J2第22節アビスパ福岡戦。メンバーが足りません。

SH772007-06-18

攻守ともに自滅負け。やりづらい相手ですねえ。詳しくは後述しますが、今季のザスパ草津アビスパ福岡の攻撃コンセプトは、ほぼ同じだと思います。そうなると個々の能力では福岡に分があるだけに、劣勢に立たされてしまっています。それでも為す術なかった第1クールでの対戦とは違い、ある程度は戦えたと思います。ただ福岡の第2クールは苦戦つづきで、この試合の内容も決して良くなかったと思いますが、そんな相手の不調につけ込めないところに、草津の力不足が見えるとも思いますね。とりあえずJ's GOALより結果とこの日のメンバーから。
http://www.jsgoal.jp/result/20070200030220070617_detail.html

●2007 J2第22節(6月17日/博多球/7,711人)
アビスパ福岡 2−0 ザスパ草津
得点 18分:アレックス(福岡) 84分:久藤清一(福岡) 
警告 26分:久藤清一(福岡) 75分:釘崎康臣(福岡)
交代 56分:山崎渡松浦宏治草津) 69分:リンコン→釘崎康臣(福岡) 78分:桑原剛尾本敬草津)/久永辰徳山形恭平 85分:氏原良二後藤涼草津) 88分:久藤清一本田真吾(福岡)
●2007 J2第22節vsアビスパ福岡 ザスパ草津スターティングメンバー 
GK:1本田征治
DF:23藤井大輔 5チカ(C) 6鳥居塚伸人 24吉岡聡  
MF:18櫻田和樹 17秋葉忠宏 15桑原剛 8山崎渡
FW:9高田保則 11氏原良二 
●サブメンバー
GK:21常澤聡 DF:3尾本敬
MF:30松下裕樹  FW:19後藤涼 20松浦宏治
●キックオフフォーメーション(4−4−2・ドイスボランチ
−−高田−−氏原−−:後藤・松浦
桑原−−−−−−山崎:
−−櫻田−−秋葉−−:松下
吉岡−−−−−鳥居塚:尾本
−−チカ−−藤井−−:
−−−−本田−−−−:常澤

通常どおり4−4−2のドイスボランチにて布陣、ここ3戦連続で使用している鳥居塚と吉岡をSBに起用した攻撃的4バックで臨みました。氏原の出場停止が明けて先発に復帰し、代わりに松浦がベンチスタートに。
先に触れた草津と福岡の攻撃コンセプトはほぼ同じ」ですが、両チームともに「ドイスボランチが攻撃を組み立て、両サイドが高い位置で起点を作り、ゴール前にボランチも詰める厚い攻撃でフィニッシュ」を意図していると思います。そうなると試合の趨勢は、サイドの攻防で優位に立つことと、ゲームメイカーのボランチに仕事をさせないことの2点で決します。そして草津は鳥居塚・吉岡の攻撃的な両SBを先発させて、サイドの主導権を守備より攻撃でとることを選択しました。守ってどうなる相手ではありませんからね。*1さらに上毛新聞の記事によると、草津は全体をコンパクトに保ち、全体でプレスをかけて久藤と布部の両ボランチを封じる策であったことが判ります。福岡も全体的にはやや間延びしながらも秋葉と櫻田、両SHの桑原と山崎への寄せは早いものでした。同じ攻め方だったら守り方も同じようなものになりますね。
ただ個人能力でこちらが劣勢ですから、草津は数的優位に活路を求めました。そしてそれがサイド攻撃の組み立ての違いとなりました。攻撃で数的優位を作れば守備はリスクを負って手薄になりがちですが、挑戦者はリスクを犯さねば勝ちは見えてこないものです。まあ、結局は負けてしまったのですが、4CBの守備固めで応じるよりは課題も見えたと思いますね。
そんな試合の流れはJ's GOALのレポートから。福岡担当はベテランの中倉さん。そのレポートは草津との試合でなくとも大いに参考になっています。実質タダで読めるのですから必読のサッカーレポートだと思います。
http://www.jsgoal.jp/news/00050000/00050138.html

