J2第15節、ベガルタ仙台戦。今季初の連敗とディフェンダー不在以上の問題。

SH772007-05-15

いやー、ついに連敗する日が来ましたね。去年と一昨年は珍しくもなかったけど。まずは結果をJ's GOALより。
http://www.jsgoal.jp/game/2007/20070200030120070513.html
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030120070513_detail.html

●2007 J2第15節(5月13日/群馬県陸/4,042人)
ザスパ草津 1−3 ベガルタ仙台 
得点 19分:中島裕希(仙台) 57分:千葉直樹(仙台) 86分:尾本敬草津) 89分:熊林親吾(仙台)
警告 30分:本田征治草津) 60分:後藤涼草津) 63分:高田保則草津)
交代 60分:後藤涼松浦宏治草津) 松下裕樹山崎渡草津) 65分:中島裕希関口訓充(仙台) 73分:萬代宏樹→ウィリアン(仙台) 81分:永井篤志熊林親吾(仙台) 89分:氏原良二→佐藤正美(草津

第1クールの最終節が首位の札幌、ついで湘南−仙台−京都と第2クールの序盤は上位陣との連戦が続く今季の一つの山場だと思いましたが、主力DF3名+監督不在で相手は仙台となるとやはり厳しかったですね。次節はホームながら長野県松本市、麗しきアルウィンスタジアムでの京都戦。過去2戦(甲府鳥栖)は大量失点での敗戦と決して縁起の良いスタジアムではありませんがDF陣復帰で3連敗阻止、対京都初勝利といってもらいたいです。というか1回お休みだった3選手と植木さんには2試合分頑張ってもらわないと(笑)
さて仙台戦ですが、主力DF陣を欠いたとは云いながらもこの試合の大きな敗因はそこではなく、むしろ攻撃面で相手の変化に対応できない脆さであったと思います。詳しくは後述しますが、仙台が従来とは違う試合運びをしてくれたおかげで草津の攻撃での問題点が顕われましたし、それを次節以降の課題として取り組んでくれればと考えます。DF不在、監督不在にどうしても眼がいきがちですが、そのための「単なるボロ負け」に終わらなかった点は良かったと思います。問題点が出ること、出来ないことが分かる事も収穫です。試合については、まずJ's GOALからこの日のメンバーを。
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030120070513_detail.html

●2007 J2第15節vsベガルタ仙台 ザスパ草津スターティングメンバー 
GK:1本田征治
DF:7佐田聡太郎 17秋葉忠宏 3尾本敬 2寺田武史
MF:18櫻田和樹 30松下裕樹 6鳥居塚伸人 19後藤涼
FW:9高田保則 11氏原良二
●サブメンバー
GK:21常澤聡 DF:26小林亮太
MF:8山崎渡 FW:20松浦宏治 14佐藤正美 
●キックオフフォーメーション(4−3−1−2)
−−後藤−−氏原−−:松浦・佐藤正
−−−−高田−−−−:山崎
−櫻田−松下-鳥居塚-:
寺田−−−−−−佐田:
−−尾本−−秋葉−−:小林
−−−−本田−−−−:常澤

結論から述べれば、奇策ではなく今季のチーム構築の流れで組まれたメンバーと布陣となりました。主力DF3選手の不在はDMFの秋葉を1列下げて尾本とのコンビ、両SBは開幕当初の形に戻した右に佐田で左に寺田の4バックに。予想も上がっていた「鳥居塚をリベロにする3バック」はチーム全体に手を入れざるをえないので、試合運びの実際と経験の積み上げという点からすれば難しかったのだと思います。そして高崎経済大学附属高卒のルーキー小林くんとキャプテンマッスル佐藤正美が今季初のベンチ入りとなりました。
布陣は4−3−1−2に。ただ実際の動きは従来の4−4−2と大きくは変わらず、いつもより高田が中央寄りで鳥居塚が下がり気味を意識したくらいの形でした。試合の組み立てとしては守備力の低下を3DMFでフォローしつつ、その一方で両サイドバックを攻め上がりを促進して攻撃力の低下も防ぐことが意図されていたと思います。つまり専守防衛ではなく攻めにも活路を見い出した形ですね。この試合、DF陣の組み合わせと布陣を変更を余儀なくされたとはいえ、攻め方は従来の形のオプションとして面白そうな布陣だと思えます。上記の布陣の秋葉をチカと変更すると「ああ、こういうのもありかな?」な感じですしね。まあ、仙台のほうが従来の戦い方を変えてしまったので、この試合では有効ではないオプションになっちゃったんですけど orz 試合の流れは伊藤寿学さんのレポートから。
http://www.jsgoal.jp/news/00048000/00048524.html

