J2第18節水戸ホーリーホック戦。北関東ダービー第2戦は炎天下での苦闘。

SH772007-05-29

前節の京都戦は惜敗。この水戸戦は辛勝で連敗ストップ。ホーム3連戦でなんとか1勝を挙げることが出来ました。とりあえず結果が出てよかったよかった。内容のほうは正直ほとんど収穫はなかったですが、水戸のような粘り強く守るチーム相手ではこの日の日差しのようなジリジリした試合展開も致し方ない部分もあります。まずは結果をJ's GOALから。
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030120070526_detail.html

●2007 J2第18節(5月26日/熊谷陸/3,401人)
ザスパ草津 1−0 水戸ホーリーホック
得点 81分:高田保則草津)
警告 31分:藤井大輔草津) 56分:桑原剛草津) 84分:加藤広樹(水戸)
交代 30分:大和田真史金澤大将(水戸) 44分:西野晃平遠藤敬佑(水戸) 48分:後藤涼松浦宏治草津) 53分:椎原拓也小椋祥平(水戸) 68分:秋葉忠宏松下裕樹草津

とにかく暑かったですねえ。公式発表は摂氏27度でしたがコンクリートの照りかえしのスタンドとピッチレベルでは30度を越えていたと思います。強い風がアウェイ側からホーム側に吹いていたのがまだ救いでした。試合のほうは1対0で決着。水戸はここまで1勝と苦難のシーズンですが、内容はそこまで悪くはなく、両者に大きな力の差は最後に高田(決めるヒト)がいるかいないかの違いでしかありませんでした。それでも内容ある惜敗よりは辛勝のほうが遥かにマシなので、草津にとって連敗ストップと勝ち点3の獲得は大きいのですが。この日のメンバーと布陣は以下のとおりです。

●2007 J2第18節vs水戸ホーリーホック ザスパ草津スターティングメンバー 
GK:1本田征治
DF:6鳥居塚伸人 23藤井大輔 4田中淳 3尾本敬 
MF:17秋葉忠宏 18櫻田和樹(C)19後藤涼 15桑原剛
FW:9高田保則 11氏原良二
●サブメンバー
GK:21常澤聡 DF:2寺田武史 
MF:8山崎渡 30松下裕樹  FW:20松浦宏治
●キックオフフォーメーション(4−4−2・ドイスボランチ
−−後藤−−氏原−−:松浦
高田−−−−−−桑原:山崎
−−櫻田−−秋葉−−:松下
尾本−−−−−鳥居塚:寺田
−−田中−−藤井−−:
−−−−本田−−−−:常澤

草津の基本フォーメーションの4−4−2ドイスボランチで布陣しました。チカと佐田が抜けたDFラインですがCBは藤井と田中が組み、右SBには鳥居塚。左SBは尾本と並びました。サイドの守備を重視した組み合わせで、かつサイド攻撃を絡めるために鳥居塚が配置されてと考えます。現状で一番の適材ですが、鳥さんは何でもやりますねえ。またその期待に応えてしまうから鉄人なんでしょうね。MFはボランチが秋葉・櫻田ペア。DFが守り重視なので攻めの配球仕様、相手のプレスをかわす意図もあったと思います。
またこの日、お休みのチカに代わってキャプテンマークを巻いた櫻田はかなりの覚悟だったようです。伊藤さんのゲームレビューから。
http://www.jsgoal.jp/news/00049000/00049066.html

【J2:第18節 草津 vs 水戸 プレビュー】第2クール、勝ち星のない両クラブの対戦は死闘の予感。連敗を止めるのは草津か水戸か?
(前略)京都戦で負けた後、一人、涙を流していた櫻田は「試合に負けて、初めて泣いた。勝てる試合を落としたことが本当に悔しかった。次は絶対に勝ちます」と強く誓った。運にも見放され、3連敗となった草津。この嫌なムードを払拭するためには、今節・水戸戦で勝利を挙げるしかない。