【J2:第22節 福岡 vs 草津 レポート】光ったベテラントリオの活躍。福岡が我慢の末に草津を下す。
(前略)
試合は予想通り、中盤でつぶし合う展開で幕を開けた。福岡の狙いは奪ったボールを両サイドのスペースへと送りこんで縦への突破を仕掛けること。そして草津は、奪ったボールをシンプルにラインの裏へ送り、そこへ2トップ、あるいは2列目の選手が斜めに走り込む。試合をリードするのは福岡。7分には久永辰徳の突破から得たチャンスにアレックスが、14分には再び久永の突破から布部が、それぞれ決定的なシュートを放つ。

立ち上がりは草津の攻勢でした。コンパクトな布陣から素早いプレスで主導権をとり、開始早々にFKとCKに繋げますが、どちらも不発。前述のとおり攻撃コンセプトが共にサイド攻撃を基軸としますが、草津がSBを起点としてSHがセカンドストライカーになる形に対し、福岡はSHが主に単独でサイド突破の任を負い、SBは守備を優先しています。中盤のプレスが機能しているうちは草津が数的優位に立てますが、シュートで終われなかったり、カウンターをくらったりすると、SBのスペースが空いてしまう草津のほうが途端にピンチになります。
攻撃しながらもパスミスなどでフィニッシュできない草津に対し、福岡はレポートどおりSHの突破からチャンスを作っていきます。SBが守備に残る福岡のほうがリスクコントロールでも優位なので、攻め切れなければ逆襲を受けることは植木さんも承知していたと思います。ただ植木さんとしては、SHも攻撃に加わった数的優位の攻撃で先制し、それからは必要ならばSBが自陣に引いてサイド攻撃のスペースを消し、焦る福岡に対して途中投入する松浦と後藤のカウンター攻撃でトドメを刺す、というような流れにもっていきたかったと思われます。ですのでサイド攻撃からどちらが先に点をとるか、が最初のターニングポイントとなりますね。まあ草津がとられちゃったんですけど。

そしてゴールネットを最初に揺らしたのも福岡。時間は18分のことだった。立ち上がりから再三好機を演出していた久永がドリブルでペナルティエリアへ。対峙していた山崎渡の足が久永の前方をふさぐ。倒れ込む久永。その瞬間、ホイッスルが鳴り響いた。微妙な位置だったが主審が指す指の先はペナルティスポット。そして、これをアレックスが確実に決めて先制点を奪うことに成功した。3試合ぶりのゴールに博多の森に安堵感が漂う。

スロー映像では、足をかけて転倒させたのはペナルティエリアのギリギリ外で誤審だと判りましたが、そこまで精緻な判断を、遠くから一瞬で判定しなければならない主審に求めるのも酷な話。むしろ、そんな微妙な位置で足をかけるプレーを選択するほうがマズイといえるでしょう。アレックスとのPK対決は、GK本田の跳ぶ方向はあっていましたが、スピードで勝るシュートを止めることは出来ませんでした。これで1−0。
開始から20分も経たないうちに、予想された相手の攻撃に対して、無用なPKを与えてビハインドの状況にしてしまう。この試合のためにチームが準備してきたものを早々に壊してしまった残念なプレーと云えるでしょう。この場面では山崎でしたが、ラフプレーや無用なファールを繰り返して勝手にピンチに陥り自滅するのが今年の草津の特徴です。もちろん強い相手との対戦が続いて大変なのですが、それでもどこかでノーファールで止める取組みを始めない限り、草津は安定した強さを持つチームになれないと思えます。逃げ切れなかった山形戦も、本田が神になった徳島戦も自陣でのファールを繰り返した結果でしたし。

しかし、ここから試合の主導権を握ったのは草津だった。櫻田和樹を中心に高い位置からボールを追って中盤を制圧すると、秋葉忠宏がダイアゴナル(対角線の)パスを両サイドに配る。起点を作るのは左SBの吉岡聡。高い位置でボールを受けて福岡ゴールへと迫った。後手を踏んだ福岡はボールを後追いするばかりで草津にプレッシャーを与えられない。草津がフィニッシュの部分に課題を抱えていることもあって、福岡は何とか最終ラインで跳ね返してはいたが、試合の流れは間違いなく草津にあった。

