加藤久監督の必読コラムで様々な提言が。

上の続きで。地域密着やサッカー運営問題などをとり上げて、判りやすく提言される加藤久監督のコラムですが、一般紙に連載されているコラムであるため、基本情報に触れてから本題に入られるスタイルをとられていますが、そこから得られる情報と提言は、下手な専門誌コラムなど足元にも及ばないと思われます。まずは上の続きで沖縄県のユースやキッズに関して。
http://www.ryukyushimpo.co.jp/cgi-bin/challenge/index.cgi/20041214.htm

●第11回:個性豊かな沖縄の子/下部組織でしっかり育成を
Jリーグのチームでは、小・中・高のチームを保有することが義務付けられています。この義務化には、二つの意味があります。一つは、ホームタウン地域の子供たちを育てることが、地域貢献そのものであるということ。もう一つは、自前の選手を育成することによって、選手の人件費の高騰を抑えようという狙いです。
実際、J1に所属するガンバ大阪ジェフ市原のようなクラブは、1993年のJリーグ設立当初から育成に力を入れてきており、その育成の成功が、現在のチーム力とチーム運営を支えています。ガンバ大阪は、育成の成功によって選手の人件費の高騰を抑え、トップチームや下部組織の練習場などのインフラ整備に資金を使うようになりました。チームはさらに強くなるはずです。

まず、キチンと基礎知識に触れてから、沖縄の実情に触れられています。

私が沖縄に来る時も、基本的には、自分のチームの下部組織からだけでなく、沖縄の他のチームでプレーする選手の中から、トップチームの選手が誕生することを期待していました。ですから、自分のチームの子供たちだけでなく、沖縄県サッカー協会の皆さんが熱心に指導している「トレーニングセンター」、通称「トレセン」にも顔を出しました。
●「アジリティ」
私は、沖縄には“面白い”子供たちが多いと思います。“面白い”とはどういうことかと言えば、独特のリズムやボールタッチ、身のこなしを持っているということです。「全国的に見て子供たちに個性がなくなってきている」。今、日本のサッカー界では、そういう問題点が指摘されてきているのですが、逆に、沖縄にはとても“個性的”な子供たちがいます。特に、サッカーで大事な「アジリティ」という要素は、全国の中でもトップクラスにあると思います。
「アジリティ」とは、瞬間的なスピード、バランス感覚、身のこなしの速さなどを総合した能力のことですが、この部分では天性のものを感じさせます。実は、技術、戦術に比べて、この部分はトレーニングによって改善される割合が少ないのです。その能力が優れている訳ですから、基本的な技術や戦術的な要素を磨いていけば、本土の選手に負けない選手が出てくるでしょう。

こういう情報は現場ならではですしね。ヴィクサーレでも、よりこういった「面白い」特性を活かした選手の育成に期待がもてる、というものです。また、シビアな提言も。
http://www.ryukyushimpo.co.jp/cgi-bin/challenge/index.cgi/20050104.htm

●第14回:遠征費の負担重く/上部協会へアピールを
沖縄の子供たちの指導に携わって思うことは、九州への遠征にも経費が相当かかるということです。指導者も親も、子供たちに少しでも強くなってほしいと思う気持ちは同じですが、県選抜に選ばれるような優秀な子供を持った親ほど、経済的には大変な負担がかかっています。
●痛み分からず
例えば、今月4日から6日まで長崎県島原市で行われる「九州選抜中学生サッカー大会」に、ヴィクサーレ沖縄から4名の選手が沖縄県代表選手として選ばれました。派遣の個人負担は、6万8千円から7万1千円という書類が届きました。航空運賃、2泊3日の宿泊代、交通費(バス代)・雑費、ユニフォーム代の合計額です。わずか2泊3日の大会参加で、これほどの自己負担を強いられているのは沖縄だけです。

中学生選手が2泊3日で約7万円の個人負担はやはり大変だと思われます。1年分ではなく1回分ですからね。年4回こういう機会があれば、遠征費だけでも30万円ちかい出費ですからね。熱心なご家庭でも負担は軽いものとは思えません。

父兄の方々は、子供のためにはどんなに無理をしてもこの経費を負担しようとするでしょう。“子供のためなら”、それが親心です。しかし、家庭への負担があまりにも大き過ぎると思います。
沖縄の場合、九州の他県に比較して、大会が行われる場所までの集散旅費が極端に高くなっているはずですから、この現実を九州サッカー協会にもっとアピールしなければならないと思います。
なぜなら、九州本土のサッカー関係者の皆さんも、“沖縄から出てくるには経費がかかる”と思っているはずですが、実感として分かっていないのです。おそらく、父兄がこれほどの自己負担をしなければならない状況は経験していませんから、父兄の皆さんの経済的な痛みまでは分かりません。

少し考えれば「沖縄は交通費が大変」なのは誰でもわかりますが、なかなか具体的な数字は判り難いもの。FC琉球天皇杯遠征費や先の九州県リーグ決勝大会での「寄付のお願い」もうなづけるものがあります。大人が20人以上も動くわけですから、それだけでも軽く100万円は超えますものね。続いてこの問題に対する、サッカー協会の実情を述べられています。内側にいたからこその情報ですよね。

●協会は情報不足
実は、私も日本サッカー協会の強化委員会(現・技術委員会)で5年間仕事をしていましたが、こうした地域大会の経費までは全く情報が入りませんでした。もしも、各県で経費負担にデコボコがあるならば、その地域で工夫して経費の地ならしをしているのだろう、それくらいにしか思っていないのです。
ですから、沖縄の経費負担が極端に高いという事実を、もっと目に見えるような形でアピールすべきです。これは、沖縄県サッカー協会の仕事です。九州サッカー協会だけでなく、日本サッカー協会にも、日本サッカー協会が企画した大会に参加するために、子供たちは一人これだけの自己負担をしている、そういう具体的な情報を入れるべきです。
日本サッカー協会が一昨年からスタートして「エリートプログラム」に参加した中学1年生にも、1泊2日で4万円の自己負担がかかりましたので、私は、日本サッカー協会技術委員会に、「日本サッカー協会はなぜ経費を負担しないのか?」そう聞きました。
すると、日本サッカー協会には、九州サッカー協会からその旨の連絡が入っておらず、九州独自で「エリートプログラム」を実施したそうなのです。こういうケースは、九州サッカー協会に要望を出すべきです。
こうした大会参加・遠征費の軽減、あるいは経費補助の問題への取り組みは、沖縄県のあらゆるスポーツに共通した課題なのでしょう。

上部組織(日本サッカー協会)と現場を両方知り、なおかつ世に問う場所(このコラム)と意思を持たれる加藤監督のコラムはやはり貴重なものと思います。この沖縄を始め、日本サッカー協会都道府県サッカー協会全体で、交通費負担問題に取り組んでもらいたいところです。各地域から子供たちを集める場合には、たとえば1万円以上の移動費には、援助金を出すとか。集まる子供たちの中に、明日のJクラブや日本代表を背負う選手が必ずいるわけですし。
「ウチは貧乏だったけれど、サッカーだから続けられたんだよ。安く済むから(笑)。親がサッカーをやれ、って(笑)」なんて語る日本代表選手が、将来現れてもいいんじゃないでしょうか。>川淵キャプテン様。