JFL後期第7節、「母さん、蔵川洋平ってスゲーんだよ」なゲーム。

SH772004-09-23

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群馬FCホリコシ(勝ち点30・6位↑)3−3 アローズ北陸(勝ち点26・12位→)
(9月5日13:00/群馬県前橋市敷島公園サッカーラグビー場) 
群馬FCホリコシスターティングメンバー
−−−−−-森-−−−−−:
−藏川−−奈良−−町田−:
−−−羽山−−小山−−−:
深田−三本菅−小川−神田:
−−−−−井坂−−−−−:
アローズ北陸スターティングメンバー
−−−−−北川−−−−−:
−永濱−−上園−−川上−:
−−-川崎−−山本翔-−−:
小柴−−畑−−三好−高橋:
−−−−−平地−−−−−:
●得点経過
03分:上園和明(アローズ)
14分:川崎元気(アローズ)
25分:三好拓児(アローズ)
43分:町田多聞(群馬)
85分:森陽一(群馬)
89分:蔵川洋平(群馬)

なにげに天皇杯群馬県代表VS富山県代表になったこの試合。得点経過を見ての通り、前半と後半では、まるで展開が違ったが、その大きな要因は、群馬FCホリコシの布陣にあった。

試合開始30分前に入場し、全体が見渡せる座席につく。そこから後ろを振り返ると、スタント最上段のビデオ係席に群馬FCホリコシ不動のボランチである山田智也選手の姿が見えた。カード累積ではないのでコンディションのためだろうか。こうなると群馬FCホリコシのスタメン布陣が気になる。で、上記の形に。山田の位置に通常右SBをこなしている小山大樹が、小山の位置には逆サイドからSB神田文之が入っている。神田のポジションはMFも務まりFKも蹴るマルチな深田慶太が埋めた。個々の普段のプレーぶりから考えると、群馬FCのサイド攻撃は左からの展開が多くなると思われるが、さて。

対するアローズ北陸は、サガン鳥栖からレンタル移籍したばかりのDF三好拓児を先発起用。「特攻隊長」川崎元気と山本翔平がDMFとして中盤の底に。川崎はゲーム開始まえの整列の時から、スタンドにメンチ切っているのですが仕様ですか。
トップ下には昨季まで水戸ホーリーホックに在籍し、7月半ばからアローズに加わった上園和明が入る。先日サガン鳥栖から移籍してきたばかりの三好と森惠佑はともかく、上園までアローズ&JFL公式の両方でいまだ名前も背番号(19です)も記載がないのはいかがなものでござろうかな。

さて、ゲームはキックオフからアローズが押す展開。中盤中央で攻撃を組み立てる群馬FCのMF奈良安剛を山本翔が徹底マークし、川崎と共にボールを奪取。素早くボールを(群馬FCから見て)左サイドに渡してサイド攻撃を展開し、群馬FCもう一人の攻撃の組み立て役のMF藏川洋平に下がり目の守備を強いて、彼の攻撃参加を封じる。この攻撃が早速奏功して前半3分、DF陣のマークがずれたところに上園がゴール正面でボールを受け、きっちり決めて0−1。
ホームで先制された群馬FCは、8分に山本翔のイエローで得た30mFKや12分に右サイドからのクロスにゴール正面でスライディング気味に飛び出した藏川のシュートなど惜しい場面はあるものの散発に過ぎず、ほとんど攻撃が機能しない。
この日DMFに入った小山が不慣れなポジションゆえか攻守どちらにも中途半端で絡めず、普段あれほど危険な右SBとして群馬FCの攻守に貢献している(=ザスパ草津を脅かす)小山がボランチの位置ではピッチ上の迷子も同然。サッカーとは難しい。小山くん気にするな。君の実力はあんなものじゃない。
ボランチの小山と右SB神田との連携はなきに等しい形で、普段両サイドに分かれている同士ゆえ意思疎通が難しいのか。また右ウイングの町田も釣られて下がり守備に奔走。というか右サイドを担当する3人の役割分担が崩壊しておりグダグダに。小山と神田のどちらかが攻め上がった時の空いたスペースのケアがされておらず、右サイドとDFライン前のバイタルエリアをかわるがわるアローズに使われ放題にされている。
リードされているので小山がやや前のめりなせいもあり、群馬FC4バックの前に北川、永濱、上園、川上のアローズ攻撃陣が同数で並ぶような場面が頻発し、そこに山本翔や川崎からパスが供給される失点危機が連続する。そしてついに12分、攻め上がってきた川崎に決められ、0−2。さらに25分にCKから移籍直後の三好がヘディングでゴール。移籍後イキナリのデビュー戦で攻守に貢献する頼もしさを発揮した。0−3。
上記の通りアローズは前線で数的同位か優位にあるのでボランチコンビから盛んにボールをゴール前に送り、また群馬FCは中盤が機能していないゆえサイドか前線にロングボールを放り込むので、中盤の無いままゲームは続く。互いの放り込みサッカーはなぜか群馬FCに多くのチャンスをもたらした。20分に奈良のヘディング、25分には森陽一のキーパー正面でのシュート、40分には無人のゴールに入れるだけの森のヘディング。ところがこのいづれも枠を外してしまう群馬FCのツキの無さ。40分のシュートなどスタジアムにいた全員がゴールを予想しただろう、ボールがゴールの後ろに転がっていった時には「あれ、ネットを突き破った?? まさかねぇ?・・・外したのか!」というような驚きの声やらタメ息やら。
0−3からの追撃弾と思われたエース森のヘディングが外れて意気消沈する群馬FCだが、チームの大黒柱たる藏川洋平がここから思い切った動きを見せる。
残り時間との兼ね合いとプレーの流れもあったが、存在感をなくしていた小山の位置に自らが入り、小山を1.5列目に上げて攻撃に集中させ、中央でのボールの受け手を増やす。右ボランチの位置の収まった藏川は精度のあるミドルパスを散らし、右SB神田の上がりもケアして群馬FCの攻撃を組み立てなおす。その直後の43分、右サイドを安心して駆け上がる神田に藏川がロングパス、これを受けた神田は中央にドリブルで切れ込む。マークにつくアローズの選手を中央に張った小山とのワンツーでかわしてさらにゴール前に突進する。殺到するDF陣とGKに神田がシュートコースの無さを見切ったか、後ろに続いていたFW町田多聞にバックパスを選択、町田はほぼノーマークで正面からシュートして1−3。前半のうちに1点返せたこと、いつもの布陣に近い形(中盤の底が安定)に戻してから途端に得点出来たことが、最後に試合の結果をも左右した。