得意の攻撃が決まったにもかかわらず、福岡は失点を警戒してDF陣が深めに位置を取り、全体的に間延びしたまま守勢に入ってしまいます。最近の不調ゆえに失点したくない守りの姿勢が出たのだと思いますが、こういう流れにつけこめないのが今の草津
レポートどおりSB吉岡を起点として効果的な攻撃を見せ、26分にはコーナーを抉って突破した吉岡からのクロスがドンピシャで氏原に合いますが、そのヘディングはわずかにクロスバーの上に。ここで得点できればまた違った展開になったかもしれないので残念でした。またこの日は秋葉を後ろに残して前がかりにプレーする櫻田が、36分に中央を突破して高田のミドルシュートにつなげる場面も作り、ゴール前に詰める人数を増やそうと試合を通じてかなり頑張ってくれました。チームとして全体的にクロスと中央の詰めのタイミングがあわない攻撃が多かったので、そこをどう工夫していくかが今後の課題です。そこにどう櫻田が絡んでくるか。草津のサイド攻撃のフィニッシュは櫻田と両SHが握っていると思います。
ただ、この日最大の懸念材料として、高田と鳥居塚が不在の両SHが高い位置でのゲームメイクとしてもセカンドストライカーとしても相手の脅威にならず、特に山崎が福岡のプレスの的になって持ちすぎで奪われたり、パスミスを繰り返して相手の反撃の端緒となってしまっていました。前節のヴェルディ戦では目立ちませんでしたが、あの日のヴェルディは特にプレスが甘かったからだと思えます。攻守ともに散々な日となってしまった山崎ですが、持ち前のバランスのよいポジションとりと運動量だけでなく、レギュラー確保のためには高い位置でのボールキープとセカンドストライカーとしての力を発揮することが求められていくことでしょう。簡単ではありませんが、アマチュア時代を知る数少ない選手だけに頑張って取り組んでもらいたいと思います。
失点してからは福岡の引き気味な試合運びにも助けられ攻勢を続けましたが1−0のまま前半は終了します。不調の福岡相手とはいえダイレクトなパス回しが通用する場面もあり、前半終了まで草津押し気味で推移できただけに、ハーフタイムに立て直してくる前にせめて同点としておきたかったですね。

後半も草津ペースは変わらない。「2点目が重要」(リトバルスキー監督・福岡)と指示された福岡だったが、勝てない試合が続いているせいか低い位置にとどまってしまい、セカンドボールを拾えない苦しい展開に追い込まれた。しかし、それでも福岡は、ゴール前に人数を集めて跳ね返すという泥臭いスタイルで辛抱強く耐えた。そんな福岡が奪った終了間際のゴール。それは我慢し続けた福岡へのサッカーの神様からのプレゼントだったかもしれない。

レポートでは後半も草津のペースと書かれていますが、前半はなかなか前に進めなかった田中の突破と、動きの重たかったリンコンに変えて釘崎など運動量のある選手が投入されると試合は一進一退に。田中の強みはロングボールを前のスペースに送ってもらい、スピードにのった状態でボールを拾ってサイドを突破していくところですから、そのケアとして尾本を左SBに入れて吉岡を一列上げ、田中のスピードを落とさせるスペースつぶしで対処しました。同時にチカを前線にあげてポストプレーを試みさせますが、逆に攻撃が淡白になってしまい攻撃自体が停滞してしまいました。そして後半終了間際で追加点を許し万事休す。点差ほど内容の離れた試合ではないと思いますが、攻守ともにわずかなプレーの甘さが勝敗を分けたと思います。
ヴェルディ戦でもそうでしたが、DFライン裏を突破するのが得意なスピードタイプのFWを並べているにも関わらず、敵も味方もポジションをとって待ち構えるところに、ようやくクロスを放り込むサイド攻撃に終始するような組み立てにも難があると考えます。氏原はともかく、高田・松浦・後藤はそういう競り合いに長けた選手ではありませんからね。ヴェルディ戦ではそういったスピード系のFW陣が90分通じて急造4バックの裏を再三効果的にとっていましたが、後方からのスルーパスはなく不発に終わりました。スピードスター松浦と高さと強さのある氏原の加入で、なんだかんだといいながら今季は前線の武器は増えたと思います。そういう選手の長所を活かした攻撃の組み立てをしていけるかも今後の課題でしょう。

