天皇杯5回戦「横浜Fマリノス−ザスパ草津」。死闘を制しVゴール勝利の大金星!

SH772004-12-16

よくやったぞ逆境ナイン、じゃなくてザスパ草津イレブン! NHKスポーツオンラインより。
http://www.nhk.or.jp/s-live/tennohai/result/fs_res_r5.html

●横浜FM 1−2v ザスパ草津 (19:00/仙台)
得点者
前半29分:宮川大輔ザスパ草津
後半38分:奥大介(横浜FM)
延長前半11分:依田光正ザスパ草津
警告
前半9分:奥大介(横浜Fマリノス
前半22分:籾谷真弘ザスパ草津
後半18分:山口貴之ザスパ草津
後半29分:山口貴之ザスパ草津)→累積退場
後半40分:籾谷真弘ザスパ草津)→累積退場
延長前半11分:尾本敬(横浜Fマリノス

スポーツ紙はもちろん一般紙でも取り上げてくれていますが、下の上毛新聞の写真が個人的には一番。さすが地元紙かつメディアパートーナーだ。

倒れこんでしまった尾本くんには悪いけれど、決勝点を挙げた依田と佐藤の、この熱い抱擁を見るだけで涙モノ。この戦いをJ's GOALの記事を引用しつつ、ザスパ草津サポとして情報を補足しながらアップ。
http://www.jsgoal.jp/club/2004-12/00014641.html

●第84回天皇杯全日本サッカー選手権 5回戦 横浜FM 1-2v ザスパ草津 (19:00/仙台)
この試合、横浜F・マリノスは予想どおりチャンピオンシップに出場したほとんどのメンバーがコンディション的に整わない。11人のメンバー中、田中、ドゥトラ、奥とチャンピオンシップにも先発したのは3名にとどまった。とはいうものの栗原、那須、大橋、佐藤由、安永と連なるメンバーの個々のポテンシャルは大きくザスパ草津を上回っている。だがチームとすると、そして一発勝負のトーナメントならこの数値が比例するとは限らない。

チャンピオンシップから大幅なメンバー交替を余儀なくされた横浜Fマリノスだが、ザスパ草津の先発と陣容もJFLリーグ戦とは、大きく異なるものとなっていた。メンバーとフォーメーションは以下の通り。BGMは「草津節アップテンポバージョン」で。オオオーオオオーオーオオオーオオオオオー草津〜 オーオオオーオーオーオーーオオオーオオオーオー草津〜♪ 

ザスパ草津スターティングメンバー
GK:22小島伸幸
DF:17小川雅己・3小田島隆幸・2籾谷真弘
MF:4依田光正・6鳥居塚伸人・15山崎渡・28山口貴之・18寺田武史
FW:16堺陽二・13宮川大輔
サブ
GK:1北一真 DF:29セレゾ モラエス 
MF:8小久保純 FW:14佐藤正美・27吉本淳
●フォーメーション(3−4−2−1)
−−−−宮川−−−−:佐藤・吉本
−−寺田−−山崎−−:
依田−−−−−−−堺:小久保
−−鳥居塚−山口−−:
−小川−小田島−籾谷:セレゾモラエス
−−−−小島−−−−:北

右ヒザ負傷から1ヶ月で先発強行の小島、地域リーグ時代から苦労を重ねてきながら今季出場機会が減ってしまった宮川、堺、山崎、籾谷などを並べた人情采配のメンバーと思いきや、フォーメーションは、宮川の1トップに運動量で勝負する2シャドーと両サイド、鳥居塚・山口のベテランMFを中盤の底に配したカウンター隊形に。普段は右SHに入る依田が左のシャドーが特に大きな変化といえる。かつて一度も実戦で試したことのない、このカウンター隊形からは横浜Fマリノス攻略と、こうせざるを得ないほどの実力差を踏まえてのこと考えられる。しかし主力を欠く為か、横浜Fマリノスは試合を優位に進めながらも、引いて守るザスパのカウンターに手を焼く展開に。