サクちゃん・・・(涙)。サクちゃんは頭に蝶ネクタイを巻く宴会部長だとばかり思っていたから(他も思え)、その明るい表情の内側にこんな熱いモノがあるとは。でも試合ではその決意とは裏腹に、秋葉ともども水戸のFWも参加したサンドイッチ猛プレスに苦労しちゃったんですけど。(´・ω・`)次もガンバレ
話を元に戻しまして。両SHは登録リストと異なり右に桑原、左に高田。二人に共通することはドリブルでサイドを抉れること、質の高いクロスを上げられることです。鳥居塚の右SB配置も併せて、この辺りにサイド攻撃からゴール前でのシュートチャンスを増やそうとする植木さんの苦労が見えると思います。FWはポストの氏原とスピードの後藤のペア。スピードスター松浦がサブに回りました。実際の試合の流れは、J's GOALに伊藤さんのレポートから。
http://www.jsgoal.jp/news/00049000/00049182.html

【J2:第18節 草津 vs 水戸 レポート】内容なき勝点3。草津は、エース高田のゴールで連敗を3でストップ
81分、草津・高田が叩き込んだゴールによって勝敗は決した。連敗を3で止めた草津と、3連敗となった水戸。1つのゴールが導いた結果は正反対のものになった。しかし、ゲームの内容はどちらも決して褒められるものではなかった。稚拙な攻撃、重なるミス…。両チームともこの日の内容は、重く受け止めなければならないだろう。

勝ち試合なのにかなり苦言を呈されていますが、伊藤さんのレポートは、ただ批判ありきの叩き記事でもなく、また提灯記事もない、厳しさと暖かさのあるJ's GOALレポートで有数の読み応えです。レビューでの独自の密着情報と併せて、こういうヒトが草津を担当してくれていることは何気にかなりの幸運だと思っています。
確かに酷暑の中での試合、負傷者と出場停止が多い上に水戸はさらに連戦と、コンディションも万全とはいきませんでしたが、試合はJ2下位同士の潰し合いの様相でした。昨季から今までの北関東ダービーはこういう展開でロースコアの接戦か、草津が嵌まって3−1で勝つかの繰り返しでもあるんですよね。

(前略)両チームともに序盤はDFラインを高く設定。センター付近に選手が密集し狭いエリアでの攻防となる。しかし、その状態は長くなかった。守備ラインを下げるため、両者がロングボールを使い始めると雲行きが怪しくなってくる。(後略)

レポートどおり立ち上がりこそ中盤での混戦でペースの取り合いが行われましたが、両チームともにサイドの高い位置で起点を作るべくロングボールの蹴り合いに推移していきました。この応酬は風上の水戸有利でしたが、最初に得点機を作ったのは草津でした。
15分に水戸陣内左サイドでFKを得て、キッカーは桑原。桑原の精度の高いキックはファーサイドで待つ尾本にドンピシャ。尾本はヘディングシュートを放ちますが、これはキーパー正面に。試合を振り返って見ると、このチャンスで先制したかった場面となりました。この後は風上に位置する水戸が徐々に形を作って攻撃に転じ、試合のペースをつかんでいきます。28分にMF椎原との早いパスワークからFW西野がDFラインの裏を突いてペナルティエリアに進入、DFを引っ張ってゴール正面の椎原に絶好のパスを送り返しますが、椎原がシュートをゴール上に打ってしまい草津は命拾い。さらに31分には藤井のファールから眞行寺が(草津の)左サイドからFK、ループ気味のシュートは風にのって伸び、GK本田がかろうじて触るもポスト直撃のピンチがあるなど、20〜40分くらいの時間帯は水戸のペースでした
この悪い時間帯の草津の攻撃は、ボランチの秋葉と櫻田が水戸の前線からのプレスに思うようにボールが繋げませんでした。サイドがパス回しに参加しないので、どうしても高田のポストプレーやライン裏を突く後藤へのロングボールといった単調な攻撃の繰り返しになってしまっていました。

