国立競技場がネーミングライツの対象になる可能性が浮上。

SH772006-05-26

朝日新聞5月25日付より。http://www.asahi.com/politics/update/0525/007.html

●国立施設の命名権売却へ スポーツ施設など検討
政府は財政再建のため、独立行政法人(独法)が運営する国立施設の命名権ネーミングライツ)の売却に乗り出すことを決めた。行政減量・効率化有識者会議が06年度以降の独法の見直し方針に盛り込んだ。国立競技場(東京都)など、人が多く集まり、宣伝効果が見込める大型スポーツ施設を中心に検討する。
有識者会議の飯田亮座長が23日に首相に報告し、首相も「政府の指針として活用したい」と了承した。国立競技場を含む主な国立スポーツ施設の命名権売却は、運営する独法の日本スポーツ振興センターが、文部科学省と協議して07年度末までに結論を出す。

国立スポーツ施設にネーミングライツ導入ですか。財政再建・収入増のために有効な手段であるのは間違いないところですが、やはり問題もあるようです。

(中略)ただ、増収に懐疑的な立場から慎重論もある。国立競技場では昨年、サッカーの世界クラブ選手権トヨタカップ」を開催。競技場が別の自動車企業の名前になれば「トヨタが嫌がるかも」(役員)というわけだ。

クラブW杯の決勝戦日産スタジアムで行われましたが、中継した日本テレビは「横浜国際総合競技場」と連呼していたので、ここはお互い様なんじゃないでしょか。

「目指せ国立」が高校サッカー界の合言葉になっている国立競技場や、皇族の称号にちなむ秩父宮ラグビー場などに配慮し、「企業名がつくことが国民感情に沿うのか」という意見も根強い。

ネーミングライツでどんな企業名がつこうが、個人が「国立」「秩父宮」と呼ぶところまでは制限かけられないので、判断は人それぞれだと思いますが、個人的には国立競技場に関しては、このネーミングライツでの収入が競技場を運営管理している「日本スポーツ振興センター」の天下り役人の、高すぎる給与に化けるだけなんじゃないかな、という方が心配です。この組織については、5月19日付のライブドアニュースで週刊誌フライデーの記事が紹介されています。
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1978033/detail

●『toto』赤字230億円で「国立競技場が売却!」の危機
(前略)『toto』は'01年、「スポーツ振興」を目的に導入され、収益金の一部が各競技団体や有力選手に分配される仕組みだった。ところが、導入直後から売り上げが低迷し、くじを運営する独立行政法人日本スポーツ振興センター」は、現在約230億円もの累積赤字を抱えている。
(中略)
そもそも『toto』の導入当初、振興センターは市場規模を1600億〜1800億円と想定していた。
「この金額は民間シンクタンクが、'02年W杯後もサッカー人気が続くことを当て込んで算出した数字です。本当に根拠があるかどうか、センター内ではほとんど議論がありませんでした。にもかかわらずセンターは、この予測に基づいた大規模なシステムをりそなに作らせたんです」(振興センター関係者)
しかし、フタを開けてみると、『toto』の初年度の売り上げは約642億円に留まり、2年目には早くも採算ライン(約420億円)を割り込んだ。その後も売り上げは減り続け、'05年度には約149億円にまで落ち込んでいる。見通しは完全に外れ、巨額の初期投資がムダになったわけだ。

「見通しが甘い」と云うか「見通しを甘くしないと立ち行かない」状態でtotoが始まっていることが判ります。そして当然ですが、現実が自己都合を考えてくれるわけもなく大赤字。今年度の助成金はとんでもないことに。
朝日新聞5月9日付から。
http://www.asahi.com/sports/spo/TKY200605090375.html

●toto助成金、JOC「少ない」 今年度要望の13%
日本オリンピック委員会(JOC)の総務常任委員会で9日、スポーツ振興くじサッカーくじ、toto)の売り上げ減のため、今年度の助成金が計370万5000円しか内定しなかったことに厳しい声があがった。
助成が内定したのは「選手の育成、発掘」「反ドーピング事業」など3件。370万5000円はJOCの要望額の13%にとどまり、昨年度より716万円減っている。
あるJOC理事は「totoはスポーツ支援のためのくじなのに、支援してもらえないとなると、存在そのものが問題だ」と指摘。「この程度の額なら助成金を返上し、自己財源で事業を展開しよう」という意見も出ているという。

既に、組織とスポーツ振興くじとしての存在意義が消滅している、と云っても良いでしょう。では元記事に戻って。

toto』はなぜ、失敗したのか。ジャーナリストの舘澤貢次氏は、振興センターのお役所体質を批判する。
「振興センターの常勤役員は、雨宮忠理事長をはじめ6人中5人が文部科学省財務省からの天下り官僚。つまりギャンブルの素人です。右も左もわからないまま『toto』を放置し、赤字をタレ流したのが実態です。まともな経営陣なら、海外からサッカーくじの専門家を招いて意見を聞くんでしょうが、'04年に『toto』立て直しの方策を検討させたのは、なんと文科省中央教育審議会。彼らの無策ぶりには開いた口がふさがりません」
(中略)
しかしそんな彼らは、庶民には考えられないような高給を受け取っている。旧文部省で学術国際局長を務めた雨宮理事長の年収は1920万円。その他の役員の年収も平均1500万円以上だ。
toto』で毎年数十億円の赤字を出し、りそな銀行にカネを払えない状態にもかかわらず、なぜこのような高給が可能なのか。そのカラクリは、国からの補助金にある。そもそも振興センターの立ち上げ時には、政府から1950億円が出資されている上、「運営費交付金」などの名目で、年間約120億円の補助金が支払われているのだ。これでは赤字を埋め、彼らの高給を保障するために血税が使われているようなものだろう。

ここで記されているとおり、天下り役人のためだけの組織とくじになってしまっているのですよね。少なくとも公益性は失われた無益な組織でしょう。

さらに、振興センター内では驚くべき計画が持ち上がっているという。国会で『toto』問題を追及している奥村展三代議士(民主党)が明かす。
「振興センターは、国立競技場や代々木体育館などの資産を管理・保有しています。センターの役員の中には、国民の財産である国立競技場などを担保にカネを借り、赤字を埋めればいいと話している人までいると聞いています」
仮に国立競技場などが借金のカタになれば、センターの赤字がさらに拡大した際には売却されるという、最悪のシナリオが現実になる可能性もある。

国立競技場を借金のカタにしようという発想が本当にあって動いているのならば、国立競技場とそこで行われるスポーツ全般に対する理解も愛情もない組織だと思えます。ここまで来ると無益を通り越して有害ですらありますね。
ただ流石に「借金のカタ」にするのは世論も許さないとは思うのですが、ネーミングライツが、こんな組織の延命に使われるのであれば、正直賛成しかねますね。まず国立競技場の運営管理組織の改革からスタートすれば、かなりのお金が浮くんじゃないでしょうか。赤字を生んでるだけのいらない役員とかどんどん減らせそうですし。