前半は、サッカーでしばしば起こりうる、その典型的な習いを示してくれた。宮川大輔をワントップにして9人が、いや宮川も下がって全員が専守防衛するザスパ。しかしロングボールを放った途端、アグレッシブに前に出て高い位置で横浜F・マリノスにプレッシャーをかける。下位チームの常套手段だが、0−0の均衡が続けば続くほど効果を発揮していく。

この戦い方と相手に対して、ザスパの司令塔たる山口貴之は。
http://www.jsgoal.jp/club/2004-12/00014638.html

山口貴之選手(ザスパ草津
「植木さんが最後ということで、どうしても勝ちたかった。横浜FM対策は相手のメンバーがわからなかっただけに、特に立てていなかったが、スタメンのメンバーを見て燃えました。
実際には裏を狙い続けることで、相手のディフェンスラインのバランスを崩すことができたと思う。10回のうち1回でも成功すればそれでいい、というつまらないサッカーだけれど、相手はJリーグチャンピオン。同じサッカーをやっていたのでは太刀打ちできないと思った」

さぼらぬ高い位置からのプレスと愚直なカウンターが、前半29分のハーフカウンターとして実を結ぶ。ザスパゴールキック・リスタートだったが、右ヒザに不安を抱える小島にかわり、すでにDF小川が代わりに蹴っていた。

そして前半29分、カウンターを狙った大橋のパスをザスパ草津の選手がカット、このボールがペナルティエリア内左に流れる。そして残っていた宮川がダイレクトで左足を振り抜くとグラウンダーのボールは左スミに突き刺さった。1点をリードされた横浜F・マリノスはシステムを変更、栗原勇蔵、田中、那須のスリーバックにしてトップ下に大橋をすえた。

ロングボールが左サイドの依田にわたり、2人引きつけてからゴールエリア内の堺にスルーパス。これはシュートまでいけずボールを奪われるものの、依田・堺・山口と早いプレスが奏効してゴール前に走りこむ宮川へ渡すことが出来た。DFにチェックをうける前にシュート、GK榎本達也の右脇を抜いて先制点を挙げる。1点先制というシナリオ通りの展開ながら、岡田監督の修正でザスパの1トップ2シャドーが封じられて、またもや耐える時間が続く。この修正に関しては岡田監督も記者会見で言及。
http://www.jsgoal.jp/club/2004-12/00014639.html

岡田武史監督(横浜FM)
途中で3バックに変えたのは、相手のロングボールとプレッシャーをきちんと跳ね返せていなかったので、3バックのほうが安定すると考えたからだ。そうなると、このメンバーでは田中しかやれる選手がいなかった。

なんとか失点せず。カウンターでチャンスもあったが、前半はザスパ1点のリードで折り返した。

後半は追いかける横浜F・マリノスが積極的。1分、11分とキープしたがる山瀬がミドルシュート。12分にはドゥトラの突破、ザスパ草津のディフェンスはファウルでしか止める術がなかった。20分には最初の決定的なチャンス。右CK 、ニアで安永がヘッドで流すとファーでフリーとなっていた山崎へ。これを山崎が身体を投げ出すようにヘディングシュート。しかしライナーは小島の胸に包み込まれてしまった。

予想されていたとはいえ、横浜Fマリノスの猛攻に後半開始から約25分間もさらされる。CK、FKのセットプレーも多く、ほとんどのザスパ草津陣内でのプレーとなってしまう。ここでザスパ草津の植木監督は、FW宮川と堺を代えて、通常はレギュラーFWの佐藤・吉本を同時投入。DFを増やさずに前線からのプレスを強化する形に。DFセレゾモラエスを投入してDF陣を厚くしなかったのは、Honda FC戦の急造4バックが機能しなかったこともあるのだろうか。

