J2第29節、アビスパ福岡戦。シュートは4本ながら攻守の組み立てに光明。

SH772005-08-31

J2上位相手の3連戦、しかもそのうち2戦がアウェイとタフなスケジュールのザスパ草津でしたが、このアウェイ福岡戦がようやく3戦目。甲府相手には4バック、山形には3バックを敷いて、しかもこれら上位相手でもキッチリ守れるようになってきたのは良いのですが、攻撃に切り替わったときのチーム全体での連動のなさ、前線の選手まかせで厚みもなくバリエーションも少ない組み立てには現在の布陣での行き詰まりすら感じさせる状況でした。
しかしこの福岡戦、久々に起用された依田光正とチカがSBに入った4−4−2では、個々の積極的な攻撃参加と互いのスペースカバーで厚みのある攻撃を展開できたことは、かなりの収穫となりました。結果はJ's GOALより。
http://www.jsgoal.jp/result/20050200030620050831_detail.html

●J2第29節 8月31日(19:00/博多球/9,409人)
アビスパ福岡 1−0 ザスパ草津
得点 81分:千代反田充(福岡)

まあ、試合は0−1で負けちゃったんですけど、内容は先の山形戦の何倍もマシだったことでかなりの満足がありました。このエントリーは次節徳島ヴォルティス戦を観た後で書いているので、この試合で手応えのあったパフォーマンスがそのまま徳島相手に大きな効果となったのを知っている余裕なのかもしれませんけどね。ただこの試合と甲府戦を考慮して「これからは4バックでも戦える目処はついたな」という感想も持ちました。ともあれザスパ草津、この試合のメンバーは。

ザスパ草津スターティングメンバー(J2第29節vsアビスパ福岡
GK:29岩丸史也 
DF:17小川雅己・32齋藤竜・23チカ 
MF:24酒井良・4依田光正・9山口貴之・6鳥居塚伸人・7佐田聡太郎 
FW:14佐藤正美・20吉本淳
●サブメンバー 
GK:22小島伸幸 DF:2籾谷真弘
MF:5氏家英行・15山崎渡 FW:30樹森大介
●キックオフフォーメーション(4−4−2・中盤◆)
−−佐藤−−吉本−−:樹森
−−−−山口−−−−:
佐田−−−−−−酒井:山崎
−−−-鳥居塚-−−−:氏家
チカ−−−−−−依田:
−−齋藤−−小川−−:籾谷
−−−−岩丸−−−−:小島

メンバー表どおりですと3−5−2のようですが実際には4−4−2。その意図に関しては手塚監督のコメントを。
http://www.jsgoal.jp/club/2005-08/00023319.html

手塚聡監督(草津
Q:前節は3バックでスタートされたと思いますが、今日はチカ選手を左サイドバックに置いた4バックで臨まれましたが、その狙いを教えてください。
「やはり両サイド、中村選手、アレックス選手を含めてアウトサイドの攻撃というものを警戒したということ。それと、スカウティングの中では山形恭平選手がトップ下のようにどんどん前へ出ていく、そしてブラジル人が少し引いてきて起点を作るという形を作っていましたので、4枚にしてバランスを取るということです。3バックだとアウトサイドが吸収されて、ボールを取る位置が低くなって、なかなか出て行けないことが多い。少しでも高い位置から中盤の選手がボールを取った後に出て行けるということを狙って4枚で戦いました」

第1クールにも福岡には両サイドを散々に侵食されて4失点。そして手塚監督も云われるとおり3−5−2ですと「アウトサイドが吸収されて」実質5バックになってしまい、その前にDMFが2人並ぶので前線は3人のみ。後ろからの押し上げもパスミスなどから拙く効果が望めず、ロングボールに終始する、単調な攻撃の繰り返しになってしまうことが、守備はなんとか整った草津の次の課題。今回の布陣からは左サイドの佐田とチカ、右サイドの酒井と依田のSHとSBが有機的に攻守に連携がとれるか、が課題であり期待となっていましたね。
草津の手塚監督、福岡の松田監督は双方とも「キックオフから福岡が攻勢、草津がカウンターで反撃」の展開を予想されていたようですが、福岡が中盤とFW2人の距離が空きすぎ、高い位置で攻撃の起点が作れず、全体的間延びの布陣に。これで草津はピッチ中央付近でボールをキープ出来、そこからサイド攻撃も絡めて、思いのほか一進一退の試合となりました。しかし双方ともになかなかゴール前で決定機を作るところまではいかず、草津はセットプレー、福岡はカウンターでチャンスも得ましたが、結局前半は0−0。やや淡白に45分を使ってしまいます。それでも草津は佐田とチカ、酒井と依田の攻守の相互補完はまずまずでした。チカも積極的に攻撃参加して前線に上がりましたし、佐田は良くカバー。依田のクロスも精度に向上が見られました。居残り特訓の成果ですかね。試合全体はやや福岡優位ですが、草津の時間帯も少なからずあったわけで、ここで得点できれば、試合の展開も結果も違ったものになったとも思いますが、残念です。
http://www.jsgoal.jp/club/2005-08/00023320.html
http://www.jsgoal.jp/club/2005-08/00023319.html
http://www.jsgoal.jp/club/2005-08/00023321.html

松田浩監督(福岡)
「予想以上に、選手は湿気というか、気候が厳しい条件だったように思うんですけれど、それにしても前半に関しては、アグレッシブさという意味では少し物足りない試合になってしまったなという気がします」
手塚聡監督(草津
「今日の福岡との対戦では、ある程度ポゼッションされる時間帯が多くなるであろうし、そういう中から辛抱して、しっかり組織を作って守備をしていく中で、必ずチャンスが来るであろうということでやりました」
鳥居塚伸人選手(草津
「前半は、相手もそんなに前からプレッシャーに来ていなかったので、ある程度、ボールは繋ぐところは繋げた。だた最終的なところでは厳しく来ていて点が取れなかった。そこで点を取れるか、取れないかの違いだと思います」

