沖縄かりゆしFCと、九州リーグ。

ガンバレ、カトキューさん。

自分は群馬県人ながら、やたらと気にする九州リーグと所属クラブ。これはもちろん「目指せJ」のチームなど強豪揃いの面白いリーグだから、という点もあるけれど、父方の実家が鹿児島で九州各地や沖縄にも親戚がいたりするため、という点もあったりするですタイ。昔から色々な話を聞かされたり自然と注目していたりするので、身近な気がする所為もあるのかな。

さて、九州リーグで今一番気になるのは、今季限りでメインスポンサーが撤退することが決まってしまった、沖縄かりゆしFC。これについて、今週のサッカーダイジェスト加藤久監督兼GMが連載記事で現状を語っている。

●サッカーのつぼ・第58回かりゆしFCメインスポンサー撤退――いま、私が選手のためにできること

このチームの将来はどうなるんだろう――選手がそう思いながら毎日を過ごさなければならないということは、本当に辛いことだと思います。

なぜそう思うかというと、(中略・メインスポンサー撤退について触れて)いままさに「このチームは、来年どうなるんだろう」という思いを抱いている選手を指導しているからです。

つづいて撤退のニュースは最初、新聞記者から聞かされたことに言及。その時の加藤監督の返答は以下のとおり。

「本当ですか? でも昨年2月に私が監督に就任する際に、かりゆしFCは本気でJリーグを目ざしていますと言って、オーナーが手書きの資金計画を僕にくれたんですよ。それには2008年までの資金計画が書かれているんです。それに、このチームは2002年12月に選手が集団退団し、昨年2月に選手が誰もいないところからチームを作ったんです。(株)かりゆしのオーナーは、その時にFCの社長も兼任していた人物ですよ、そんな無責任はしないでしょう」

2002年に沖縄かりゆしFCの中心的人物だったラモス氏が退団。これはフロントは早期のJFL昇格を意図していない、という方針がラモス氏と衝突したため、と云われている。ほどなく選手全員が退団して、彼らを中心にFC琉球を旗揚げした。沖縄かりゆしは解散か、と思われたが、加藤新監督が選手を集め、チームを編成して昨季は九州リーグを制覇、全国地域リーグ決勝大会まで駒を進めている。*1

加藤監督の手腕で九州屈指のチームになり、JFLも指呼の距離に近づいたも関わらず、たった1年でメインスポンサーは撤退を決めた。状況が変わるにはあまりにも短期間すぎる。FC琉球へのあてつけで新チームをつくっただけだ、なんて陰口を裏付けるだけなのではないだろうか。

サッカー界では、過去にもメインスポンサーの撤退という例はありました。しかし、止むに止まれず本業に専念する場合でも、発表の前に、選手や監督、下部組織の父母、県サッカー協会などの、いわゆるサッカーファミリーには、事前に説明するのが最低のマナーでした。

正直言って腹が立ちましたが、そういう場所を選んで来てしまった自分を責めるしかありません。

加藤監督は、かりゆしFCからオファーがあった時に、あるJリーグ関係者からは「集団退団が起きるようなクラブには関わるな」*2と止められたことに触れ、さらに「沖縄からJ」という看板を信じて集まった選手たち、サッカーに集中しようと努めているが人間である以上、内心は怒りと不安と苦しんでいるだろう彼らのためにも自分の為すべきことと、責任は何かと考えつづけていたことを述べている。直接は言及していないが、自分がこの仕事を引き受けたが為に、(無責任なフロントとスポンサーが運営していた)沖縄かりゆしFCが存続し(結果的にとは云え)集まった選手が苦悩していることにも責任を感じられているのではないだろうか。

私が選手のために出来ることはなにか。それは、新たなスポンサー獲得のために動くことだと思い、現在地元の方の紹介を受けて、いくつかの企業に話をしています。後ろ盾ができないで、チームの存続は有り得ないからです。

ホテル業、観光業は、この島を支えている主力業種ですが、いまは、(株)かりゆしというホテル業を営む企業がスポンサーから撤退したことをチャンスと捉えるしかない。それが私の考えです。つまり、ひとつのホテルがサッカーチームの運営から手を引けば、その他の多くのホテル業、観光業、サービス業を営む企業がこのチームを支えてくれる可能性が出てくるということです。