後半開始。アローズは前半と変わらずだが、群馬FCは左SBの深田を下げて、快速ドリブラーのFWダニロを投入。布陣も以下の通りに変更した。とにかく2得点必要なのだ。

群馬FCホリコシ後半開始時
−−−−−森−−−−−−
ダニロ−−奈良−−町田−
−−−羽山−−藏川−−−
神田−三本菅−小川−小山
−−−−−井坂−−−−−

両SBはいつもどおりに戻る。正確な長短のパスが出せ、攻守の勝負どころを読み、的確なプレーが選択できる藏川がボランチに。GK以外はなんでも出来るのな藏川は。ほぼ通常どおりの型になり個々の役割が明確になった群馬FCは、2点のビハインドを追いつくために猛攻を開始する。後半5分にCK、6分には藏川のミドルシュートとチャンスは増えるが得点ならず。
右SBの位置で本来の攻撃的なSBに戻った小山の相手をしていたアローズの左ウイング永濱裕規に代えて右SBに移籍直後の森惠佑を入れる。そのままの位置交代ではなく、全体的にポジションをずらして、空いた右SBの位置に森が入る形。この応対が小山の攻撃参加を遅らせ、逆に投入直後で元気な右SB森の積極的な攻撃参加でアローズが逆撃の形を作ってゆく。森くんは水分補給時などに群馬FCの選手に話しかけられ談笑する場面多し。「JFLどうよ?」なんて聞かれてたのだろうか。
後半開始からの群馬FCの攻め続けが一段落してしまい、後半20分くらいからアローズが反撃を開始する。22分には元水戸のFW北川佳男のドリブル突破からのシュート(これは惜しくもバー)、25分には川崎元気の判断良いパスカットからドリブルで切れ込んでのクロス、直後の26分にはまたもや北川が上園とのワンツーからペナルティエリアに進入してのシュートと再三ゴール前でシュートを放つもこちらも追加点ならず。
群馬FCの池田監督は流れをふたたび引き寄せるべく、疲れの見えてきたFW町田とMF奈良を下げてFW阿部巧也とMF北原健二の同時2枚交代。これで3枚のカードは全て切った。後半30分くらいからは互いに膠着の時間となり時計は40分に。ここでアローズは2点差の逃げ切りを選択かCB畑を同じくCBの島袋に交代。ところがこの交代直後のマークの甘さだったのか、42分にダニロのドリブル突破を許してしまい、ゴール正面の藏川にボールが預けられる。藏川はあせらず後方から走りこんできた森陽一にバックパス、森はそのままゴールエリアに進入するが、アローズDFが森を倒してPKにしてしまう。このプレーは仕方ないか。これを森が決めて2−3。
直後の43分にアローズは川崎元気に代えてDF村川佑馬に。群馬FCはなおも攻め立てるが、なかなか厚く守るアローズのゴール前で決定機を作れないままロスタイムに。一度は森&ダニロでゴール前まで迫るが得点にならず。ロスタイムもすでに3分経過、という頃に(多分)阿部が倒されて群馬FCがゴール正面20mくらいでFKを得る。これがホイッスル前の最後のプレーであることは明らかだった。キッカーは藏川。この土壇場で藏川は「練習どおり」と試合後インタビューで語った美しいドライヴシュートを壁越しでゴール右スミに叩き込んだ。キーパーは動けず。3−3。
ゴールしたボールがゴール外に転がり出たため、一瞬外れたのかと思ったが、藏川とベンチから飛び出してきた選手たちが抱き合って喜んでいるので得点だと判った。あまりに一瞬かつあっけなく決められた同点弾に、くやしさがまだ沸いてこないようなアローズのキックオフ、センターサークルからのロングシュートが外れたところでゲーム終了。群馬FCは0−3からの追いついての勝ち点1、順位を6位に上げた。
群馬FCホリコシを支えるMF藏川洋平とFW森陽一の元横浜FMコンビは、現在のプレーぶりを見ると、正直JFLでは勿体無いレベルにある。彼らを見ていると、NFLのスカウトや人事担当が良く口にする言葉を思い出す。「ストロングポイントの控えに注目せよ」。あるチームでリーグの代表クラスの選手が同一ポジションに並ぶことがある。そのポジションの控え選手は能力が控えレベルなゆえに控えなのではなく、チームメイトがリーグを代表する選手なゆえにレギュラークラスの実力を持ちながら控えに甘んじている者がいるのだ、と。他のチームに移れば立派にレギュラーが務まる者たち。だから、そういう境遇で解雇された選手は「解雇された控え」ではなく、必ず一度は注目してみるのだ、と。
Jリーグスカウト諸氏、もう一度注目するだけの好選手はJFLにいますよ。ただザスパサポ的には、散々苦汁を舐めさせられた藏川洋平森陽一のコンビには、なるたけザスパ草津と遠いところで活躍してもらいたいのだけど。