さて後半。やはりと云おうか、前半のやや積極性に欠ける攻撃を修正してきた福岡の攻勢で始まります。福岡はハーフタイムにFW有光亮太から岡山一成に変え、グラウシオとMF山形恭平の変則3トップに。流動的な3トップがポジションを固定せずサイドなどに流れて攻撃を組み立て、中盤が押しあがって、ゴール前に殺到します。これに中村北斗とアレックッスの両サイドバックがクロスを供給してチャンスを拡げていきます。

松田浩監督(福岡)
Q:前半、宮崎光平選手のできが悪かったように感じられたんですけれど、先に有光選手を交代されました。そのあたりの意図はどういうところにあったのでしょうか。
「トレーニングではいい動きを見せていたので、草津みたいな相手にはカウンターがすごく効くんじゃないかなと思って期待して起用しました。でも、今日は少し出足が遅れたりだとか、カウンターのチャンスの時に動き出しが物足りなかった。相手は2バックみたいな形でアグレッシブにやってきていたので、そこを突くことが出来れば良かったんですけれど、出来なかった。アレックスと宮崎の関係以上に、そっちに手を打ちたかったということです」

Q:後半に入ってから前を2枚から3枚に変えて、非常に流動的に動いていたんですけれど、どのような指示を出されたのでしょうか
「特には出していないですね。というよりも、少しグラウシオは張りっぱなしになって、私の意図する形ではなかったですね。ただし、彼の良さというか怖さみたいなものが、相手に影響を与えるかなということで、そのままにして置いたんです。(中略)流動的な動きということに関しては、誰かが作ったスペースを誰かが使うという攻撃の基本的な動きを忠実にやってくれたからじゃないかと思います」

この猛攻を人数をかけてゴール前でなんとか凌ぐ草津は、福岡の攻勢の裏を突いてカウンターで逆襲を図ります。ツートップの吉本と佐藤正美、山口貴之らでペナルティエリアでのチャンスやCKまでは繋げますが、佐藤正美の60分過ぎの2本以外に決定的なシュートはなかなか打てず。カウンターといってもほとんど上記の3人頼みで、思い切った攻勢に出られない、いつ出るかが決まっていない、チームとしての意思統一のない草津の弱い部分なんでしょうね。
こんな展開のまま両チームとも得点なく10分、15分と時計が進んでいます。福岡の猛攻も60分を過ぎると一段落、交互に攻守を行う撃ち合いの展開になってきました。草津は齋藤やチカの攻撃参加、後方に残る依田のサイド攻撃を封じる堅守など、なかなかの試合運びを見せます。ただ70分過ぎた頃から、山口貴之の運動量が落ちてきて攻撃の組み立てが肝心な時に厚みが加えられなかったのが痛いと云えば痛かったですね。前半開始から中央から左や右に流れて攻撃の起点となりつづけていたのですから、やむ得ない部分が大きいと思います。草津がやや攻勢に出ていた70分からの10分間が過ぎると、ふたたび福岡の時間帯に。グラウシオミドルシュートや、MF田中佑昌の決定的なヘディングをGK岩丸が好セーブで凌ぎますが、その直後のCKを後方から飛び出てきたDF千代反田にヘッドで押し込まれて先制を許してしまいます。その後の10分は、カウンター狙いに切り替え、自陣に引いた福岡を攻めきれずに試合終了。
格上相手に試合を優位にすすめられながらも、なんとか失点すぜ反撃の機会を見つけながらロースコアゲームに持ち込んでいましたが、81分で力尽きてしまいました。良い動きを見せた草津の時間帯やチャンスもあっただけに、やはりこういう時に先制しないと勝ち点はとれないんですね。

手塚聡監督(草津
「しっかり組織を作って守備をしていく中で、必ずチャンスが来るであろうということでやりました。しかし、数少ないチャンスを生かすことが出来ませんでしたし、リスタートから点を取られてしまいました。予想外に足をつった選手が出てしまって、1人少ないときにリスタートのCKからやられてしまった、そういうゲームだったと思います」
鳥居塚伸人選手(草津
「後半は、人が代わって大きいのが入ってきて起点を作られた。やり方があたふたした部分はあって、その後はだいぶ落ちついてやれたんですが、結局セットプレー1本でやられてしまいました。お互いにチャンスもあったし、そこを相手は決めて、うちが決められなかったというのが差なのかなと思います。何回かゴール前までは持ち込んだんですけれど、シュートで終われなかったので、確実にシュートで終わるということをやっていかないと勝ちきれないと思います」
山口貴之選手(草津
「点が入れば流れは変わると思うので、とにかく点が欲しいです。シーズン最初に比べると守れるようになってきたし、五分五分の、どっちが勝ってもおかしくないような試合が続いています。最後は決定力だと思うので、そこのところを高めていきたいです」

上位福岡相手にこういう試合が出来たこと自体は収穫で、中位以下相手ではもう少しチャンスも増えるだろうと思われました。事実、次節の徳島ヴォルティス戦では両サイドの優位を生かして完勝のゲームをすることが出来ていますしね。4バックでも守備が崩れず、時にサイドから厚みのある攻撃も展開できることが判りました。後知恵ですが、この路線で進めて熟成を図っても良かったのかもしれませんです。