そこからもF・マリノスペースだが、一瞬スキが生じたのが後半27分のシーン。前線へのフィードでザスパ草津の佐藤正美がフリーに、キーパーと1対1になる直前に田中が追いついてタックルし難を逃れた。
後半27分、センターサークル付近からザスパ陣内に入ったところにドリブルした奥を山口が引っ掛けて2枚目の警告。これを不服とした山口が高山レフェリーの手からイエローカードを叩き落したものの判定が覆るはずがない。

このふたつのプレーとジャッジは主審のポジショニング次第だったかも。山口を欠いたザスパ草津は選手交代を行わず、鳥居塚キャプテンのワンボランチで対応する。

10人となったザスパに横浜F・マリノスはさらに猛攻を加える。後半35分には北野が至近距離からダイレクトシュート。しかしこれもキーパー正面に。ようやく後半38分、大橋がドリブルから冷静に出した横パス。これが走りこんできた奥の足もとに。奥は右足で落ち着いて同点ゴールをゲットした。後半40分には籾谷まで2枚目のイエローで退場となり9人となったザスパ草津

一方的に押し込まれる展開の中、ついに同点に追いつかれその直後にDF籾谷まで失ったザスパ草津は延長戦まで試合をもつれこませ、山崎に代えて小久保を投入して延長戦に臨む。だが、もはや敗戦は時間の問題だと思われた。しかしザスパイレブン今や9人となってしまった、いつもより小さい円陣の中では少し違っていた。

依田光正選手(ザスパ草津
「2人の退場で9人になってから、よけい負けたくなかった。同点になっても、その勢いで逆転されなければ、勝てると思った。延長に入るとき、植木監督も『Vゴールもあるし、PKになっても絶対に勝とう』と言っていました。」
小島伸幸選手(ザスパ草津
「9人になったとき、あと何分守ればいいんだという気持ちでしたが、最後まであきらめなかったのが良かった。相手は11人で戦っても厳しい相手。戦術とかの問題じゃない。でも、やられたらつまんねえぞという気持ちでみんな戦いました。」
植木繁晴監督(ザスパ草津
「9人になって、どうなるかと思ったが、ちょうど延長戦に入ってくれたので気持ちをもう一度入れ直すことができた。9人になって延長になったが選手たちはまったくひるむ様子がなかったので頼もしく送り出せた。

9人ならば耐えてPK勝負に望みを繋ぐのという手も普通ならあるだろうが、GK小島の右ヒザの具合を考えれば、かなり厳しい。「カウンター一本勝負」だけが残された。

延長戦前半のホイッスルが鳴ってから、横浜F・マリノスがいつザスパ草津を仕留めるかというムードが気温4度の肌寒いスタジアを充満していた。しかし、格上のチームを食ってやろうとするスピリットはいささかも揺らいでいない。自陣での時間帯がほとんどになりながらも、クロスをはじき返し、シュートコースを走って消し続ける。この献身的な動きの前に、横浜F・マリノスは決定的な場面は作れずに延長前半10分を経過。

耐えに耐え、走りに走る9人の健闘は苦痛に顔をゆがめながらもプレーを優先する小島を筆頭に、勝負とは別に賞賛に値した。

そして、狙っていた反転速攻。横浜F・マリノスディフェンスが苦し紛れにタッチに蹴り出し、続いてリスタートからキープ、ここでも横浜F・マリノスはファウルで攻撃の寸断を試みた。そして運命のフリーキック。右、ハーフウェーラインを5メートルほど中に入っただけの距離がたっぷりある位置。小細工はできない。キッカーはキャプテンの鳥居塚伸人。右足からのロングボールがゴール前中央へ。これをクリアさせずに競ると、ボールはファーポスト方向に流れる。横浜F・マリノス那須大亮より一瞬早く反応した依田光正が、ワンタッチで左足を振り抜く。シュートは右隅に流れてネットに吸い込まれていった。