【J2:第15節 草津 vs 仙台 レポート】ゴールへの意識の差が勝敗を分けた。勝った仙台は連敗をストップ、敗れた草津は今季初の連敗。
(前略)
主力DF3人の「出場停止」に加えて植木監督が「ベンチ入り禁止」となった草津は、MF秋葉が最終ラインにスライドし、鳥居塚、松下、櫻田が3ボランチを形成する[4−3−1−2]の急造システムで仙台に挑む。「スタートのリズムは悪くなかった」と高田が話すように、序盤は両SBを高めに配置した草津が積極的な攻撃を展開する。しかし、時間の進行とともにリズムは仙台に傾いていく。「最初は様子を見ていたが、その後はボールを散らして両サイドから攻めることができた」と永井。

守備に不安のある草津を仙台が圧倒する立ち上がりになると思われましたが、予想に反し草津の攻勢で始まりました。布陣の意図どおりに両SBが高い位置から攻撃に参加し、後藤と氏原がゴール前に迫ります。開始5分くらいまでは完全にハーフコートでしたから相手に「様子を見ていた」とコメントされているとはいえ、ここで得点したかったですね。
そして徐々に仙台が攻勢に移るのですが、従来の「前掛かりのポゼッションで猛攻」というよりもDF裏を狙って縦ポンを繰り返し、それが通れば中盤が攻め上がると云う一見消極的なサッカーでした。草津は従来の戦い方を目指しましたが、仙台は戦い方を変えてきました。変える必要がありそうなほうが変わらず、変える必要のなさそうなほうが変えてきた。この戦い方のかみ合わせ、仙台に吉と出ました。

先制点が生まれたのは主導権が仙台に移った19分。右サイド・梁からミドルパスを左サイドの裏で受けた中島がゴールへと猛進。「裏でもらった瞬間からDFをかわしてシュートまで行こうと思った。イメージ通りのプレーができた」(中島)。中島の放ったシュートはGK本田の左手をかすめてゴールネットを揺らす。
(中略)
草津がバランスを崩した理由は、仙台が徹底してDFの裏にボールを出したことにあった。「中盤を助けるためにコンパクトにしたが、裏に出されてラインコントロールが難しかった」(尾本)。中盤の局地戦を仕掛けるために高いラインを保つ草津の背後に両サイドから高精度のロングパスがフィードされる。

この日の副審は「例のあのヒト」こと恩氏さんで、その位置どりもジャッジも危なかっしく、先制されたシーンはともかく2度ほど、微妙と云うのも躊躇われるオフサイドがあり、そのピンチで失点しなかったことがまだ救いでしたね。先制した後に仙台は畳み掛けるでもなく、8人2ラインの守備を整えてからボールを奪い、2トップへのフィードを多用してきました。

「今まではキレイにつなぐことが多かったが今日はシンプルに縦に出した」と望月監督。スタンドから見守っていた植木監督は試合後、「仙台が長いボールを蹴ってくるのは予測していなかった」と渋い表情。

8人が自陣に引くような仙台の形に草津は短いパス回しに拘り、高田ないし櫻田が長く持って奪われるか、サイドに詰まった窮屈な攻防を余儀なくされ、そこからゴール前に出るような有効な攻撃はほとんど行えませんでしたね。「意図する戦い方」のかみ合わせで草津不利、かつ実力も不利。そして先制されていると大変苦しい形になってしまいました。
ただ問題は、戦い方のかみ合わせよりも「8人2ライン」の守備ブロックを、先の札幌戦で草津は崩して勝ったのに、この日は頭を切り替えて崩し方を(チームで)思い出せなかったことだと考えます。札幌戦では氏原のポストプレーと後藤の飛び出しでサイドを突いて高い位置で起点を作り、DFラインを否応なく下げさせてMF陣と距離を開かせ、そのスペースを高田や鳥居塚、草津勢が有効に活用して攻撃を組み立てました。
札幌戦と同じくFW陣へのロングボールから組み立ててもよかったと思いますが、後方でのパス回しが手段ではなく目的と化してしまい、前線の後藤や氏原、時には高田がつかんだ飛び出しのチャンスを全くルックアップせずに横パスを繰り返しているのは歯がゆかったですね。少なくともハーフタイムに佐野さんから修正がかかると思いましたが、それもないようでした。『事前プランと違う戦い方が最近やったことでも出来ない。試合中はもちろんハーフタイムを挟んでも修正できない』。それがこの試合で一番大きな問題かつ残念なことだと考えます。踏み込んで云えば、連敗したことよりキツイですね。
http://www.jsgoal.jp/news/00048000/00048489.html

鳥居塚伸人選手(草津
「こっちのシステムが変わっていたので最初は仙台が様子を見ている部分があったが、相手が慣れてからは、うちの「穴」を突かれてしまった。ゲーム中に選手たちで修正しなければいけなかったが、修正ができなかった。外からの指示を待つのではなく、選手たちが感じ取って表現しないといけない」