互いに攻撃が単調になり、決定機が作り出せない展開。30分過ぎから水戸が自陣に引き始めると、草津は突破口すら見つけることができずに前半を終えてしまう。

伊藤さんはこう記されていますが、そう悲観したものでもなくて。草津はピンチを凌ぐとサイドに流れた後藤や氏原、右SB鳥居塚がサイドから中に入ってパス回しに加わってきて攻撃にリズムを持たせます。38分にはパス回しでポゼッションが組み立てられると左SB尾本が攻撃に絡めるようになりオーバーラップ、ゴール前に走りこむ高田にクロスを合わせます。GKはパンチングで逃れるもボールはファーサイドに流れて、これを後藤が拾ってDFをかわしてふたたびゴール前に折り返します。DFがクリアするも草津の選手に当たりゴール前へ。詰めた氏原がこれを押し込めずに攻撃は終わってしまいましたが、うまくいかないパス回しを前半のうちに修正出来たこと、そこから攻撃を組み立てて人数をかけた猛攻に繋げられたところは、少なからず収穫でしたね。京都戦では攻撃が詰まった状態からなかなか抜けられませんでしたから。前半は0−0で終了しました。
加えて前半について特筆すべきことは、24分に氏原からボールを奪おうと競り合ったCB大和田選手が氏原ともつれて転倒した際に、ヒザを捻ってしまい負傷交代、前述の前半終了間際の草津の猛攻を終わらせたクリアボールがカウンターにならないようを田中がラインを割らせたのですが、そこにFW西野選手がスピードにのったまま詰めて、二人が激突し西野選手が転倒してわき腹を痛めてこちらも負傷交代に。前半のうちに交代枠2つを負傷交代で使用しなければならなかった水戸の前田監督も大変でしたが、大和田選手は全治7ヶ月の重傷、西野選手も当分欠場となってしまいました。お二人が早く、1日も早く復帰されることを願います。どこのチームでプレーする選手も負傷のニュースはつらいばかりですね。

後半開始早々、水戸・眞行寺、草津・後藤がそれぞれビッグチャンスを迎え、ゲームが動き出すかに見えたが、その後は再びこう着状態。草津は水戸の守備網を打ち破ることができずに、中盤でボールを失ってはカウンターを受けるという悪循環に陥る。

草津は前半最後の攻撃のイメージのまま攻勢を仕掛けますが、チーム全体が攻めあがっている中で尾本もオーバーラップ、簡単な横パスをカットされて一転カウンターの大ピンチに。寄せた秋葉と櫻田もかわされ、ゴール前にクロスを上げられます。そしてゴール前で一人つぶれてファーサイドで待ち受ける、どフリーの眞行寺にボールが渡ります。この試合最大のピンチでしたが、GK本田が飛び出したのが幸いしたのかシュートはサイドネットに刺さりました。先制されなくて済みましたが、尾本の課題であるパス精度から招いたピンチだっただけに状況に応じたパスまわし、リスクを考えた攻め上がりをしてもらいたいと思います。CBからの転向で苦労はあると思うのですが、SBとしての守備はかなり良くなってきているので、あとはパスの精度が上がれば文句なしのスタメンでOKなんですけどねえ。
ピンチの後にはチャンスありの言葉どおり、この後は草津の好機がやってきました。48分には櫻田から後藤へ浮き気味のパスで左サイドを突破、GKと1対1でシュートを打ちますが、GKファインセーブで得点ならず。51分には水戸DFのパス回しに櫻田が駆け上がってプレス、ボールを奪うと氏原とのワンツーでサイドを突破し、ループでゴールを狙います。これはファーサイドに流れてギリギリでバーに当たらなかったのですが、これが跳ね返っていれば、高田が詰めていただけに得点になったかもしれない惜しい場面でした。後半立ち上がりのチャンスを作ったのは櫻田でした。プレスの的を絞らせないために、左右や前後に持ち前の運動量を駆使して走りまわったのが奏効しはじめていたのですが後藤と松浦の交代で元の位置に戻ることになってしまいました。カウンターが得意な相手でDMFがポジションを空けるリスクも大きかったのですが、引いた相手を打開すべく縦横に走る櫻田をもう少し見たくもありましたね。またこの交代で草津は流れを失ってしまいました。

草津は水戸の守備網を打ち破ることができずに、中盤でボールを失ってはカウンターを受けるという悪循環に陥る。「草津の長所を消すことができていた」(前田監督)。水戸は、草津の櫻田、秋葉に対して、FWとボランチが挟み込むように対応。「ボランチからトップに当ててくるのは分かっていた」と初田。ボランチからの展開は草津の生命線。起点を潰された草津は、システムを変えるしか方法がなかった。
草津は後半途中から高田、氏原、松浦の3トップに変更。中盤にスペースを与えるというリスクを犯して勝負に出る。それに対して水戸は、空いたスペースを金澤、鈴木、眞行寺が使い、サイド攻撃を展開。草津を追い詰めていく。だが、「相手のミスに助けられた」と尾本が振り返ったように決定力を欠いたことが水戸の首を絞めることになる。