壁の3人とは別に、ゴールエリア内のFマリノス選手はGKを入れて7人。ザスパは全部で3人。よくぞ決まった。一度壁がFKをリフレクトしたこと、ふたたび上がったクロスも依田のヘディングが弱かったこと、ボールはFマリノスがキープ出来そうだったこと。久々の試合出場だったGK榎本達也のわずかな遅れ。全ての要素が少しづつFマリノスの選手の反応を微妙に緩いものにさせたのだろうか。一瞬の早さを得た依田の左足のダイレクトシュートはVゴールと天皇杯ベスト8の切符をもたらした。

依田光正選手(ザスパ草津
Vゴールフリーキックのこぼれ球だった。自分のところに来るんじゃないかと思っていただけに、『来たな!』という感じで決めちゃいました。天皇杯をここまで勝ち抜いてきたチームはどこもレベルが高いけれど、どうせなら強いチームとやりたかった。植木監督とは山形でも一緒だっただけに、今日で最後の試合にしたくないと思っていただけにうれしいです」
小島伸幸選手(ザスパ草津
Vゴールが決まった瞬間は、本当に入ったのか? という気持ちで見ていました。ああいう場面で、笛が鳴ってノーゴールなんてケースもありがちなんで。笛が鳴らなくて良かったあという感じでした。
右足はJFLの試合で痛めました。だからゴールキックはDFの選手に蹴ってもらっていたんです。左足だったら蹴れるけれど幼稚園児並みです(笑)。DFはゴールキックってどんなにしんどいか、わかったでしょう。

本当によく頑張ったぞ。このチームのサポーターとして何度も幸せな気分を味わわせてもらったけれど、J加盟と並んでこの勝利は格別の感慨がある。ありがとうザスパ草津イレブン。

岡田武史監督(横浜FM)
「いま、何とか練習できている17名を連れてきた。このメンバーでどういうサッカーができるかを考えたら4バックとなった。厳しいゲームになるとは思っていたが、負けるというところまでは予想していなかった。自分自身も甘かったのかもしれない。これがサッカーだということを教えられた気がする。これでシーズンが終わったが、しようがない。次のシーズンに向けていい準備をして臨みたい。
モチベーションよりはコンディションが問題だった。サントリーチャンピオンシップに出ていない選手たちは、モチベーションは十分だったのだが、経験が足りないために自分たちのよさを出し切れなかった。
ザスパは本当によく頑張るチーム。ファイトをして、ボールを持ったら前へ前へと運び、ミスを誘ってきた」

また、奥大介選手のコンディションにも触れ「たとえ今日勝てても、次戦の起用は厳しかったろう」とのこと。岡田監督と横浜Fマリノスイレブンもまた、厳しくタフな戦いを続けてきたチームであった。そして年間王者にまで上りつめた誇り高きチームでもある。ザスパ草津にとって大金星であり、この試合は大きなニュースとなったが、横浜Fマリノスというチームへの敬意なくして、ザスパ草津の勝利を語ることもまた許されないのではないか、と考える。主審はどうでもいいけど。
さて、僥倖ともいえるベスト8に進んだザスパ草津は今週末の6回戦、準々決勝に進む。

小島伸幸選手(ザスパ草津
次の相手(東京ヴェルディ1969)の対策? もう今週末でしょ? ウチは年寄りが多いからキツイねえ(笑)。でも、やるからには可能性は限りなく低いけれど、ゼロではない。皆でやれば絶対に勝てないことはないという気持ちでやります。
植木さんとの付き合いが長いだけに、少しでも長くやりたかった。この勝利で3日か4日長くなったけれど、どうせなら元旦まで行ければいい、なんて言ったらヴェルディの人たちは怒るよね(笑)」

まさか長崎までバス移動ってことはないと思うけど、植木監督の試合直後インタビューのとおり、頑張って頑張れ。