鳥居塚さん始め、ベテラン勢は試合途中で判っていたのだと思いますが、チームとして意思統一できないと思うようにはいかないんですね。チームとしてのこういう敗戦から経験値を積んでもらいたいと思います。

前半を0−1で折り返し後半の巻き返しを狙った草津だったが、儚い希望は57分に打ち砕かれる。梁が蹴った右CKに走り込んだ千葉がドンピシャで合わせ2−0。この日の草津に2点のビハインドを返す力はなかった。草津はきっちりとスペースを埋めてくる仙台の守備網を破ることができず、86分にCKから尾本が決めたのが唯一の得点。ロスタイムには熊林に豪快なボレーを叩き込まれ、勝敗は喫した。

前半を1点差で折り返しものの、セットプレーから失点。いつもと違うメンバーと高さ不足を突かれた形でしたね。後半も仙台の2ライン守備の中でもがく攻撃を繰り返してしまいましたが、松下が山崎と交代し従来の4−4−2に戻して、後藤に代わった松浦がサイドに流れてボールを受けるなど高い位置で起点が出来ると得点機もつかめ、尾本のゴールにつながりました。高田がトップ下で3ボランチは相手によっては仕える布陣だと思いますが、この仙台戦では裏目でした。オプションや時間帯で用いるのは今後も試してよいのではないかと思います。

●尾本 敬選手(草津
「CBが自分しかいない状況だったのでプレッシャーというか、やらなければいけないと思った。結果につなげることができなかったので、満足は全然できないし、とても残念。ラインコントロールの面で足りない部分があったと思う。(ゴールのシーンは)0−2で負けていたので、どうしても決めたかった。いいボールがきたので合わせることができた。次も出られるように頑張りたい」

仙台の放り込みに苦労しましたが、空中戦では安定したプレーを見せ、かつ1ゴールを挙げてくれました。試合後にアイサツにきた尾本が皆よりやや離れて、ずっと自分を責めているかのような表情でしたが、この特殊状況の試合での3失点で評価するのは気の毒ですね。後方からのフィードやパス回しの精度をもう少し上げてこれれば、CBはもちろんSBとしても貴重な戦力でいてくれると思います。

(中略)一方の草津だが、「つなぐ意識」が強過ぎる印象を受けた。前の選手に当ててから展開するという攻撃パターンに執着するあまり、チャンスにもかかわらずボールを戻すシーンが多発。攻め手優位な1対1の場面でも勝負を回避、自らバイタルエリアからボールを遠ざけ、仙台守備陣を楽にしてしまった。ゴールを奪うためには臨機応変なプレーが必要だ。(後略)

今回の仙台のロングボールの多用は完全に予想外で、しかも先に失点して苦しい展開が続いた試合でしたから、こちらもせめて後半頭から戦い方を変更する必要があったと思います。この敗戦でまた一つ経験を積んだのですから、これからは攻め手を切り替えることを期待したいですね。

櫻田和樹選手(草津
「攻撃になったとき、2本目のパスでのミスが多く攻撃の形がなかなか作れなかった。悪いところも分かっているし、後はプレー精度の問題。選手同士がもっと近づいてプレーすれば良くなると思う。全体的にリズムが悪いとは感じなかったが、やはりミスが多かったと思う。相手のボランチのポジショニングも良かった」

高田保則選手(草津
「最初のリズムは悪くなかったので、最初の失点が大きかった。いつも20分までに取られてしまっているので、チームとしての脆さを感じた。前半は0−0で抑えて後半勝負まで持ち込みたかった。もっとプレーの精度を上げないといけない」

秋葉忠宏選手(草津
「立ち上がりのリズム自体は悪くなかったが、ワンチャンスを決められてしまい、苦しくなった。その後の相手のリトリートが早く、もっと技術を上げていかないとああいう相手を崩すことは難しい。中盤でのミスが多く、周りが置き去りになって、カウンターを受けてしまった。シュート数、結果が出ないということはどこかに原因がある」

選手コメントを読んでも皆が挙げる問題点が共通しており、改善に取り組んでくれると思います。繰り返しですが、問題点がハッキリするのも収穫です。この試合が90分ただひたすら仙台の攻撃に押し込まれ、カウンターで1点返すも3失点、なんてボロ負けではなにも収穫はなかったと思います。J2では2ライン8人の守備を敷いてボールを奪いにくるチームも多いですし、これからそういうチームと戦う時にもこの試合で得た経験が活かせるんじゃないでしょうか。植木さんもいつもと違う俯瞰視点でチームを現地観戦できたわけですから、今回得た情報を活かしてくれると思います。次の京都も強豪ですが、なんとか松本での初勝利、対京都初勝利を期待したいですね。