ザスパ草津経営問題、その2。判明する使途不明金と緊急融資。

まずは、この記事から。読売新聞群馬県版10月13日付より。

●J2実行委で陳謝 ザスパ大西GMが冒頭に
ザスパの不祥事について)運営会社・草津温泉フットボールクラブ大西忠生社長代行兼GMは12日、Jリーグ事務局で開かれたJ2実行委員会で、一連の不祥事について陳謝した。大西GMは、委員会冒頭に発言の機会を求め、「いろいろとお騒がせして申し訳ありません」などと述べた。
議事の中では、ザスパの運営問題については触れられなかったという。一連の問題を受け、Jリーグは、ナンバー3の熊地洋二常務理事と会計担当職員を同社に派遣。業務と経理の見直しなど再建に向けた取り組みをバックアップしており、Jリーグ広報部は「現段階では、ザスパへの処分は考えていない」としている。

J2理事会でも陳謝と、当面お詫びしなければならないところには全て回ったザスパ草津ですが、業務と経営の見直しで、とんでもない事態が発覚することに。一番まとまっているのが、見出しが扇情的ながらスポーツ報知の10月19日付でした。

草津存続ピンチ!最悪除名も Jリーグが5000万円緊急融資
湯の街から生まれたクラブが、創設以来最大の危機を迎えた。この日の理事会で、草津に対し、Jリーグの公式試合安定開催基金から5000万円を融資することが決まった。
鈴木チェアマンは「融資しないと、やばいな、という状況になっている。草津が今季、残り試合を続けるためには(融資が)必要だと判断した」と説明した。7月に基金を設立して初の適用。草津側から、草津町などへのスタジアム使用料滞納分の支払いや、選手への給料など、数項目の使い道と5000万円という希望金額が提示され、経営諮問委員会で審議して、適用が決定した。
草津は、前社長が辞任した今年7月以降、過去の金銭トラブルが一気に表面化。鈴木チェアマンは草津の経営が苦しくなった状況について「臨時出費がたくさん出ている。不明な伝票もある」と語った。4億円の収入で選手の年俸総額が1億2000万円。普通なら細々とながら経営は出来る収支だが、それが出来ていない。

Jリーグでは、リーグ全体の安定運営のため、各クラブの運営予算の監査に力を入れており、ザスパ草津もJ加盟時*1に運営計画と資金について監査を受けています。Jクラブは余程のことがない限り破綻はしない仕組みである、と云えるでしょう。そして上記の報知の記事どおり、ザスパ草津は4億円の年間予算で一番かかる人件費が1億2千万円。不正未払い金や臨時出費があるとはいえ、そう簡単に行き詰まるような金額ではないはずです。
しかし、Jの監査を受けて、たった1年目の途中で当座の運営資金に事欠く事態、平たく云えば経営危機に。尋常ではありません。そして2つの不祥事の微々たる金額のごまかしの根に、前社長の使途不明金での資金難の状況があったことが判りました。使途不明金の総額について記した新聞記事を探したのですが、唯一「使途不明金は、なんと2億円」とあるのが東京スポーツのみでして。orz 「日付以外は全て誤報」と称えられる? 東スポ記事を仮に話半分としても、使途不明金は1億円ちかいものだと推測できます。4億円で運営して、1億円からの大金がどこかに消えてしまったのでは、運営計画も監査も意味をなくしてしまいますよね。他記事では、使途不明金について「なんでJリーグクラブが支払わねばならないのか」と首を傾げる伝票も出てきているようです。不祥事に加えて、クラブ消滅の危機すらあった資金難、たしかに前社長への刑事告訴を検討していただかねばなりません。

草津の来季以降の運営について、鈴木チェアマンは「5億円くらいの収入は見込めそう」と語った。様々な金銭問題をクリアして今季を乗り越えれば、チームが消滅するという最悪の事態は避けられる見通しを示した。
しかしリーグの収益の一部を積み立てた基金を借りて急場をしのぐこと自体が、非常事態。返済は来年1月と3月に1000万円で、08年1月に3000万円の分割。返済出来ない場合について鈴木チェアマンは「最悪は除名処分。リーグに損害が出る」と語った。
J2昇格1年目で早々と迎えた存続危機。大西忠生GM兼社長代行は「基金適用は大変うれしい話」と話したが、これからが正念場となる。

またザスパ草津は、Jリーグからの緊急融資以外にも融資を受けました。11月3日付けの上毛新聞より。

ザスパに追加融資 経営再建へ総額1億6000万円
ザスパ草津は二日までに、Jリーグのサッカーくじtoto)の管理するスポーツ振興投票対象試合安定開催特別会計から五千万円の融資を受けた。(中略)さらに六千万円を借り受け、計一億六千万円を経営再建資金に充てる。
同会計はtotoの売り上げ金を運用。同会計の融資はサッカーくじ対象試合の開催チームならどこでも受けることができ、これまでも多くのクラブが利用している。原則有利子で、融資を受けた年度に一括返済する。このほかに借り受ける六千万円は、totoを母体とした別の融資を活用する。

とりあえずは、当座の資金を得られたザスパ草津は試合運営と諸経費などを支払うことが出来るようになりました。しかし本来は必要のない借金であり、中長期のクラブ運営を考えるとただのマイナスに過ぎません。クラブ運営に危機を招くほどの使途不明金・・・悔しくて仕方ありませんね。
ともあれ、前社長の告訴などの問題はまだ残っていますが、新体制で経営、運営、チーム構築の見直しを図り、再出発することになったザスパ草津。Jリーグ1年目は、運営フロントで大きな問題が明るみになり、最下位が決まったチーム以下の体たらく、失格だと云えるでしょう。
しかし時計を1年前に戻せるわけもなく、周囲の期待を裏切り続け、挙句に信用も信頼も無くした状態、マイナスからの再建を進めねばなりません。この1年間に得た運営の不備面なども貴重な経験として、来季に活かしてもらいたいです。というか、それが最低限必要なことですよね。
ザスパ草津のJリーグ1年目は、「目指せJ」の続きであったと思います。しかし2年目は、夢の舞台ではなく、現実として活動する、Jクラブとして存続していくザスパ草津のスタートの年として進めていただきたいです。

*1:そして地域リーグ決勝大会出場申請、いわゆる「飛び級申請」を受ける時にJリーグから運営状況の監査・審査を受けています。