本来の仕事に加えて、自らの責任を果たすべくスポンサー探しも始めた加藤監督。スポンサー料は払えないがフロントはつづける、としている現フロントはなにをしているのだろうか。加藤監督の構想は(草津や各地のチームのように)観光業界全体で各企業が少しづつでもスポンサードしてくれる形態が取れれば、とされていると思う。また本来そうあるべきものだったのかもしれないし、メインスポンサーがなくなる今、広くスポンサーを募集できる好機なのかもしれない。

公共性のある電力会社などが新スポンサーとして名乗りをあげ、運営の中心になってくれれば申し分ないと思います。ただし、地域リーグからJFLに昇格せずに、スポンサーをお願いすることはできません。チーム存続のためのハードルは極めて高いのです。

そんなに上手くことは運ばないことは承知しています。しかし、選手のためにやれるだけのことはやってみる覚悟です。

平易な表現で淡々と語られる加藤監督の文章から、秘めたる決意と今後の困難を感じさせられる。選手と加藤監督、本当にがんばって下さい。理想は今のフロントやらと縁が切れるようなスポンサーと、加藤監督兼GMの負担が減らせる運営のプロの存在だろう。どこかにいないか。

最新の九州リーグの結果は、いつも重宝させてもらっています、こちらに詳細が。
http://jujkko.at.infoseek.co.jp/kyu/
九州リーグはH&Aではなく、各県もちまわりの土日での集中開催方式。
http://jujkko.at.infoseek.co.jp/kyu/nittei1.htm

第9節(6月26日)
沖縄かりゆしFC 1−2 ヴォルカ鹿児島
アルエット熊本FC 11-1 サン宮崎FC
新日鉄大分 1−0 三菱重工長崎
ホンダロック 4−0 大隅NIFSユナイテッドFC
ニューウェーブ北九州 2−3 海邦銀行SC

第10節(6月27日)
大隅NIFSユナイテッドFC 0−7 沖縄かりゆしFC
三菱重工長崎 2−3 ヴォルカ鹿児島
ホンダロック 5−2 アルエット熊本FC
海邦銀行SC 0−5 新日鉄大分
サン宮崎FC 2−1 ニューウェーブ北九州

鹿児島の「目指せJ」クラブ、ヴォルカ鹿児島に今季初黒星を喫してしまうも、翌日は7−0で快勝。しかし前節まで2位だったホンダロックが2連勝したため、沖縄かりゆしは首位の座を明渡すことに。
http://jujkko.at.infoseek.co.jp/kyu/juni.htm

●九州リーグ第10節までの順位表
01:ホンダロック−−−−−9勝1敗−−−−:勝ち点27:得失点差+27 
02:沖縄かりゆし−−−−−8勝PK1勝1敗:勝ち点26:得失点差+28 
03:ヴォルカ鹿児島−−−−8勝PK1勝1敗:勝ち点26:得失点差+15 
04:アルエット熊本−−−−5勝PK1敗4敗:勝ち点16:得失点差+12 
05:新日鉄大分−−−−−−5勝PK1敗4敗:勝ち点16:得失点差+04
06:ニューウェーブ北九州−4勝PK1敗5敗:勝ち点13:得失点差−05 
07:海邦銀行−−−−−−−4勝6敗−−−−:勝ち点16:得失点差−18 
08:三菱重工長崎−−−−−1勝PK1勝8敗:勝ち点05:得失点差−15
09:大隅NIFS−−−−−1勝PK1勝8敗:勝ち点05:得失点差−22 
10:サン宮崎−−−−−−−1勝PK1敗8敗:勝ち点04:得失点差−26 

1位チームのみ全国地域リーグ決勝大会出場。

*1:この時、JFLに昇格できていたら状況は変わっていたのだろうか? 今となっては確かな答えは出ないことながら、当初からのメインスポンサーの「本気」と云うわりには、ぶれる消極的な姿勢を観ると、遅かれ早かれ似たような状況(=スポンサー撤退)になっていったと自分は思う。またこのエピソードは新チームをゼロから作り上げ、そのチームでリーグ制覇まで到達した加藤監督の手腕を証明するものだと思う。

*2:FC琉球はもちろんゼロからスタートだから県3部リーグ、アマチュア中のアマチュアからである。JFL目前だった沖縄かりゆしから見れば大幅な後退であるのは間違いない。Jリーガーを目指す選手が多い中、その全員が県3部のチームに移ることを選んだ、という現実は重いと思う。