3トップにしたことで全体が間延びしてしまって中盤の数的優位をなくした草津は、3トップにあてる単調な攻撃を繰り返してはカウンターを受ける自滅の流れになってしまいました。
水戸の前田監督はこの機会にMF椎原に代えて五輪代表候補の小椋を投入、勝負に出ます。大和田の負傷交代で右SBに入っていた金澤大将はスピードある攻め上がりが特徴ですが、前半はほとんど守備に専念してました。しかし小椋の投入で守備の負担が軽減し、また小椋から良いパスが配球されるので、この時間帯は積極的に前に仕掛けてくるようになり、水戸全体の攻勢を強化していました。負傷交代でなければ後半の切り札的な使われ方が計画されていたのだと思いますが、負傷交代の逆境の中でも我慢強く冷静に勝ち筋をキープしておいた前田監督の手腕が見えた采配だと思いました。
しかし流れもチームバランスも悪くなった草津ですが、この時間帯で失点せずに辛抱強く守れたからこそ、勝ち点3を得ることが出来たのだと思います。チームが強くなっていくためには、こういう時に失点しないことが大事だと判りますね。
草津は後半も終盤になってくるとようやく3トップの利点、前方に人数を掛けている周的優位を活かせる場面を作れるようになってきました。全体的に左サイドに寄り、突破を図ります。

そして迎えた81分、左サイドに流れた桑原がゴール前にセンタリング。ファーサイドで松下が折り返したボールに駆け込んだのはエース高田だった。「最初は左サイドのサポートに行こうとしたが、ボールが上がりそうだったので中に入っていった」と高田。高田の右足から放たれたシュートが豪快にゴールネットを揺らす。この1点が草津に4試合ぶりの勝利をもたらすことになった。

左サイドに人数を集めた草津に、後方から支援が加わります。ボールを奪取した藤井がオーバーラップし水戸の守備を崩しつつ松浦へ。そして松浦のポストから上記の桑原のクロスに繋がりました。この状況を全員で生み出しましたが、それは藤井の判断のよさから生まれたものでしたし、鳥居塚のオーバーラップのスペースフォローと、再三カウンターにさらされながらもチカ不在を田中とともに良く守ってくれました。

かろうじて勝利をつかんだ草津だが、このゲームで突きつけられた課題は多い。この戦いを続けている限り、草津がこの先、順位を上げていくことは難しいと言わざるを得ない。「これで満足しては絶対にいけない。大事なのは次の山形戦(6/2@NDスタ)だ」と佐野コーチ。この日の草津が得たものは、勝点3という結果のみだ。

引いた相手に思うようにいかないのは相変わらずでしたが、仙台戦や京都戦よりはゲームの中でも修正や取り組みが見られ、それが流れの中の得点に結びついたことは成長だと思えます。また久々に先発した桑原が前線や櫻田をよくフォローしてパスをまわし、高田にあわせて左右のポジションを代えながら好機を窺いつつ守備も粘っこくこなしていましたが、その運動量と攻守の意識は今季最高の出来ではなかったかと思います。
加えて桑原がSH左右いずれでも遜色なく動けること、鳥居塚がSBも充分にこなせることが判ったため、鳥居塚がほぼ固定されていたSHのポジションに桑原や山崎に加えて、山本拓弥中井義樹里見仁義など、今季なかなか出場機会を得られない戦力にもチャンスが回ってきやすくなったと思われます。
佐田の長期離脱は痛いのですが、鳥居塚や桑原の見せてくれたパフォーマンスで左右SHのポジションに新戦力の台頭の機会が増えたことも判りました。こう見ると、勝ち点3だけしか得るものの無かった試合でもありませんでしたね。
また、この勝利で連敗が止まっただけではなく、ザスパ草津は「敷島(陸上・サカラグ)以外のホーム戦初勝利」を記録しました。今までは熊谷、松本、足利と敷島から離れたホーム戦は全敗でしたからねえ。水戸相手に2年連続勝ち越しにも近づきましたし、これからまだまだ長いシーズンですから、あれこれの記録の塗り替えと、MFサブメンバーの登場と活躍にも期待したいですね。というか山本・中井・里見が見たいんです、そろそろ。みんなガンバレ。