中盤でボールを追いこんで、奪ったボールを両サイドへ展開した草津は、ゲームの組み立てという点では狙いどおりだった。悔やまれるのはそこから先の段階を詰め切れなかったこと。植木繁晴監督(草津)は、「もう少しきちっと奪ったボールをひとつ、ふたつつなげると、自分たちのポゼッションが生きてくると思うが、あまりにもミスが多すぎた。まだうちのチームには足りないものがたくさんあるということを見せてもらったゲーム」と試合を振り返った。(後略)

先に述べましたが、草津の攻撃は両SHがボールキープしセカンドストライカーとして機能しないと、なかなか有効なフィニッシュまでもっていけません。本来、右SHのポジションは山崎ではなく鳥居塚が務めていましたが、佐田の負傷で今はSBに。主力の選手がポジションを移動してケアすると、今度はその空いたポジションが埋まらない。こういう状況を繰り返している訳ですね。左SHの桑原もこの日はイマイチで、高田ならばと思いますが、彼には本来のFWの仕事もあります。つまりSHを強化するには、理想とすれば鳥居塚と高田がもう1人づつ必要であり、現実には人材が足らないという結論になってしまいます。*2
佐田は7月の復帰を目処にリハビリ中なのでそれを待つとしても、草津が福岡のような上位かつ同じコンセプトの相手と戦っていくには、もう1、2人の主力級選手が必要だということも判った試合でした。パーマンからコピーロボットを貸してもらうわけにもいかないので、中心的なレギュラー選手を増やすためには山崎や桑原には一層の奮起と成長が求められますし、サブメンバーの台頭も欲しいところです。吉岡もサテライトリーグ戦からチャンスをつかんだそうですし、中井・里見・山本にもチャンスはあるはず。というか名前を挙げた選手全員が救世主になってくれても構わない状況ですよ。
過密日程での連戦でしたが、ようやく1週間の時間が空いて次節はホーム戦。相手は調子を取り戻してきているセレッソ大阪と、これまた強豪ですが、なんとか得点をあげて勝利に結び付けてもらいたいと思います。福岡戦でもまったくノーチャンスというわけではなかったですからね。
草津に限らずポゼッションを高めようとするチームは、まずボール回しの精度、次いで攻撃の緩急のつけどころにフィニッシュへの共通イメージと、順番にクリアしなければならない壁に当たります。パス回しとフィニッシュはもう少し。これにスピード系のFWたちを活かした早い攻撃も織り交ぜられれば、草津の攻撃サッカーはさらに面白くなっていきそうです。最近なかなか勝てませんが、それでも引き分けに持ち込めるのは、前線からチェイシングするFWとボランチ2人のカバー、CB2人の高さと強さに拠るものだと思います。シーズン前には陣容の薄さが懸念されましたが、布陣の中心線(FW−DMF−CB)は、幸いにも信用できる選手たちが固めてくれています。後はサイドハーフサイドバックとバ●主審に当たらない運。チームも選手層も強くなるまで、あと一歩だと思えるんですけどねえ。

*1:前節対戦した東京ヴェルディのラモス監督は『ヴェルディの3バック対策を草津がしてきているから4バック』と語っていましたが、どちらかと云えば対福岡、サイド攻撃の得意なチーム全般への対応だと思えます。4CBの4バックがまるでビルドアップできない自チームの事情も大きかったですし。現在1チームしか採用していない3バック相手に、草津が時間を割いて対応を腐心していると考えるのは、自意識過剰が過ぎるんじゃ・・・

*2:逆に云えば、鳥居塚と高田が本来のポジションに専念する日が草津が強くなる日?