鈴木昌Jリーグチェアマン、来季J加盟予定の愛媛FCに苦言?

SH772005-08-16

スポーツナビ経由、共同通信8月16日付より。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jtoto/headlines/20050816-00000054-kyodo_sp-spo.html

●J2は2チーム増まで可 来季の新加盟には懸念示す
Jリーグの鈴木昌チェアマンは16日の理事会後に記者会見し、2部(J2)のチーム数を現在の12から「当面は14まで増やせる。その後は入れ替え戦が必要になる」との見通しを示した。

ここまでは既報です。そしてここから。

しかし、Jリーグ入りを目指すJFL愛媛FCについては、今季J2に昇格した草津の苦戦などを例に「まだ早いのではという懸念がある。しっかり力をつけてから上がってほしい」と述べた。愛媛はJFLで現在1位。7位のFCホリコシも加盟を希望し、Jリーグの経営諮問委員会が両チームの経営状態などを調査している。

「Jチェアマンは愛媛FCのJ加盟に難色!」と脊髄反射でセンセーショナルに読んでしまいがちな記事ですが、鈴木チェアマンのおなじみの作戦、発言でしょうね。鈴木チェアマンは、予想される懸案問題が深刻になる前に、公式の場で先行アナウンスで懸念を表明し、当事者クラブや行政に良くいえば背中を押し、キツくいえばプレッシャーをかけます。昨季のサガン鳥栖存続問題が記憶に新しいですね。*1
今回チェアマンは愛媛FCへのコメントで、草津の苦戦などを例に挙げられたそうですが、別のインタビューでも「徳島が10位、草津が12位と苦戦している。もっと頑張れ」とコメントしています。徳島と草津は、今季運営費がそれぞれ4〜5億円。規模としてはJ2でも下から2、3番目だそうです。昨季3位の草津は、累積赤字を抱える上に新監督指揮下で出発となり、シーズン中にも試行錯誤を繰り返して最下位。草津サポの自分でも止むを得ない部分も多いと思います。JFL連覇の大塚製薬FCは田中監督が引き続き指揮を採られて、チームは新会社が赤字ナシで運営を始めました。そしてJ1とJ2から補強を加えて連覇チームの発展強化という最高の形でのスタートが切れたと思います。その徳島ですが徐々に順位を下げて現在は10位。草津と違って勝ち点からはまだまだ中位以上が狙えますが、やはりJ2での戦いはJFL連覇チーム強化版でも簡単ではないということですよね。
この状況を踏まえるとチェアマン発言の意図が汲み取れると思います。ひとつに運営予算の規模。愛媛FCは昨季8千万円、今季は1億数千万円で運営されているそうですが、J2ではどんなに少なくても2億、出来れば3〜4億円は欲しいところ。愛媛FC来季の運営予算は判りませんが、草津や徳島をはるかに凌ぐということは考え難いです。チェアマンの「まだ早いのでは」という発言は「J加盟は時期尚早だ」という単純な意味ではなく「徳島と草津を見ると、運営規模・予算のさらなる拡充が必要」という先行アナウンスであり、既に愛媛FCへの出資を決められている愛媛県松山市への呼びかけでもあると思います。
また「しっかり力をつけてから上がってほしい」という部分は「収益の上がらないJFLであと何年も苦労したほうがいい」なんて机上の空論での発言ではないことは確か。運営規模の拡充を指している部分もあると思いますが、昨季3位の草津JFL連覇の徳島のJ2戦績から「JFL優勝だけでなく、J2へ向けたチーム作りも視野に入れて継続強化を」というアドバイスでもあると思います。
まとめれば、単純に「愛媛FCのJ加盟は時期尚早、来季も12チームで」なんて発言ではなく「徳島と草津の今季成績と、愛媛FCの予備審査内容を鑑みるに、来季加盟の愛媛FCは運営組織とチームのさらなる強化が必要ですよ」というアドバイスであり感想だとも思われます。
共同通信記事は、最後に一文を付け加えて終わるのですが、やはりと云おうかあまり事情を知らない記者が担当しているのでしょうね。で文章は以下のとおり。

鈴木チェアマンは昨年12月、愛媛の加盟を見送った理由を「常勤経営者不在で準備不足の点があった」と説明していた。

これ、いらないでしょ。既に常勤取締役(権名津朗GM)は既に就任されており、来季に向けては行政の出資もあって資本金は1億6千万円まで増資が予定されているそうです。加えてJ規格スタジアム、望月S級監督、目下リーグ戦首位と加盟条件はどんどん整ってきていますよね。
また実は、昨季加盟申請した3クラブは理事会で「資格上問題ナシ」と確認されています。昨年11月16日付の過去エントリーのニッカン記事ですが、
http://d.hatena.ne.jp/SH77/20041116#1100608988

草津らJ加盟、昇格候補のクラブ問題なし
Jリーグは16日の理事会で、来季からの加盟を申請しているJFL大塚製薬を母体にしたヴォルティス徳島ザスパ草津愛媛FCの3クラブともに資格上の問題がないことを確認した。大塚製薬は既にJFL原則2位以内の加盟条件を満たしており、ザスパ草津も現在2位につけている。

徳島ヴォルティス」が「ヴォルティス徳島」と昔の名前で出ています、なのはご愛嬌。
この記事を踏まえると昨季の愛媛FCは「徳島1位、草津3位、愛媛5位」というリーグ戦結果でまず加盟条件に達せず、運営組織などの準備不足と云われたところは「来季の加盟に向けて改善努力を」という指摘点だったと思います。昨季は2チーム増予定、成績条件「原則2位以内」という部分で涙をのんだ愛媛FCですが、今季はJFL優勝と運営組織の充実をさらに図ってJ2に参戦していただきたいと思います。いや〜、厳しいですよJ2。今季のチーム、いくらでも強くしてきたほうが良いのはマチガイありません。出来れば望月監督継続指揮で。上位カテゴリーで新監督、ほとんど蓄積のないまま戦って苦労している最中のチームのサポより。

*1:チェアマンの直接発言ではありませんが、ザスパ草津も昨季7月のJ加盟予備審査で「資本金の少なさ(約3000万円)」などを指摘され、9月末の本審査時点で約1億円まで増資して対応しました。イキナリ本審査で「資本金が少ないからJ加盟できませんよ」と云われても困りますからね。J加盟での予備審査、先行指摘は当然と云えます。